超読書家・ユーチューバー中田敦彦が推薦する、いま読んでほしい5冊とは? 【Penクリエイター・アワード2019】

  • 写真:森山将人(人物)、宇田川 淳(物)
  • 文:岩崎香央理

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知性派芸人として知られる中田敦彦が、独学で得た知識を巧みな要約と圧倒的熱量の話芸で講義し、2019年4月にスタートするや否や一気に人気に火が付いた『中田敦彦のYouTube大学』。ここでは人気講座のヒントにした5冊を選書し、中田節で超面白おかしくブック解説します。

今年、オリエンタルラジオの中田敦彦がYouTubeに参戦したことは事件であった。4月に始まった『中田敦彦のYouTube大学』は、拡大するコンテンツ市場で「教養+お笑い」という鉱脈を掘り当て、瞬く間に再生回数を伸ばす。わずか4カ月半でチャンネル登録者数100万人を突破した。緻密な構成と澱みない語り口、笑いを挟んで展開する中田の「エクストリーム授業」はまさに珠玉のトークライブだ。その名講義の中で中田が太鼓判を押した、ジャンルレスな5冊をここでは取り上げる。歴史的世界文学から人生論をまとめた名著、そして現在も書店で売れ筋となっているあの話題本まで、天才・中田敦彦流の解説と名講義の映像を合わせてプレイバック!

中田敦彦●1982年、大阪府生まれ。大学在学中に藤森慎吾とオリエンタルラジオを結成。2004年にリズムネタ「武勇伝」でM-1グランプリ準決勝に進出してブレイク。14年にRADIO FISHとして音楽活動も開始。ユーチューブ動画配信やアパレルブランド経営などマルチな才能を発揮。

公立高校教師ユーチューバーの画期的ベストセラー

『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』山﨑圭一 著 SBクリエイティブ ¥1,650(税込)

「僕の『エクストリーム世界史』の元ネタです。歴史って、年号を覚えるのが退屈ですよね? 世界史をそれで苦手になってしまう人がじつに多い。この本には年号が一切なし! ストーリーにフォーカスしているからわかりやすくて面白いんです」。ストーリーを楽しむことで、名前を覚えるだけだった歴史上の人物が生き生きとしたイメージをもち、国や時代の特徴が浮かび上がって「なぜそうなったか」という関係性がすんなりと理解できる。「大人もこれを読めば世界史にハマります!」


『知らないと恥をかく! ざっくり爆笑ヨーロッパ史』



ジェットコースター的展開に、中田大興奮の傑作古典劇。

『マクベス』ウィリアム シェイクスピア 原作 斉藤 洋 文 あすなろ書房 ¥1,430(税込)

シェイクスピア四大悲劇のひとつに数えられる不朽の名作。「でも、シェイクスピア読んだことある人って少ないでしょ? なんか古くて難しいし、堅苦しそうだし……。僕もそうでした。ところが、読み始めたらムチャクチャ面白い! マクベスが自分と重なり合うように思えて、ウソだろ? シェイクスピア!って」。予言と悪夢に引きずられ、成功するけど追い詰められていく男の話。「世界史を勉強して、成功と幸せについて考えていた僕の胸をガツンと射られた。人間の描き方が緻密で、場面展開のテンポもいい。翻訳もいろいろ出ているので、自分なりのマクベスを見つけてください」


『シェイクスピアの四大悲劇「マクベス」〜第1話〜予言に翻弄されていく男の悲劇』


いまこそ日本人が指標とすべき、ビジネス界の聖書的存在。

『論語と算盤』渋沢栄一 著 角川書店 ¥836(税込)

道徳と経済を重んじ、日本の資本主義の父と言われた渋沢栄一。「2021年のNHK大河ドラマ、24年には新一万円札の顔となることが決定し、いま注目されている人物。YouTube大学の渋沢栄一の回もぜひ観てください! 僕はこれを読んだ時、中田的No. 1書籍がついに決まった!と思いました」。士魂商才、人間観察法、そしてリーダーたる人の行動哲学とはなにか。「視観察、智情意など、腑に落ちる言葉ばかり。成功は一瞬だけど、その人の幸せって結局、自分の得意なことで社会に貢献できたかだと思う。天命を、僕はこの本から教わりました。渋沢栄一、カッコよすぎです」


『中田敦彦史上No.1書籍!渋沢栄一「論語と算盤」〜日本資本主義の父が語る成功哲学〜①』


中田的No. 1書籍の座をかっさらう、弱き愚者の哲学。

『マンガ 老荘の思想』蔡 志忠 著 和田武司 訳 講談社 野末陳平 監修 ¥825(税込)

中国の思想をマンガで描いたシリーズの老荘編。『論語と算盤』では「徳をもって治めよ」という孔子の教えを掲げていたが、老子と荘子は、人徳や成功や拡大に異を唱え、無功徳を旨とした。「今後10年の僕のバイブルと言い切るほど傾倒した『論語と算盤』を超えるのでは?という教えに出会った。中国古典を超えるのは、やはり中国古典。良きリーダーが成功して大きな組織をつくる、いわば「賢者の帝王学」である孔子に対し、小国寡民を理想郷とする老子の教えは「乱世の生存戦略」なんです。僕はいま、どっちの教えを是とするべきか。皆さんも揺れ動くこと間違いなしです!」


『孔子の儒教を無効化するライバル「老子と荘子」〜人徳なんてほとんどウソだ〜前編』


高校生に向けてやさしく解説する、池上流・日本国憲法論。

『君たちの日本国憲法』池上 彰 著 集英社 ¥1,540(税込) 

「教科書には載らない憲法改正の争点と、そのキーマンは誰か。池上さんの本がすばらしいのは、そこの事実が赤裸々に書かれているから」。いままさに進行中の、日本の未来を左右する問題。池上が高校生に問うているのは、権力とマスコミを監視し、事実を知った上で自分で判断するという国民の役割だ。「全部、知識なんです。知識がないと、わからないまま流されてしまう。僕が動画で好き勝手に話せるのは、憲法のおかげ。これが戦時中なら、集会の禁止、自由な学問も禁止で、僕は逮捕されています。YouTube大学が公開できることに、僕は心から感謝している。表現の自由が、いまはあるから。さあ、どうなる日本? 」


『憲法改正問題を中田がわかりやすく解説!〜基礎知識編〜①』