編集部が気になる腕時計 Vol.4
Penエディターが個人的に気になっている時計を紹介。今回のテーマは「名探偵なら着けたい腕時計」。
開發(Pen編集部)
Penの腕時計記事を2022年ごろから担当する。スイス・ジュネーブで行われる世界最大の時計見本市「Watches and Wonders」には過去2度参加。最近ゴルフを始めた。買い物は慎重なタイプ。
佐野(Pen編集部)
ファッション誌編集部やコレクションブランドのPRを経て、フリーのエディター/ライターとして2012年からPenに携わってきた隠れ古参メンバー。25年からPen編集部に正式加入。趣味は釣りと園芸と料理。10年前に購入した70年代のヴィンテージ・カルティエの市場価格が、ほぼ3倍になりつつあるのがもっぱらの自慢。
岩澤(Pen編集部)
雑誌や書籍編集を経て2025年からPen編集部に。子ども向けをはじめ、科学、食、デザインなどのジャンルを扱ってきたのでなんでも興味があるが大成していない。いま欲しい時計はウニマティックのフィールドウォッチ「クラシック UC2 / DUE」。
激しいアクションもこなす「戦う探偵」のための実用時計
開發:最近、『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』を観てきたんです。コナンといえば時計型の麻酔銃をはじめ、さまざまなガジェットが登場しますよね。劇中の活躍を見ているうちに、ふと「腕時計と探偵の組み合わせってロマンがあるな」と思いまして。
映画やドラマで活躍する名探偵や刑事たちは、卓越した推理力やアクションはもちろん、画面越しにも伝わる独特のファッションスタイルも作品の大きな魅力です。そこで今回は、Pen編集部のエディター3名で、「名探偵なら着けたい腕時計」をテーマをセレクトしていきたいと思います。
佐野:腕時計って、昔から先進テクノロジーの象徴ですからね。名探偵コナンしかり、『007』シリーズのジェームズ・ボンドしかり、探偵、諜報エージェント、刑事、スパイものみたいな作品とは相性抜群です。やっぱりロマンがあって、憧れちゃいますよね。そういう人物像とか世界観に対する憧れって、腕時計とか服とか車とかを欲しくなる大きな原動力になる。ワクワクする気持ち、大事だと思います。
開發:ではまず僕から。エルキュール・ポワロやシャーロック・ホームズは時代的に懐中時計のイメージですが、現代の自分がもし探偵になるなら……と考えて選んだのが、ジンの「EZM3」です。
岩澤:ジンと言えば、ドイツ生まれのプロフェッショナル・ウォッチで知られるブランドですね。どんな探偵をイメージしたんですか?
開發:モデル名の「EZM」はドイツ語で「アインザッツツァイトメッサー(出撃用計測機器)」を意味します。探偵にも頭脳派から肉体派まで色々といますが、僕はコナンくんもそうですし、ロバート・ダウニー・Jr版の映画『シャーロック・ホームズ』のように、アクションが得意な探偵が好きなんです。だからこそ、自身が探偵として着けるのも、激しいアクションもこなす「戦う探偵」の時計がいいなと。これはドイツ警察の特殊部隊用に開発されたダイバーズウォッチで、過酷なミッションで使うためのスペックを極限まで追求しています。
佐野:リューズが左側(逆サイド)についているんだね。スナイパーは腕時計のガラス面が反射しないように、フェイスを手首の内側に向けるっていう話を聞いたことがありますが、特殊部隊は激しい任務も多いから、リューズで手の甲を傷つけないように工夫された仕様かもしれませんね。咄嗟に手をついた時に、わりと痛かったりするんだよね。ゴツいリューズって。
開發:そうなんです。さらに、時計内部にプロテクトガスを封入する「Arドライテクノロジー」によって、風防が曇るのを防ぐ仕様になっています。ケースには時計に硬度を持たせる「テギメント加工」が施されており、41㎜というミッションの邪魔にならない絶妙なサイズ感も魅力です。
岩澤:デザイン的な色気を狙ったわけではなく、こうした品質と機能だけに特化してつくられた実用デザインって、結果的に名作になることが多いですよね。
開發:元々ジンは、ドイツ空軍の元パイロットが航空機用の計器を作ったところからスタートしているブランドなので、プロユースの信頼性は抜群。コナンくんの「腕時計型麻酔銃」や「キック力増強シューズ」とまでは言わないものの、秘密道具感があってワクワクする1本です!
