アーティスト・西野達の新作は、熊本の海の上につくられた期間限定のリゾートホテルです。

  • 文:青野尚子

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「ホテル裸島」のベッドルーム。島を間近に見る、海上ホテルの眺めは最高!
photo by Tatzu Nishi

目の前、というよりもむしろ目の下に海が広がるリゾートホテルが、熊本県の津奈木に完成しました。熊本の海を堪能できる海の上のホテルは、アーティスト西野達の新作です。

これまでシンガポールのマーライオン像を囲ってホテルのベッドルームにしたり、東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで安藤忠雄による建築をカプセルホテルに仕立てたり、世界各地に大胆なホテルやリビングルームをつくってきた西野達。このたびは熊本県の津奈木で海に浮かぶリゾートホテルを出現させました。今回も期間限定、突然現れては風のように去って行くホテルです。宿泊は抽選による予約制となっていて、昼間はこのホテル自体をアート作品として鑑賞できます。

この『ホテル裸島』が建っているのは、海に沈む夕陽が美しい海辺。「裸島」というのはすぐ近くに位置する島の名前です。島といっても干潮時には陸と地続きになって、歩いて行くことができます。この近くにある「赤崎小学校」は日本で唯一と思われる「海に浮かぶ小学校」。建物の下に海があり、教室から釣りができたとか。2010年に残念ながら廃校になってしまいましたが、大きな丸い柱に支えられた建物がいまも残っています。

『ホテル裸島』はこの小学校の思い出をそのままホテルにしたかのような作品。柱で持ち上げられた建物自体が「赤崎小学校」のミニ版のよう。中に入ると、あちらこちらに小学校の備品が置かれています。たとえばリビングの応接セットは校長室に置かれていたもの。ガラスの扉がついた棚は理科室から運んできました。棚の中には「ピーター・パン」や「ハックルベリー・フィンの冒険」など懐かしい本が並び、ベッド脇の壁は一面、黒板になっていて西野さんのドローイングが描かれています。ベッドルームとバスルームの引き戸は教室の扉、天井の照明器具も小学校のものです。

このホテルでのいちばんの楽しみは足下に広がる海と、そこに沈む夕陽でしょう。リビングもバスルームもオーシャン・ビュー。遠浅の海と裸島、赤崎小学校が間近に楽しめ、とくに夕焼けの時間帯は最高! 部屋の中が一面赤く染まって、幻想的な雰囲気となります。

ホテルの宿泊は1日1組限定で定員は2名まで。料金は1名利用の場合は1泊1室あたり¥10,000(税込)、2名利用の場合は1泊1室あたり¥ 15,000(税込)。現在、11月16日から30日までの期間の宿泊者を公式サイトで募集中です。興味のある方はぜひ、応募してみてください。

『ホテル裸島』外観。ほんとうに海に浮いてます。photo by Tomoo Kusumoto

こちらはベッドルーム。奥に旧赤崎小学校の理科室の棚が置かれています。
photo by Tatzu Nishi

こちらは『ホテル裸島』バスルームからの眺め。海を眺めるビューバスです。photo by Tatzu Nishi

『ホテル裸島』から車で5分のところにつくられた西野さんの作品『達仏』。生木に23体の仏像が彫られています。森の中で金色に輝く仏様を拝めば、ご利益があるかもしれません。photo by Kenichi Mori

旧赤崎小学校。海に浮かぶ船のようにも見えます。photo by Naoko Aono

「西野 達 ホテル裸島 リゾート・オブ・メモリー」

開催期間:2017年10月7日(土)~12月5日(火)
開催場所:津奈木町内(旧赤崎小学校付近、津奈木町役場付近)
http://tatzu-hadaka.asia
※津奈木駅と『ホテル裸島』『達仏』「つなぎ美術館」を結ぶ、むつみ交通小型タクシーの特別割引あり


『ホテル裸島』
開催場所:旧赤崎小学校付近 
開館時間:10時〜15時
定休日:水
入場料:無料

※2017年10月30日(正午)まで、宿泊希望第4次募集を現在行っています。

※ホテル宿泊については公式サイトをご確認下さい。


『達仏』
開催場所:津奈木町役場付近
開場時間:10時〜16時 
定休日:水
入場料:無料