齊藤太一とクマタイチが考える「愛すべき日常」とは? “想い”と“時”を重ねる住まい

  • 写真:齋藤誠一
  • 文:石井 良
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造園家・齊藤太一(左)と建築家・クマタイチによる初対談が実現。それぞれ異なる立場から空間を手掛けるふたりが、「暮らし」を題材にトークを展開した。

暮らしは家から生まれる。だが家は、完成した瞬間が最も美しいわけではない。そこに住む人が時間をかけ、想いを重ねていくことで、日々の風景はより豊かに色づいていく。LIXILが提唱する「愛すべき日常を、つくろう。」というメッセージは、細部へのこだわりが空間をつくり、そこで過ごす時間が自分らしい暮らしにつながっていくというものだ。これを体現するように、自邸や数々のプロジェクトで「空間と時間の重なり」をデザインしてきた造園家の齊藤太一と、建築の枠を超えて人と街をつなぐ建築家のクマタイチ。自然を扱う者と、構造を扱う者。異なる視点を持つふたりの対話から、真に豊かな住まいのあり方を探る。

特集『たいせつなことを、重ねる暮らし』
人と集う、ひとりで過ごす、料理を楽しむ、光や緑を感じる……。自分にとってたいせつなことが、日々の時間に重なっていく。さまざまな人の住まいのこだわりを紐解きながら、愛すべき日常を育むヒントを探ります。

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“理想の暮らし”から考える住まいづくり

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齊藤太一(さいとう・たいち)●造園家/グリーンディレクター 1983年、岩手県生まれ。15歳から独学で造園を始め、2011年に株式会社DAISHIZENを設立。植物のある空間を提案する「SOLSO」の立ち上げや、商業施設等のランドスケープデザインを手掛け、人と空間をつなぐバイオフィリックデザインを牽引。

窓から差し込む朝日を浴びて過ごす静かなひと時。あるいは、休日に家族と食卓を囲んで笑い合う時間。自分たちらしい「愛すべき日常」を実現するための大切な視点は、建物のかたちや間取り以上に「どんな時間を過ごしたいか」という理想を見つけるところから始まる。

住まいづくりの出発点となるその視点について、植物を活かした空間を数多く手掛けてきた齊藤太一は、「土地が持つ空気を読み解くことからはじめる」と語る。

「僕の理想は、暮らしの中で自然の移ろいを感じられること。まずは土地探しから始めて、その場所の地形や風の入り方、月の満ち欠けといった自然の風景を読み取ることから考えます。その中から見えてきた土地の魅力を活かしながら、そこに自分たちの暮らしをそっと『置かせてもらう』感覚を最も大事にしていますね」

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齊藤さんが建築家の田根剛とともに3年がかりで手掛けた自宅。都会の真ん中にありながら、圧倒的な大自然に囲われたリビング。

土地が持つ自然の営みから空間を発想するという齊藤に対し、リノベーションによる場づくりを得意とする建築家のクマタイチが理想とするのは、「完成形を求めず、日々の小さな変化を楽しみながら、自分らしく手を加え続けられる暮らし」だ。

「僕は住まいを『完成されたプロダクト』とは捉えていません。あらかじめガチガチに完成形を決めず、既存の建物や前の住人が残した記憶に手を加え続けていく。後から自由に暮らしを編集できる緩やかな『フレームワーク』として設計するのです。自分の生活に合わせて常にアップデートしていく“未完成の楽しさ”こそが、僕の理想です」

アプローチは違えど、暮らしの中で変化を楽しんでいるふたり。あえて空間の役割を固定せず、用途を限定しすぎない余地を残しておくことを、齊藤は“建物の度量”と表現する。

「意識しているのは、空間に『子ども部屋』や『リビング』といった機能の名前を付け過ぎないようにすること。将来的に子ども部屋が茶室にも変われるような柔軟な箱として捉えることで、あらゆる変化を受け入れてくれる器の大きさが生まれるのだと思います」