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昼と夜で顔を変える、紳士のための“二面性”ウォッチ
佐野:探偵のスタイルアイコンといえば、やはりシャーロック・ホームズやハンフリー・ボガートのフィリップ・マーロウのような、コートをかっこよく着こなしたシブい男たちですよね。現代のドラマ版『SHERLOCK/シャーロック』のベネディクト・カンバーバッチも、風をはらむチェスターコートがヒーロー感出してて、真似したくなりました。
岩澤:そういう紳士な探偵は、腕時計にもこだわりがありそうですね。
佐野:もちろん。クラシックなテーラードスタイルに合わせたいのが、ジャガー・ルクルトの「レベルソ・クラシック・デュオ・スモールセコンド」です。カンバーバッチ自身もジャガー・ルクルトのアンバサダーを務めていて、映画『ドクター・ストレンジ』でも同ブランドの時計が印象的にフィーチャーされていました。
開發:冒頭の事故のシーンですね。文字盤が割れた状態になっても、その時のことを忘れないように大切に取ってあると言う描写がグッときました。今回選んだのは、両面にダイヤルがある「デュオフェイス」ですね。
佐野:そこが最大のポイント。レベルソは元々、ポロ競技の際に文字盤を守るため、ケースを反転させる仕様として誕生しました。でもやっぱり私は悪と戦う探偵なので、この反転ギミックには別の意味合いがあるんですよ。
岩澤:と言うと?
佐野:普段はしがない編集者なんですが、いざ事件が起こったってタイミングでケースを裏返すと人格がガラッと変わって、黒板とか床とかにいろんな数式とか書き始めちゃったり、かと思うと「そんなバカな!」ってつぶやいて突然走り出しちゃったり。
岩澤:ちょっと設定に古臭さを感じますけど……。
佐野:そんな「二面性」という設定に浸れるのも、レベルソならではの魅力。出張の時に、自分がいるシルバーダイヤルの現地時間とは別に、裏面のブラックダイヤルは家族がいる日本時間を示していて、2つの時間がひとつのムーブメントで同時に動いている感じもいいんです。そして実際に着けてみると、ケースが手首に沿うようにアーチ状になっていて、フィット感も抜群です。
開發:レクタンギュラー(長方形)型のケースですね。
佐野:このアール・デコ調のデザインがめちゃくちゃ格好よくて、紳士な探偵のスタイルにバッチリ合うと思います。こういう時計を見ると、たまにはしっかりとしたスーツを着て、革靴を履いて、ビニール傘ではなくちゃんとした傘を持ち歩きたくなりますね。あえて定番のネイビーではなく、使い込んだベージュのトレンチコートに似合うライトブラウンのレザーストラップを選んで、探偵らしい経年変化を楽しみたいです。
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伝説的ドラマのスタイルアイコンが着けたクロノグラフ
岩澤:僕が選んだのは、ゼニスの「クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー」です。イメージしたのは探偵というか刑事なんですが……ドラマの『古畑任三郎』です。
佐野:確かに、田村正和さん演じる古畑任三郎は最高のスタイルアイコンですよね。
岩澤:ドラマの中でも彼のファッションは度々言及されていて、アルマーニ風の仕立てのいい黒のスーツや、立ち襟のシャツなど、とにかくお洒落なんですよね。登場シーンで乗っていた金ピカのセリーヌの自転車も、放送当時すごく話題になりました。
実は腕時計にもかなりこだわりがあって、ファンの間でも伝説となっているSMAPが犯人役を務めたスペシャル回で着けていたのが、ゼニスの「エルプリメロ」を搭載したクロノグラフだと言われているんです。
開發:黒のスーツに、ドレスウォッチではなくあえてクロノグラフを合わせるのが粋ですね。
岩澤:そうなんです。当時はクロノグラフが流行っていた時代背景もあると思いますが、劇中では白文字盤のクロノグラフにグリーンのレザーストラップを合わせていて、あのスマートなキャラクターに完璧にハマっていました。今回紹介するモデルは、1969年に誕生した伝説のキャリバー「エルプリメロ」を受け継ぎつつ、60時間のパワーリザーブや毎時36,000振動という現代的で高精度なスペックを備えています。
佐野:古畑みたいに線の細いキャラクターには、ゴツい時計よりもこれくらいのサイズ感が似合いますよね。
岩澤:38㎜という小ぶりなケース径が絶妙なんです。脚本の三谷幸喜さんが大好きだったという『刑事コロンボ』のヨレヨレのトレンチコートもそうですが、命懸けで任務にあたる彼らのスタイルに憧れます。古畑任三郎の時計も、そんな目を奪われるアイコンのひとつとして選びました。
佐野:自分がなりたい人物像を膨らませると、着けたい腕時計が見えてくる。憧れの一本は、何年経ってもいいから、いつか必ず手に入れたいものですよね。
