【ガウディ建築5選】バルセロナ市内編|サグラダ・ファミリア教会へと続く創造の軌跡をたどる

  • 写真:吉川 愛
  • 文:佐藤季代
  • 監修:山村 健
Share:

バルセロナ市内には、ガウディの建築作品が点在している。それぞれの建築を訪ね、そのメッセージを読み解きながら、サグラダ・ファミリア教会へと続く創造の軌跡をたどろう。本記事では、Pen最新号『ガウディとサグラダ・ファミリア』から一部抜粋して、特に“今訪れたい”5選の作品を紹介する。

アントニ・ガウディが没後100年を迎える2026年、サグラダ・ファミリア教会のメインタワーがついに完成した。ガウディが残したメッセージを紐解くことが、大きな転換期を生きる我々にとって、未来への道標になるはずだ。

『ガウディとサグラダ・ファミリア』
Pen 2026年6月号 ¥880
Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら

カサ・ビセンス 1883〜1885年

カサ・ビセンス
縦のラインを強調する鮮やかな幾何学タイルに若き日の瑞々しい色彩感覚が垣間見える。

旧市街から山側に向かい、少し離れた場所にある落ち着いたエリア、グラシア地区。その路地に、鮮烈な建築が姿を現す。株の仲介業者として財を成した実業家マヌエル・ビセンスの夏の別荘として建てられた、ガウディ最初期の住宅作品だ。

レンガと荒々しい野石積みによる伝統的な組積造(そせきぞう)に、イスラム文化とキリスト教建築が融合した“ムデハル様式”の要素を重ねている。特に目を引くのが、市松模様と黄色い小花のモザイクタイル。この小花や、鋳鉄の柵をかたちづくるシュロの葉は、敷地調査の際に自生していたものをガウディがモチーフとして取り入れたもの。幾何学的な構成と異素材の組み合わせに、後の作品へとつながる若き日の試行錯誤がうかがえる。

カサ・ビセンス
室内は植物や野菜、動物の装飾で埋め尽くされている。英国のアーツ&クラフツ運動の影響と言われている。

住所:Carrer de les Carolines, 20-26, Barcelona 
開場時間:4〜10月:9時〜20時 11〜3月:9時30分〜18時 ※入場は閉館時間の1時間前まで 
休館日:1/7〜14、12/25 
料金:一般22ユーロ
https://casavicens.org

パラウ・グエル 1886〜1890年

パラウ・グエル
音楽ホールと礼拝堂を兼ねたメインホールには、天井から幻想的な光が降り注ぐ。

ランブラス通り近くに立つパラウ・グエルには、グエイ(グエル伯爵)一家10人が暮らし、当時のブルジョアジーが集う社交場として機能していた。重厚な石灰岩の外観には、ふたつの巨大な放物線アーチの門が印象的に据えられている。ガウディ建築の真髄ともいえる“放物線アーチ”を本格的に導入した最初期の作品だ。

内部には贅を凝らした素材と緻密な装飾が織りなす異世界が広がる。圧巻なのが、2階から4階までを貫く高さ約20mのメインホール。イスラム建築の傑作「アルハンブラ宮殿」に着想した空間で、かまぼこ型のヴォールト天井に穿(うが)たれた無数の孔から光が降り注ぎ、星空のような幻想的な表情を見せる。光を操り、精神性をかたちにするガウディの真骨頂が凝縮されている。

パラウ・グエル
広々とした地下の厩舎。薄レンガを積層するカタルーニャの伝統工法を用い、曲面構造の実験を試みている。いまはここでイベントを開催することもあるとか。

住所:Carrer de Nou de la Rambla, 3-5, Barcelona 
開場時間:4〜10月:10時〜20時 11〜3月:10時〜17時30分 ※入場は閉館時間の1時間前まで
休館日:月(祝日を除く)、1/1、1/6、1月の最終週、12/25〜26
料金:一般15ユーロ ※毎月第1日曜は無料(オンラインでの事前予約が必要)
https://palauguell.cat