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時とともに住まいを手入れすること

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クマタイチ●建築家 1985年、東京都生まれ。TAILAND主宰。隈研吾建築都市設計事務所パートナー。建築設計に加え、神楽坂周辺でのシェアハウスやホテル、レストランの運営などハードとソフトの融合を一貫して手掛ける。

住まいを未完成なものとして捉え、住む人の人生の移ろいに寄り添っていく。その齊藤の言葉にクマは続ける。

「長く住んでいく住宅である以上、変化があるのは当たり前のこと。周囲の環境や家族の変化に柔軟に対応できる仕組みを建築の中にいかに忍ばせておけるか。それこそがよい住まいの条件だと思っています」

ドイツやニューヨークでの経験も豊富なクマは、古きよきものを活かす欧米の文化に住まいの豊かさを見出している。彼が現在も会社の寮として利用するパリのアパートにも、そのヒントがあるという。

「コルビュジエの弟子が設計した1960年代の団地なのですが、このアパートにはなぜか建築家がたくさん住んでいるんです。パリの歴史的なアパートは構造上間取りに触れられないことが多いですが、そこは柱と梁のラーメン構造なので、壁が自由に抜けるんですよね」

パリを訪れるたび隣人たちの部屋を訪れるそうで、「皆がそれぞれ自由にリノベーションし、部屋ごとに全く異なる暮らしが営まれている。それを見るだけでも楽しいんです」と遊び心に刺激を受けているという。

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クマが手掛けたシェアハウス「SHAREtenjincho」(東京・天神町)のキッチン&リビング。1階にはレストラン、2階にはシェアオフィス+バー、3階から9階が居住スペースとなっている。(写真:山田薫)

そこには、「自分らしい空間を育む根源的な喜びがある」と齊藤も手入れの文化に共鳴する。

「岩手にある僕の実家は古い日本家屋と現代的な住居が並んで立っていて。日本家屋のほうは昔のつくりだから隙間風なんかが入ってくるので、傷む前に時期を見て障子を張り替えるなど、先手で手を入れる文化が根付いています。それを長年続けていると、なんだか建物が『生きている』感じがしてくるんですよね。自然の生態系が循環するように、人も建物もともに年を重ね、成熟していく空間にすることが、手入れの本質なのかなと感じます」

建物をただ維持するだけでなく、自ら手を加えることで新しい発見がもたらされる。住まいと対話しながら時を重ねていく営みこそが、かけがえのない日常の風景をかたちづくっていくのだ。

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機能を超えて、空間のあり方を見つめ直す

LIXILが掲げる「愛すべき日常」をかたちづくるのは、日々の暮らしに寄り添う空間へのこだわりだ。居室やリビング、キッチン、そして水まわり。それぞれを単なる「機能」としてではなく、豊かな時間を過ごすための場所として見つめ直すことで、住まいはより自分らしいものへと育っていく。そんな理想の空間や自分らしい暮らしを、さまざまなスタイルで提案し、一棟まるごとのコーディネートするのがLIXILの「Design Style」だ。

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「Design Style」では多彩なコーディネートを提案。「コンフォート・グレイン」は自然を感じさせるカラーと質感で、快適で落ち着きのある暮らしをもたらす。
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整然とした空間が好みなら「ミューテッド・トーン」を。シンプルながら緊張感のない空間を実現する。
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温かみのある「ナチュラル・コンシャス」。強い個性よりも無理のない穏やかさを求める人にお薦め。

自然の移ろいを感じられる暮らしを理想とする齊藤もまた、居住空間において「自然と共存し、光や影の動きまでも意図して取り込むこと」を大切にしている。

「僕の自宅は、すべての窓から必ず植物が見えるようにしています。それも、単に植物を置くだけでなく、太陽や月の動きに合わせて、植物を介して落ちる影のかたちや動きを空間に取り入れたい。だから、その影が美しく落ちるように壁や床の素材にもこだわります。家族や訪れる人たちと、そういう景色を共有できることが、僕にとって愛すべき日常なのかな」

