近年のラグジュアリーウォッチ界において、若年層やポップカルチャーとの共鳴はひとつの大きな潮流となっている。かつての“重厚長大”な価値観から解き放たれ、よりカラフルで遊び心に溢れたモデルが、目の肥えたファッショニスタたちの視線を集めている。
そんな「いま」の空気感を鮮やかに体現するのが、タグ・ホイヤーから登場した新作「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフ」のパステルシリーズだ。
1986年の誕生以来、モータースポーツの熱狂と深く結びついてきた「タグ・ホイヤー フォーミュラ1」。ブランドの名を冠した初のコレクションとして知られるこのシリーズは、それまでの高級時計の常識を覆す大胆な色使いと、合成素材を用いた軽快なアプローチによって、時計界に衝撃を与えた。F1という究極のスピードの世界を、日常で楽しめるファッションへと昇華させたその試みは、20世紀後半のダイナミズムを象徴するアイコンとなったのである。以来、このコレクションは時代ごとのエネルギーを吸い込みながら、常に「若々しく、自由な精神」の象徴であり続けてきた。
80年代のダイナミズムを、現代のパステルトーンで再解釈
今回の新作で特筆すべきは、その輝かしいレーシング・ヘリテージをあえてやわらかなパステルカラーで再解釈した点にある。ベージュ、ピンク、ブルー、グリーンといった淡い色彩は、従来の時計が誇示してきた“強さ”や“速さ”とは異なる、オプティミズム(前向きな姿勢)や自由な自己表現を想起させる。
この軽やかなカラーリングに奥行きを与えているのが、マットな質感の「TH-ポリライト」製ケースだ。ラグジュアリーな気品を損なうことなく、ハイテク素材ならではのモダンな表情を加えることで、まるでお気に入りのスニーカーを履きこなすような、軽快なパーソナリティを腕元に添えてくれる。
一方で、その中身にはタグ・ホイヤーらしい先見的なテクノロジーが宿っている。搭載されたソーラーグラフ・ムーブメントは、自然光はもちろん人工光さえも動力源に変え、電池交換という概念を過去のものにした。わずか1分の太陽光照射で約1日分、約40時間でフル充電が完了し、完全な暗闇でも最大約10カ月間動き続けるという驚異的な実用性を誇る。さらに、内蔵充電池の寿命は約15年。まさに「止まることのない」モータースポーツの精神を、クリーンで現代的な技術で具現化しているのだ。
ケース径は、近年のトレンドであるジェンダーレスな装いにもフィットする38㎜。軽量なTH-ポリライトケース仕様に加え、今回は洗練されたステンレススティール製ブレスレットのモデルも登場した。
特にパステルグリーンやラベンダーブルーを纏ったブレスレットモデルには、インデックスにダイヤモンドをセット。スポーティなダイナミズムと、ジュエリーのような繊細な美しさが同居するその佇まいは、多様化する現代のライフスタイルに寄り添う仕上がりとなっている。
かつてレーシングウォッチは、極限状態での性能を競うための「道具」だった。しかし今、それは高性能であることは前提としながら、いかに自分らしく、軽やかに人生を楽しむための「相棒」になれるかという、新たなステージへと進化を遂げている。タグ・ホイヤーの新作は、まさにそんな現代のラグジュアリー像を雄弁に物語っている。
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