175枚のパネルから成る木炭絵画に、雑誌・書籍の仕事も紹介した佐藤直樹展。

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    『本と美術の展覧会vol.3 佐藤直樹展 : 紙面 ・ 壁画 ・ 循環』

    太田市美術館・図書館

    175枚のパネルから成る木炭絵画に、雑誌・書籍の仕事も紹介した佐藤直樹展。

    川上典李子エディター/ジャーナリスト

    『その後の「そこで生えている。」』、2014年~。個展『秘境の東京、そこで生えている』(2017年)での展示風景。182.5×16101㎝ものスケールをもつ。

    『はじめの「そこで生えている。」』、2013年。『TRANS ARTS TOKYO 2013』での展示風景。

    雑誌『ART iT』Vol.2 No.1、2004年(左)とNo.21、2008年(右)。 本展では約240の雑誌、書籍の仕事も紹介。

    DTPの草創期にあたる1990年代後半から2000年、雑誌や書物のエディトリアル・デザインで活躍し、自らグラフィック・デザイン誌の発行も行っていた佐藤直樹。デザインから絵画へと軸足を移し、木炭を手に絵画に没頭していると聞いた時には驚かされた。6年ほど前のことだ。

    「ある時期から急激に描く行為へと身体が向かい始めた」と本人は言う。 「自分の中の『描く』部分はデザインに吸収されたものと考えていたため、しばらく我事ながら戸惑っていたものの、いまやタガが外れて、描くことがやまなくなっている」

    その創作衝動はどこからきているのか。きっかけは2010年から11年、意識したことのなかったある場所の気配に身体が反応したことだったという。以来、完成を想定せず、一枚の絵を描き続けている。身長よりも高いベニヤ板に黒の濃淡で描かれた樹木や植物は圧倒的な迫力で、どこまでも伸びていきそうだ。作品の幅も留まるところを知らず、いまや160ⅿを超えた。

    今回の展覧会では、佐藤の雑誌の仕事と絵画作品とが初めて同時に紹介される。メインは175枚のパネルから成る木炭画だ。その連続性を「刊行が続く一連の書物のようなもの」と佐藤は言った。本展を開催する美術館がある太田市を訪れるようになってから、描き始めた部分も含まれている。

    「気配のいくらかを絵の中に持ち込めたと一瞬は感じられても、完成することはないに違いない。つかもうとしてもつかめない。追っても追っても、追いつかない。どこまで行っても完結しない。そういうものとして、まだまだ先へ先へと続いていくことになる」

    連続性。その上、常に未完。永く残る作品には不向きな木炭が画材であることも気になる。佐藤が向き合う紙と壁。その循環の現在形を私たちも目撃しておこうではないか。

    『本と美術の展覧会vol.3 佐藤直樹展 : 紙面 ・ 壁画 ・ 循環』
    開催中~10/20
    太田市美術館・図書館
    TEL:0276-55-3036
    開館時間:10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで
    休館日:月(祝日・振替休日の場合は開館、翌火曜休)
    料金:一般¥500(税込)
    www.artmuseumlibraryota.jp