清澄白河には、花の下を歩いたその先に、思いがけない“寄り道”が待っている。今回は、お花見とともにふらりと立ち寄りたい、清澄白河の新店を連載「New & in the News」よりピックアップ。春の一日を、少しだけ豊かにする“寄り道”を紹介。
①レディオ クルチューラ コーヒー アンド ギャラリー
音楽とコーヒー、そしてアートがひとつの空間で混ざり合う、“小さな放送局”のような場所。ブラジル・サンパウロに実在したラジオ局へのオマージュを冠したこの店では、ヴィンテージのオーディオ機器から流れる音が、空間そのものを満たしていく。
店内には、店主が長年かけて蒐集した約1000枚のレコードが並び、さらにここでしか手に入らないオリジナル盤も展開。コーヒーを片手に、音に身を委ねる時間は、どこか私的で、しかし確かに街と繋がっている。カルチャーは発信されるものではなく、滲み出るもの。そんな感覚を静かに思い出させてくれる一軒だ。
RADIO CULTURA coffee and gallery
住所:東京都江東区森下4-9-14 12ビル 1F営業時間:15時〜21時 (水) 14時〜20時(日)19時〜22時(金、土※予約のみ)
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②サボ ビア バー アンド ブックストア
クラフトビールと本。いかにも相性の良さそうな組み合わせを、ここまで“居場所”として成立させた空間はそう多くない。この店は、元編集者である店主の視点が色濃く反映された、カルチャーの逃避行先のような場所だ。壁一面の本棚には、文化人類学やアナキズムといった骨太なテーマが並び、そのセレクト自体が一つの思想を帯びている。
一方で、タップから注がれるオリジナルを含むクラフトビールは、軽やかで難しさをほどいてくれる存在でもある。“サボる”という行為を、ここまで肯定的に感じさせる場所は、意外と貴重かもしれない。
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③トプソ
ショールーム「トプソ」は、1930〜80年代の名作家具を中心に、時代を超えて残るデザインを集めた空間だ。フィリップ・スタルクや倉俣史朗、ピエール・ポランといった巨匠たちのプロダクトが、ステップフロアによって構成された空間に静かに配置される。
そこに加わるのが、日本の工芸や独自にプロデュースされた作品群。単なる展示ではなく、時間と文化のレイヤーを感じさせる構成が印象的だ。ホテルのように整えられた空間は、プロダクトを“所有するもの”ではなく、“滞在しながら理解するもの”へと変えていく。
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④ボール
静かな通りに灯る、小さな立ち飲みワインバー。「Ball」は、その名の通り、軽やかで自由な空気をまとった一軒だ。8席ほどのコンパクトな空間に設えられたコの字カウンターは、人と人との距離を自然と近づけ、会話をひとつの“肴”へと変えていく。
グラスワインは一律¥1,000で気軽に楽しめ、料理も¥500と¥1,000の小皿中心ながら完成度が高く、ついもう一杯と手が伸びる構成になっている。IKEAのボウルを用いた照明や特注カウンターなど、空間のディテールにも遊び心が宿る。ふらりと立ち寄り、気づけば長居してしまう場所だ。
桜の季節は、どうしても“どこへ行くか”ばかりに意識が向く。けれど清澄白河では、その途中にある時間こそが、いちばん印象に残る。この春は、お花見のついでの“寄り道”こそが、正解かもしれない。