【ガウディの最高傑作】「カサ・バトリョ」内部に光のアートギャラリーがオープン。没後100年に開かれた“秘密のフロア”

  • 文:宮田華子
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スペイン

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Image courtesy of Casa Batlló

スペイン・バルセロナのグラシア通りに建つ「カサ・バトリョ(Casa Batlló)」は、アントニ・ガウディが20世紀初頭に既存建築の改装を手掛けた邸宅だ。去る1月31日、この邸宅内に現代アートギャラリー「カサ・バトリョ・コンテンポラリー(Casa Batlló Contemporary)」がオープンした。

 

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Image courtesy of Casa Batlló

今年はガウディ没後100年にあたる節目の年であり、さらにバルセロナはユネスコとUIAによる「2026年の世界建築首都」にも選ばれている。今回のギャラリー開設は、こうしたタイミングと重なるかたちで実現した。

改装建築としてのカサ・バトリョ

カサ・バトリョは1877年に集合住宅として建設され、1904年から1906年にかけて、実業家ジョゼップ・バトリョの依頼によりガウディが改装を行った。外観のモザイクや骨格を思わせるバルコニーが目を引く一方、内部にもガウディの工夫が随所に見られる。

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Image courtesy of Casa Batlló

主階(ピアノ・ノービレ。建物の主要居住階で2階に相当)では、室内奥まで自然光を導く吹き抜けや、曲線を多用した木製建具、手仕事による装飾が連続し、構造とデザインが一体となった空間が広がる。建物中央の中庭(パティオ)は、上階へ行くほど色調を変えたタイルで覆われ、均質な採光をもたらす仕組みになっている。

 

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Image courtesy of Casa Batlló

一般公開の歩みと3階ギャラリー

カサ・バトリョは1995年にイベント用スペースとして一部公開され、2002年には国際ガウディ年に合わせて内部の主な階層が観光客向けに本格公開された。2005年にユネスコ世界遺産に登録されて以降も、修復や保存とともに展示内容や見学の見どころがさらに充実してきた。

 

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Image courtesy of Casa Batlló

今回、一般来場者が利用できる形で開放された3階(ヨーロッパ表記では2nd Floor)は、これまで主に運営や修復関連の用途に使われ、通常は立ち入る機会は限られていた空間である。歴史的構造や意匠を残しつつ、現代アート展示に対応する最小限の改修が施された。設計を担当したのはバルセロナの建築スタジオ、メスーラ(Mesura)。金属素材を用いた天井は、ガウディ建築に通底する曲線を抽象的に反映し、既存空間と穏やかに調和するデザインとなっている。

初回展と見どころ

カサ・バトリョでは、2022年以降、建物のファサードを使ったプロジェクションマッピングなど、光や映像を用いたイベントが行われてきた。こうした体験型の試みを経て、内部空間で現代アートを展示できる新たなギャラリーが開設された。

 

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Image courtesy of Casa Batlló

オープニング・エキシビションは、マット・クラークが設立したロンドン拠点のアート集団、ユナイテッド・ヴィジュアル・アーティスツ(UVA)による「Beyond the Façade」(~2026年5月17日まで)である。展示では、光、映像、動き(kinetic sculpture)などを組み合わせた体験型インスタレーションが展開されており、UVAが去る1月31日・2月1日に建物外壁で行ったプロジェクションマッピング「Hidden Order」の発想を内部空間に拡張している。「昼と夜」「光と闇」「秩序と無秩序」といったテーマを巡る構成で、建物の内部空間を歩きながら、光や動きによって建築の特性を体感できる内容となっている。

 

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UVAによるプロジェクトマッピングの模様。Photo by Claudia Mauriño

今後は年に2回ほどの展示が予定され、現代アートを通じて建築と向き合う場として運営されるという。保存された遺産として眺めるだけでなく、用途を更新しながら使われ続けること―― これは、既存建築を改装したガウディの姿勢とも通じる。

外観だけでなく、光や動線、内部空間の連なりを歩いて体感できることが、カサ・バトリョを訪れる大きな魅力だ。ギャラリーは、その体験をさらに深める新たな入口となるだろう。

 

2026年1月31日と2月1日に開催された、UVAによるプロジェクトマッピングの動画。ガウディとUVA、2つの世界観の融合に圧倒される。@casabatllo - Youtube

 

宮田華子

ロンドン在住ジャーナリスト/iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授

アート・デザイン・建築記事を得意とし、さまざまな媒体に執筆。歴史や潮流を鑑み、見る人の心に届くデザインを探すのが喜び。近年は日本のラジオやテレビへの出演も。英国のパブと食、手仕事をこよなく愛し、あっという間に在英20年。

宮田華子

ロンドン在住ジャーナリスト/iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授

アート・デザイン・建築記事を得意とし、さまざまな媒体に執筆。歴史や潮流を鑑み、見る人の心に届くデザインを探すのが喜び。近年は日本のラジオやテレビへの出演も。英国のパブと食、手仕事をこよなく愛し、あっという間に在英20年。