一方、リビングに対しては従来の型にとらわれない視点を持っている。それもまた、自分たちらしい生活を見据えたアプローチだ。

「実は、僕はリビングというものをあまり重要視していません。住まいを休息のためだけの場所ではなく、日々の活動を支える『巣』として捉えているからです。子どもたちも忙しく、全員揃ってソファに座る時間はほぼないので、大きなソファよりも、立ち話ができるハイカウンターのような、家族が自然と交差できるスペースのほうが実態に合っているんですよね」 

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自分だけの時間を大切にしたい。“巣ごもり”するかのように、穏やかで静かなひと時を過ごせる「クアイエット・ネスト」。
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四季を取り入れた空間の「ヌーベル・ジェイズ」。上質さと落ち着きを両立できる、和のコーディネートだ。
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客人を招いて会話に花を咲かせる。そんな時間にぴったりな空間の「レジデンシャス」。

これに対し、クマは部屋の役割を決め切らない、ワンルーム的な発想を大切にしているという。

「僕も、寝る・仕事するといった個室をガチガチにつくり込むより、ドナルド・ジャッドのアトリエのような、すべてが見渡せるワンルーム的発想が好きなんです。用途を決め切らず、後から自由に暮らしを編集できる緩やかなフレームワークにしておくことを意識しています」

用途や機能にとらわれず、そこで「どんな時間を過ごしたいか」を思い描く。そんな理想からていねいに仕立てられた空間こそが、かけがえのない「愛すべき日常」を生み出していくのだ。

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細部へのこだわりが、豊かな暮らしを育む

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LIXILが扱うオリジナルのタイル。常滑焼の産地である愛知県常滑市にルーツを持ち、高品質なタイルのラインアップを持っている。

齊藤は「空間の広さや庭の形状といった大きな枠組みは、土地の条件や法規制などにどうしても縛られてしまい、思い通りにならないことも多いですよね」としながらも、そうした制限があるからこそ見えてくる豊かさもあると、細部の重要性について語る。

「毎日手が触れるドアノブひとつ、目に入る壁紙一枚といった細部には、自分自身の意志で自由に選び、こだわる余地がしっかりと残されているんです。だからこそ、そうした一つひとつの選択の積み上げが実は、いちばん重要で面白い。なぜこれを選んだのかを語れる“愛おしいもの”の積み重ねが、自分たちらしい愛すべき日常につながっていくのだと思います」

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住居の美しさは大きな造形のみでは決まらない。精緻な加工が施されたドアハンドルのように、日々のふとした手触りや操作感といった細部も、暮らしの質を大きく左右する。

細部を慈しみ、時間をかけて住まいを育てていく。そんな齊藤の眼差しに深く頷きながら、クマは日々の暮らしにおける「余白」の大切さを付け加える。

「細部は本当に大切ですよね。ただ、すべてを隙なくつくり込むのではなく、少しの“抜け感”も必要かなとも思っていて。すべて完璧に選ぼうとすると、その分、エネルギーも使ってしまいますから。日々使うものと、人に見せるもてなしの部分。その力の入れ具合に濃淡をつけることで、空間に自然な心地よさが生まれてくる気がします」

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住む人のこだわりをかたちにするLIXILの建材。空気環境を整える壁材「エコカラットプラス」や、循環型素材「レビア」を使用した舗装材「レビアペイブ」など、理想の暮らしを細部から叶えるために、技術と感性を融合させた多彩なものづくりを展開している。

住まいは、数十年という時をともにするものだ。だからこそ、部屋へ入るときに触れるドアハンドルの心地よい質感や、毎朝眺める窓のサッシなど、毎日なにげなく触れ、目にする細部へのこだわりこそが、日常の質を確かに変え、暮らしを豊かにしてくれる。

LIXILが目指すプロダクトのあり方も、まさにそうした住まい手のこだわりに寄り添い、自分らしい空間を育むプロセスを支えることにある。空間の余白を活かすさりげないデザインが、そこに流れる時間をより豊かなものへと変えていくのだ。

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