NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] の、『オープン・スペース』が面白い!

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    平川紀道《内部観測者のための円環構造》2008年(参考図版)

    5月23日(土)からICC(NTTインターコミュニケーション・センター)で始まった『オープン・スペース 2015』は、現代のメディア環境における多様な表現をピックアップし紹介する展覧会。メディア・アートの代表作から新作、歴史的な作品や研究成果としての作品まで展示されています。

    というと、なんだか難しそう?と思う人もいるかもしれませんが、とにかくまずは、会場へ。Filament(大友良英さんとSachiko Mさんのユニット)の無響室での展示が気になっていた私は、まずは彼らの作品「Filament at anechoic room」の予約をしてから会場を回りました。無響室とは、特殊な材質でつくられた壁が、室内で発生する音を吸収してしまうため、反響をしなくなってしまうという部屋。そんな部屋の中でかすかな電子音が四方から響いてきます。ひとりずつ部屋に入って体験するため混雑時は時間がかかりますが、感覚を刺激されとても興味深いのでお薦めです。

    どの作品も楽しかったのですが、平川紀道さんの「knowns, unknowns and the irreversible」は、純粋にドキドキしました。目の前に広がる大画面で、無数の光が集まっては広がって一気に消滅する。作品には、“ある点の集まりが、時間とともに飛び散るような不可逆な現象を映像化したものを逆再生することで、最初の瞬間に示された計算結果から初期状態に戻って行く過程を見るもの”との説明があります。真っ暗な部屋の中で、いつまでもその光景に見入ってしまいます。

    6/15発売のPen、連載「Creator's File」にご登場いただいている和田永さんも、この展示に参加されています。和田さんはオープンリールアンサンブルなどで活動をするミュージシャン/アーティスト。Pen読者のみなさんには、イッセイミヤケのコレクション音楽を手がけていたことでもご存じの方が多いのではないでしょうか。現在ではあまり目にしなくなったオープンリールを楽器として操り、音楽を生み出しています。オープンリール以外にも、ブラウン管で音楽を奏でてしまったりもします。そんな彼の展示作品は「蟹足電輪塔」。蟹の足を象った塔にブラウン管モニターが収められ、さまざまな縞模様を映し出しています。その周りに置かれたラジオからは、その映像パターンと同期してあらゆる音色が出力され、リズムを刻んでいます。電磁波が音に変換され多様な音色を奏でるわけですが、それはなんとも不思議な空間を生みだしています。

    ほかにも、スズキユウリ、高谷史郎、ビル・フォンタナなど計16名以上のアーティストが参加。岩井俊雄さんの『マシュマロスコープ』など子どもも楽しめそうな作品も。いま観るべきメディア・アートを、ICCで体感してみてください。(Pen編集部)

    グレゴリー・バーサミアン《ジャグラー》
    撮影:大高隆

    岩井俊雄《マシュマロスコープ》2002年
    撮影:木奥惠三

    和田永《蟹足電輪塔》

    Pen 6/15発売号 連載「Creator's File」にて和田永さんのインタビューを掲載しています。そちらもぜひご覧ください。

    『オープン・スペース 2015』
    ~2016年3月6日(日)

    NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
    東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
    フリーダイヤル::0120-144199
    開館時間:11時~18時
    休館日:月(祝日の場合翌日、9/22は開館)、12月28日~1月4日、8月2日、2月14日
    入場無料
    ※毎月1回、ICC学芸員によるギャラリーツアーもあり。定員20名、事前予約不要。
    http://www.ntticc.or.jp