ベトナム・ハノイに、竹林がそのまま湾曲して立ち上がったかのようなパビリオンが登場した。建築や都市文化に関する展示、イベント、交流の拠点として建設された「The Source: Ashui Pavilion 2026(ザ・ソース:アシュイ・パビリオン2026))」である。
パビリオンは竹を思わせる連続アーチと、金色に輝くセラミックタイルによって強い存在感を放つ。このデザインの背景には、ハノイが抱える都市環境への問題意識がある。
竹に見えて、竹ではない構造美
このパビリオンの最大の特徴は、半球状に連なるアーチ構造だ。
しなやかな竹材を束ねたようにも見えるが、表面を覆うのは金色の釉薬を施したセラミックタイルである。
Image courtesy of H&P Architects
小型のセラミックタイルを反復的に配することで、竹の節を思わせる陰影とリズムが生まれ、建築全体に表情を与えている。アーチを間近に見ると工業素材としての精度が分かり、離れて全体像を眺めると植物の群生のようにも映る。その二面性こそ、本作の造形的な魅力だ。
Image courtesy of H&P Architectsタイルはベトナムの伝統的な屋根材への参照でもあり、現代的な構造体に土地の記憶を重ね合わせる試みともいえる。素材の選択が単なる意匠にとどまらず、地域文化との接点になっている点も見逃せない。
イベント会場が発信する「都市への提言」
このパビリオンを手掛けたのは、ハノイを拠点とする建築スタジオ「H&Pアーキテクツ」。自然素材や在来技術を現代建築へ読み替える実践で知られ、住宅から公共施設、コミュニティ空間まで幅広く手がけてきた。とりわけ、気候風土に即した設計や、地域社会との関係性を重視する姿勢は、本作にも色濃く表れている。
このパビリオンも、視覚的なランドマークであると同時に、実際に人が集まり、使われる空間として構想された。内部は展示やトークイベント、交流プログラムなどに対応する半屋外空間で、大きく開かれたアーチの隙間から光と風が通り抜ける。象徴的なフォルムを持ちながら、公共的な使われ方を前提としている点が特徴だ。
Image courtesy of H&P Architects名称にある「Ashui(アシュイ)」は、ベトナムの建築文化プラットフォームに由来する。「The Source」は「源」を意味し、水や都市環境の原点を示唆する言葉として掲げられた。建築文化を発信する場であると同時に、都市の未来を考える対話の場としても位置づけられている。
Image courtesy of H&P Architects
水辺を失うハノイから生まれたメッセージ
パビリオン計画の背景には、急速な都市化によってハノイの湖沼や湿地、水路などの水辺環境が失われつつある現状がある。地表の舗装化が進み、豪雨時の排水や浸水リスクの増大も都市課題となってきた。H&Pアーキテクツは、そうした状況に対し、水こそ都市を支える基盤であるという視点を建築として可視化した。
パビリオン全体の曲線的な構成には、水滴が集まり、流れとなり、循環していくイメージが託されている。人々が集うイベント空間として機能しながら、都市と自然の関係を静かに問い直す装置でもある。
地域素材へのまなざし、公共空間としての開放性、そして都市課題への応答。「The Source: Ashui Pavilion 2026」は、華やかな建築として話題を集めるだけでなく、これからのアジア都市に求められる建築の役割を示す一例として注目される。
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