ベリェスガルド(フィゲーラス邸) 1900〜1909年

ベリェスガルド
邸宅の高さは、キリストの享年33と同じ数字の33m。緑や黄味を帯びたスレート壁が光によって表情を変える。

市内北西部の高台にあるフィゲーラス家の邸宅。紀元前から人々が暮らし、カタルーニャ・アラゴン連合王国最後の王・マルティン1世が城を築いた要塞跡地としても知られる。

“ベリェスガルド(美しい眺め)”という名の通り、塔からは街を一望できる。ガウディは受け継がれてきた歴史に敬意を払い、中世の遺構を修復・保存しながら、ネオ・ゴシック様式の邸宅を築いた。地元産スレートによる外観は装飾を控え、遺構との調和を優先している。一方で、バラ窓や尖塔、十字架など宗教的モチーフにガウディらしい意匠を重ね、独自の表情を与えた。場所の記憶を建築と景観の双方から甦らせた、希少な一作といえる。

ベリェスガルド
もともとは音楽室として想定されていた。ここでの構造実験が後の作品へつながっていく。照明の鉄細工は王冠を模したデザインになっている。

住所:Carrer de Bellesguard, 16-20, Barcelona 
開場時間:4〜10月:10時〜20時 11〜3月:10時〜17時30分 ※入場は閉館時間の1時間前まで
休館日:月(祝日を除く)、1/1、1/6、1月の最終週、12/25〜26 
料金:一般15ユーロ ※毎月第1日曜は無料(オンラインでの事前予約が必要)
https://bellesguardgaudi.com

カサ・バトリョ 1904〜1906年

カサ・バトリョ
ガウディの右腕、ジュジョールによる外装の色が印象的。両隣と軒高を揃え、街並みの調和を図った。

アシャンブラ地区の目抜き通りに立つ本作は、実業家ジョゼップ・バトリョの旧宅兼賃貸アパートを全面的に増改築した建物だ。骸骨を彷彿とさせる造形から「骨の家」とも呼ばれる。組積造を部分的に鉄骨で補強し、造形の自由度を高めた空間には、躍動する“海”の世界が広がる。外装から壁、天井、建具まで波打つ曲線が連続し、建物全体に一体感を与えている。

素材と光の扱いも見どころだ。破片タイルと色ガラスによる外装、ガラスの連続窓、上階に向かうほど青が深まる吹き抜けのタイルは、光とともに多彩な表情を見せる。これらの意匠は単なる装飾ではなく、緻密な通風・採光計画とも連動し、高密度化する都市住宅の課題に挑んだガウディの先見性を物語っている。朝日が建物に当たる早朝に見に行くべし。

カサ・バトリョ
外に開かれた主階のサロン。柱が構造を担っているため、曲線窓が連続する造形的な外観をつくることができる。

住所:Passeig de Gràcia, 43, Barcelona 
開場時間:9時〜19時15分 
無休 
料金:一般29ユーロ〜
www.casabatllo.es/ja

ラ・ペドレラ-カサ・ミラ 1906〜1912年

ラ・ペドレラ-カサ・ミラ
石灰岩でできた6層の建物は、うねる形状に合わせて窓や鉄柵のデザインが異なっている。

グラシア通りの交差点にそびえる巨大な集合住宅。モンジュイック産の石灰岩を積み上げた波打つ石塊のような外観から、「ラ・ペドレラ(石切場)」とも呼ばれる。ガウディ晩年の躍動的な造形が際立つ一方、カサ・バトリョまでの華やかな多色使いから転じ、素材の質感を活かした控えめな色彩表現へと至った点が興味深い。

建物はふたつの大きな円形パティオを住戸が取り囲む構成で、内部に光と風を行き渡らせる合理的な設計となっている。耐力壁に頼らない柱梁構造により、ダイナミックな曲面や直線のない変則的な平面計画を実現した。現在はカフェやオフィス、多目的ホールとしても活用され、かつて前衛的すぎると批判を浴びた建築は時代を超えて愛され続けている。

ラ・ペドレラ-カサ・ミラ
起伏に富んだ屋上には、煙突や換気塔、階段室が林立。ガウディは人目に付きにくい屋上や屋根裏で造形や素材の検証を重ねていた、と言われている。

住所:Passeig de Gràcia, 92, Barcelona 
開場時間:夏期(3/6〜11/1):9時〜20時30分 冬期(11/2〜12/24):9時〜18時30分 クリスマス(12/26〜2027/1/3):9時〜20時30分 2027/1/1:11時〜20時30分 
休館日:12/25 
料金:一般25ユーロ〜 
www.lapedrera.com/ja

Pen表紙

『ガウディとサグラダ・ファミリア』
Pen 2026年6月号 ¥880

Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら