
キャラクターが描かれたポップな作品を目にしたとき、それが美術品なのかイラストなのかの線引って難しいじゃないですか。
作品に作家の感情や思想が込められているかどうか(見る人に感じられるかどうか)。
一枚の絵であっても、何層ものレイヤー構造を持つ奥行きが感じられるどうか。
そんな観点が「これはアートだ」と判断させるエッセンスだと思うのです。
なんてこと言いつつわたし自身は、
「部屋の壁に貼り毎日一緒に過ごすなら、アニメのポスターが軽やかで心地いいかな」などと考える人間。
アートよりイラスト(や漫画)のほうが自分の人生にとって有益なことが多々あり。
なので優劣のつけられる話でもありませんが、メディアに関わる仕事柄でつい「これはアートかイラストか」と考えてしまいます。
近年に活動をはじめた作家の青山哲士さんのポップな作品群をネットで目にしたとき、
「確かなアートなのでは?」と感じました。
色彩と構図のバランスが魅力的で、浮つかない力強さがあったからです。
でもその見解の確証を得るには、現物に触れる体験が必須。

直接観られる機会が訪れたのは、2026年3月11日(水)〜17日(火)まで東京・新宿髙島屋で開催されている青山さんの個展「「LOVE&PEACE 2026 in 新宿」。
2Fザ・メインスクエアのイベントスペースに出現したポップアップ展覧会。
中京テレビ放送が企画・主催した名古屋での展覧会を経て、髙島屋のMD本部メンズチームの協力により東京開催が実現したイベントです。
販売もされる展示作品は、その大半が名古屋と異なるもの。
このたび初日のオープン時間直前に会場入りさせていただきました。
来場した青山さんに伺ったコメントも交えて様子をお届けします!

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作品群を目の当たりにしてまず受けた印象は、ポップ、元気、ワクワク……。
その華やかな明るさの裏側に、なにか“重い要素“を感じます。
それがレイヤー構造があるアートたる所以ではないでしょうか。
そのあたりのニュアンスを青山さんに尋ねるとご賛同いただきました。
以下はお答えの要約です。
※あくまでも要約(この記事内の台詞コメントはすべて同様)。
「作品をご覧になった人から『元気をもらった』と言っていただくことが多い。
人に楽しんでいただくように仕上げているから、その意見はとても嬉しい。
ただ一方で、作品には自分が経験してきた苦しみも込めている。
そこに気づいていただけたら、作者としてより嬉しく思う」
露骨な表現をあえて避けつつ内包させた苦しみや悲しみの感情が、作品の奥行きに繋がっているのでしょう。

キャンバスに描かれたアクリル絵の具の筆跡が、作品ひとつひとつの存在感を際立たせます。
(画材はジークレー印刷も含みます)
大枠のモチーフ以外にぎっしりと描きこまれたキャラ、図案、言葉は、そのときどきに思い浮かんだことが中心のようです。
「過去の作品を時間が経ったあとに見返すと、『このときこんな気持ちだったのか』と気づかされる」
とのこと。
ある種の無自覚・無意識な思念や感情の発露があるようです。
わたしが「まるでカウンセリングですね!」とお伝えしたら笑っておられました。
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上の絵はメインキャラの外側の絵がキモ。
過去に描いた絵を塗りつぶし、「霧のようにぼんやりとした記憶」を表現。
その捨て去れない自分史を背負ったキャラは、前向きに笑顔で未来へと歩みを進めています。
上のYouTube動画は同じ手法で作られた別作品。
(展覧会場にあり)
作品制作の様子を公開した映像です。

出自がとてもユニークな作家さんです。
50歳になるまでジュエリーデザイナーの仕事を続けていました。
作品として絵を描くことをまったくしなかったそうです。
仕事をこなす生活を一新させ「やりたいことをやろう」と考えて手に取ったのがiPadでした。


スマホで見せていただいた、写真と見間違う黒白人物がiPadで描いた初めての絵。
最初でこのクオリティって……!
既存の写真のトレースはせず、頭に浮かんだ人物らしく。
「いろんな顔写真から各パーツを参考にしつつ、架空の人物にまとめた」
そうです。
この絵を元に書き込みを加えた作品も今回の展覧会にあります。

人気作家になった経緯も実におもしろく。
アート界へのコネクションもアートビジネスの知識もないなかで、6年前に観ていた日本テレビの番組「誰も知らない明石家さんま」内で「さんま画廊」への募集を知り、なんとなく応募。
番組内で認められ、個展を開催したりテレビ番組のマスコットキャラをデザインするなどを経てアメリカのギャラリーでも展示されるまでに至りました。
「テレビで紹介されたら急に、各所から3年ぶんの制作依頼が来て大忙しに」
とのエピソードも。
イメージする世界観のルーツは、1960〜70年代のアメリカ。
ヒッピームーブメントが起こり、ピースフルなフラワーチルドレンたちが生きていた時代。
青山さんいわく、
「昔の映画や音楽が大好き」
アーティストの多くはギャラリーに所属して生計を立てるのがセオリーでしょうが、どこにも所属せず活動も独学、作風も独学の日々。
ネット検索しても青山さんの情報が限られるのは、ギャラリーから各メディアに情報が行かないからかもしれません。
でも11日の新宿髙島屋オープン直後は人が押し寄せ大賑わいでした。
アートコレクターから一般層まで幅広い客層。

では最後に皆さんに朗報をひとつ。
14日(土)13時半〜15時半に青山さんが在廊して、ポスターを購入した人のポスターにサインします!
とてもカジュアルな物腰で話が楽しい青山さんに会いたい人も、「ポスターなら買えるぞ」という人もこの日が狙いめ。
会場にはグッズやファッションブランド「クルニ」とのコラボフーディなども販売中。
売れ行きしだいでは在庫が怪しくなるかもしれないので、確実にゲットしたい人は早めに新宿に立ち寄るのが吉です。

ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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