Tシャツと並ぶ、春夏のワードローブに欠かせないアイテムがポロシャツだ。半袖ニットの快適さと、襟付きならではの上品さを兼ね備え、スポーツからデイリーウエアまで世界中で愛用されている。今回はそんなポロシャツの原点となった、ラコステの名品を取り上げる。
「大人の名品図鑑」ラコステ Podcast
普遍の名品を、その歴史や周辺のカルチャーとともに徹底解説していく『大人の名品図鑑』の音声版。ここでは、動画や記事で紹介できなかったエピソードを中心にトークを展開する。案内人を務めるのは、編集者の小暮昌弘とスタイリストの井藤成一。毎月上旬に公開。
伝説のプレイヤー、ルネ•ラコステが生んだ革新的なウエア
いまや世界中で愛用されているポロシャツ。その歴史は、1930年代のフランスに始まる。生みの親は、伝説的なテニスプレイヤー、ルネ・ラコステ。1925年から29年にかけて男子シングルスで、全仏、全英(ウィンブルドン)、全米選手権を何度も制覇し、世界ランキング1位に君臨した天才的なテニスプレーヤーだった。当時、テニス選手がユニフォームとして着ていたのは、布帛の長袖シャツ。『ラコステ その伝説』(パトリシア・カプフェレール、トリスタン・ガストン=ブルトン著 le cherche midi刊)で、ルネ・ラコステはこう語っている。
「私はよく風邪をひいていたが、それはダブダブのシャツを着てプレイするからではないかと思いあたった。(中略)そこでポロの選手たちが着ている、やわらかい生地でできた半袖の襟なしシャツに思いあたった。早速シャツ屋にこのポロシャツに襟をつけてくれるように頼んだ」
ルネ・ラコステが重視したのは、スタイル以上に品質だった。襟と肩、シームの下にはパイピングが施され、仕立てもていねい。日本で販売されているラコステの製品は、秋田の専門ファクトリーで生産されている。
こうして誕生したのは、半袖の襟付きで機能的なニット素材のシャツ。彼は「アメリカの暑さとウィンブルドンの寒さを軽減するためにラコステのシャツをつくった」と語ったとも言われている。現代まで続くポロシャツは、実はテニス用のシャツとして誕生したのである。
機能性と美しさを両立したデザイン
ポロシャツをつくるのに際して、彼が選んだ素材は、コットン100%で鹿の子織りのニットジャージー。軽くしなやかで、汗の吸収と熱の発散に優れ、テニスには理想的な素材だった。デザインは襟付きで、フロントにボタンを配したプルオーバー型。身体にフィットしたカッティングも当時としては斬新だった。フランスのテニス連盟は当初、そのフィット感などに難色を示したと言われている。しかし、彼のプレイスタイルとともに、この半袖シャツは大きな注目を集めることになる。
名品「L.12.12」に込められた意味
1929年、ルネ・ラコステは現役を引退。そして33年、自らの名を冠したブランドを立ち上げ、ポロシャツの商品化を実現する。
完成したポロシャツには、あるコードネームが付けられていた。それは「L.12.12」。Lはラコステの頭文字。最初の1は「プチピケ」と呼ばれるニットの鹿の子素材のこと。次の2は半袖。そして12は、製品化の際に彼が選んだ12番目の試作品を意味している。
ワニのエンブレムが象徴するもの
ワニのマークをデザインしたのは、友人でアーティストでもあった、ロベール・ジョルジュ。口を大きく開けたワニを、ルネ・ラコステのブレザーに刺繍したのが、このエンブレムの始まりだ。
このポロシャツで最も特徴的なのが、左胸のワニのエンブレムだ。選手時代、どんな球にも食らいつくプレイスタイルや、何事にも動じない姿から、ジャーナリストたちは彼を「ワニ(クロコダイル)」と呼んだ。そこからワニのアイコンが生まれたと言われている。
2023年発行の『ルネ・ラコステ』(ローレンス・ベナイム著 2nd Lap刊)には、別の逸話も紹介されている。デビスカップの試合のために訪れたアメリカ・ボストンで、彼はワニ革の高級スーツケースを見つけた。試合に勝利すれば、フランスチームのキャプテンから贈られる約束だったが、試合に敗れてしまう。しかし同書には後にこう語ったと書かれている。
「スーツケースはもらえなかったけれども、私のエンブレムとなったニックネームを手に入れたのです」
ワニのエンブレムは、後にブランドを象徴するアイコンとなる。しかも当時、服の外側にブランドロゴを付ける例はほとんどなく、ラコステのポロシャツはその先駆けだったと言われている。
誕生から90年以上。ラコステのポロシャツは、いまも基本デザインをほとんど変えていない。スポーツウエアでありながら上品さを備えるこの一着は、現代のポロシャツのスタンダードになったのである。
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