【空に浮かぶ“植木鉢ビル”】外壁がすべて植物、都市に森をつくるベトナムの住宅

  • 文:Rikako Takahashi
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ベトナム

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Photographs by Le Minh Hoang

急成長を遂げているベトナム北部のタイビン。農業が盛んなこの場所で、空を飛ぶ植木鉢のようなビルが出現した。ハノイを拠点とする新進気鋭の建築家集団、H&P Architectsが手がけた「フライング・ベジテーション(Flying Vegetation)」だ。

農業(アグリカルチャー)と建築(アーキテクチャー)を組み合わせた造語、アグリテクチャーの概念を体現するレジデンスが完成した。

Le Minh Hoang- 10.jpgPhotographs by Le Minh Hoang

農業×建築

アグリテクチャーは、都市部の建築に植生や栽培を取り入れることを指す。都市化や気候変動といった現代の課題に対し、建築物そのものに農業の機能を組み込みながら解決を図る設計として、近年注目されている手法だ。
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Le Minh Hoang- 48.jpgPhotographs by Le Minh Hoang

「フライング・ベジテーション」は、ファサード一面に垂直な植栽システムを設置。まるでたくさんの苗木がずらりと並んで浮いているように見える。これが「生きたフィルター」として機能している。騒音や大気汚染を遮断し、視覚的な解放感を保ちつつ、プライバシーを守る天然のカーテンとしての役割も果たす。

 

屋内からの景観はというと、都市部にいるのに、そして隣接する住居との距離も近いのに、まるで森にいるような没入感。たくさんの木漏れ日が心地良さそうだ。

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Photographs by Le Minh Hoang

植木鉢が設置されたひとつひとつのフレームは、メンテナンスや交換に対応できるよう、開閉可能な設計になっている。植物が健やかに育つよう、互い違いに間隔を空けて配置している。

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Photographs by Le Minh Hoang

フライング・ベジテーションは、周辺住宅共有の庭に面している。1階から2階は居住用、4階から5階は宿泊用に分かれており、3階と屋上は多目的交流スペース。「各階の居住者、宿泊者を繋ぎたい」というオーナーの意向が反映されているという。

急速な都市化に警鐘

ただ植物を並べるだけでなく、建築物に命のめぐりと人の交流の場を見出すことで、H&P Architectsは「都市生活に『生産的な景観』を取り戻す重要性」を発信している。

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Photographs by Le Minh Hoang

「(フライング・ベジテーションは)『キエン・ノン(ベトナム語での「アグリテクチャー」の意)』というコンセプトに基づくプロジェクトの一環です」と事務所はリリースで述べている。

「ベトナム全土で進行する急速な都市化は、農村部のバランスを崩し、農地の面積をますます減少させ、地域社会の定住型生活様式に深刻な影響を与えています」

フライング・ベジテーションをはじめとするアグリテクチャーは、私たちがこれからも地球で呼吸できるよう「未来の生活空間を創出する」ことを目指している。

Rikako Takahashi

編集者/翻訳者/ライター

東京在住。大学院で翻訳論を研究後、メディア会社に勤務。フリーランス活動で複数の媒体に寄稿中。海外ニュース&エンタメ、カルチャー記事など広く担当。好きなものは旅、猫、夜。

Rikako Takahashi

編集者/翻訳者/ライター

東京在住。大学院で翻訳論を研究後、メディア会社に勤務。フリーランス活動で複数の媒体に寄稿中。海外ニュース&エンタメ、カルチャー記事など広く担当。好きなものは旅、猫、夜。