編集部が気になる腕時計 Vol.2
腕時計を担当するPenエディターやライターが、個人的に気になっている時計を紹介。今回のテーマは「旅につけて行きたい腕時計」。
開發(Pen編集部)
Penの腕時計記事を2022年ごろから担当する。スイス・ジュネーブで行われる世界最大の時計見本市「Watches and Wonders」には過去2度参加。買い物は慎重なタイプ。最近ゴルフを始めた。
岩澤(Pen編集部)
雑誌や書籍編集を経て2025年からPen編集部に。子ども向けをはじめ、科学、食や農業、デザインなどのジャンルを扱ってきたのでなんでも興味があるが大成していない。初めて意識的に買った時計はオリエント「万年カレンダー」。
谷田部(フリーエディター・ライター)
モノ・トレンド誌『GoodsPress』で編集経験を積んだのち、フリーランスとして活動。家電やガジェット、時計をはじめ、ルーツであるファッションまで、ジャンルを横断しながら編集・執筆を手がけている。
着けていることを忘れる? 圧倒的な着け心地
開發:第2回のテーマは「旅につけていきたい時計」です。今回はGMTやワールドタイムといった、わかりやすく旅向きの機能を備えたモデルはあえて外し、それぞれの旅のイメージで着けていきたい一本を選んでもらいました。僕が選んだのは、ブルガリの「オクト フィニッシモ」です。ブランドを代表するコレクションで、さまざまな分野で世界最薄の記録を更新し続けています。その中から選んだのが、2017年に発表されたこのモデルです。なんとムーブメントの厚さが2.23㎜と、一般的なものの約3分の1! しかもチタン製だから重量75gと、圧倒的な薄さ・軽さを誇っています。
谷田部:ほぼ時計の重さを感じさせないですね。この時計を選んだ理由は?
開發:旅先って、モノをなくしやすいじゃないですか。特に腕時計は外食や乗り物での移動のときに、ふと外しがちですよね。その理由は、重かったり、どこか煩わしかったりするからだと思うんです。だったら、着けていることを忘れるくらい軽くて、ストレスの少ないものを選べばいいんじゃないかと。この「オクト フィニッシモ」は、薄さ・軽さに加えて、着け心地の良さにも惹かれました。ケースとブレスレットが一体化した仕様で、腕へのフィット感が高くなっているので、ストレスが少ない。実は先日、知り合いのカメラマンが旅先で時計をなくしたと聞いて、それもあってこのセレクトになりました(笑)
岩澤:旅にラグスポというのは、個人的に少し意外でしたが、理由を聞いて納得です! まして高級時計ならなおさら無くした時のショックが大きいですしね。ほかに惹かれたポイントは?
開發:このマットなシルバーで、ミニマルに仕上げられたデザインも個人的に好み。オールブラックのセットアップなんかに合わせてカッコよく合わせて旅したいですね。旅先でストレスなく、“一日中着けていられる”快適さに魅力を感じました。
ブランドの思想が腕元に宿る
谷田部:僕が選んだのは、ルイ・ヴィトンの「エスカル オトマティック ローズゴールド グレー」です。エスカルコレクション誕生10周年という節目に登場した、初の三針モデルで、これまでの複雑機構から一転、近年のクワイエットラグジュアリーを体現する一本です。
開發:着ているセットアップとも、ばっちりハマっていますね。このコーディネートも今回の旅のテーマに合わせたんですか?
谷田部:はい。僕が思い描いたのは、地中海沿岸のニースやモナコといった、セレブが集うリゾート地。だから軽さやタフさよりも、その場の空気に自然と溶け込む、ゴージャスでありながら品のある時計を探していました。映画『オーシャンズ11』に出てくるような、余裕のある大人の男が着けているイメージで(笑)。ただ、これ見よがしなラグジュアリーはあまり好みではなくて。このモデルは華美ではないのに、確かな存在感があるところに惹かれました。
岩澤:たしかに。ロゴなどのあしらいも控えめで上品だし、ゴールドもギラついた“金らしさ”がなく、スマートな印象。年齢や性別を問わず着けられそうですね。
谷田部:そうなんです。それに、単に上品なだけでなく、ルイ・ヴィトンの“トランク”の意匠を踏襲しつつ、文字盤にはメゾンの“モノグラム”に通じる要素が取り入れられるなど、細部にブランドを象徴するディテールが宿っているのも魅力です。とくに分目盛りのドットはすべて職人の手作業によるもので、クラフツマンシップがしっかり息づいています。そしてなにより、ルイ・ヴィトンにとって“旅”は原点。その思想を体現したコレクションだからこそ、今回のテーマとも自然に重なる。この時計とともに、その背景に思いを馳せながら過ごす時間は、一歩“大人の旅”へと導いてくれる気がします。
あらゆるシーンで活躍する、屈強なボディ
岩澤:僕は、セイコー プロスペックスの「SBBN047」をピックアップしました。セイコーのダイバーズは個性的なモデルが多く、以前から惹かれていたのですが、このモデルはとりわけ背景が面白くて。1968年当時、広島の現役ダイバーさんから「もっと深く潜れる時計が欲しい」という手紙がセイコーに届いたことをきっかけに開発されたともいわれています。いわゆる“ツナ缶”の愛称でも親しまれ、海外でも人気の高い一本ですね。
開發:セイコーには他にも”Samurai(サムライ)”や“Sumo(スモー)”といった呼び名の人気モデルもありますよね。“ツナ缶”を見るのは今回初めてでして、このモデルを旅に選んだ理由は?
岩澤:僕はおふたりとは違って、「タフさ」を重視しました。どんな環境でも気にせず連れていける時計がいいなと。旅先ではハイキングや釣りをすることもあるので、急なアクティビティにも臆せず着けていられる相棒が理想でした。これは見た目通りの頑丈さが大きな特徴です。独自の表面加工技術により、従来の硬質コーティングと比べて約1.5倍の硬度を実現しているとか。それに、ダイバーのために徹底された視認性、ルミブライトによる高い夜光性能など、旅先で活躍する無駄のない機能が多数揃っています。まさに僕の旅にふさわしい一本かと!
開發:なるほど。意外と、持ってみるとそこまで重くないんですね。
岩澤:そうなんです。ケース径は49.4㎜とかなり大ぶりですが、チタン製なので見た目以上に軽いのも特徴です。ほかにセレクトした理由で言うと開發さんとは逆で、僕は腕にある程度の存在感が欲しいタイプでして。存在感があるほうが、むしろ旅先で無くしにくいと思っています。これなら外してもすぐ気づきますし、どこにあるかも一目でわかりますよね。
谷田部:たしかに、これならどこに置いても一目瞭然ですね(笑)。時計は“軽さが正義”という風潮もありますが、存在感のある重さが、人によってプラスに働くこともあるんですね。開發さんと岩澤さんのそれぞれ対極的な時計選びがまた面白いですね!
