服に求める価値は、少しずつ変わってきている。かつてはデザインやトレンドが重視されていたが、いまは「着ている時間そのものが心地いいかどうか」が判断基準になりつつある。
長時間身につけていても疲れないこと。動いた時にストレスを感じないこと。そして、どんな場面にもなじむこと——こうした要素が、服選びの軸になっている。
ニューバランスが提案するアパレル「NB GREY」のMade in Japanは、まさにその感覚に寄り添うプロダクトだ。シューズで長年培ってきた「Fit & Comfort」という思想を、服というプロダクトでどう表現するか。この問いに正面から向き合った結果が、ここにある。
目指したのは、日常の延長線にありながらも、確かに質の違いを感じさせる服だ。くつろぎの時間も、外出する日も、フォーマルな場も——“境界のない服”という発想。その理想を、素材の選定から縫製技術まで、あらゆる工程で追求している。


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着心地の良さは、素材と縫製にある
「NB GREY」のMade in Japanスウェットの核となるのが、その素材である「KOBE TERRY」だ。世界に1台しかない丸編機でじっくりと編み立てられた裏毛素材で、一般的なものとは異なる構造を持っている。
通常の裏毛は、パイルが魚のウロコのように寝てしまう。しかしKOBE TERRYは違う。一本一本のパイルが立ち上がり、生地の内部に空気の層が生まれる。その結果、見た目以上に軽く、やわらかな着心地を実現した。触れた瞬間の心地よさだけでなく、着続けた時に感じる負担の少なさも、この構造によるものだ。
この素材が生まれた背景には、生地メーカーの「最高のスウェットを作ろう」という強い想いがあった。神戸の編み機メーカーと共同で機械の開発に着手。設計から3年。ようやく編めるようになるまでさらに1年——計4年をかけて辿り着いた答えだという。限られた糸番手のみが対応可能という特殊仕様の編み機で、パイルのループを長くするだけでなく、一つひとつを立たせる。その技術開発こそが、最大の挑戦だった。
せっかくの素材も、縫製が追いつかなければ意味がない。縫い代の凹凸を抑えるフラットシーマという手法を採用し、肌への当たりをやわらかくした。ただ、立体的なパターンで構成されているため、カーブする線が多い。長さもカーブの具合も微妙に違うライン同士を縫い合わせるには、職人が一方の生地を微妙な手加減で調整しながら縫わなければ、きれいに仕上がらない。
「リラックスできる」という感覚を、感覚的な言葉で終わらせず、構造として成立させる。その姿勢が、NB GREYのものづくりを特徴づけている。
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動いた瞬間にわかる、立体的なシルエット


NB GREYは、室内で完結する服ではない。外に出て動いた時にこそ、その完成度がはっきりと表れる。
開発チームが意識したのは、「カジュアルとフォーマル、どちらにも寄り切らない状態をどう美しく保つか」だった。その答えが、シルエットと情報量のバランスにある。硬さと抜け感が共存する中間的なシルエット。ディテールを引き算したミニマルなデザイン。そうした要素が、街の中で自然になじむ佇まいを生んでいる。
通常のジャケットは手を下ろした時に美しく見えるよう作られているが、腕を上げたり作業するには向いていない。一方、トレンチコートのラグラン袖は腕を上げやすいが、脇の下に生地が余りもたつくことがある。今回はそれぞれのいいとこ取りをした。肩の上にシームが来ないように接ぎ合わせ、身頃はボリューム感を持たせることで、スウェットと身体の間にゆったりとした「間」を生み出している。腕を上げた時も、歩いた時も、姿勢を変えた時も——服が動きを妨げない。
見た目はあくまでシンプル。だが着ると、違いがはっきりとわかる。その着心地を、2種類のフィット感から選べるようにした。「レギュラーフィット」と「オーバーサイズフィット」だ。レギュラーフィットは端正で、ジャケットのインナーにもなじむ佇まい。オーバーサイズは余白を生かしつつ、一枚でも様になるバランスだ。
どちらにも共通しているのが、立体的なパターン設計だ。人間の身体には直線がない。だからこそ、3Dでデザインを組み立てることで着心地の良さを追求している。「立体故に平置きにしにくい」——その言葉通り、このスウェットは折り紙のようには畳めない。日常の中で無理なく着続けられること。その積み重ねが、服の信頼感につながっていく。
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日本の技術が生み出した、新しい基準
NB GREY Made in Japanは、「プレミアム」という言葉が似合う。素材や設計、縫製の一つひとつを見ていくと、その意味は自然と理解できる。
スニーカーブランドとしてのアイデンティティも、このコレクションには息づいている。「スニーカーと合わせたときに自然にスウェットがハマるデザインを意識した」という開発者の言葉通り、足元との相性まで計算されている。室内での着心地のよさと、外出時のシルエットの美しさ。その両立が、このコレクションの本質だ。
着るたびに安心感があり、気づけば手に取っている——そうした服は、実は多くない。流行に左右されず、年齢も選ばない。日常に寄り添いながら、静かに質を引き上げてくれる存在だ。
世界に1台の編機から生まれる素材、熟練の職人による縫製、身体のラインに沿う立体パターン——企画からデザイン、ものづくりに至るまで、日本の技術を結集している。日本発のデザインチームが描いた構想は、アジア圏を経て、グローバルへと広がっていく。メイドインジャパンのクラフトマンシップを世界に発信する、その先駆けとなるプロダクトだ。
朝起きて袖を通す瞬間から、夜帰宅してくつろぐ時間まで。リラックスして過ごす休日も、ジャケットを羽織って外出する日も——どんな場面でもなじみ、着ている時間そのものを心地よくする。
NB GREY Made in Japanは、ニューバランスがアパレルで提示する、新たなスタンダード。日常を格上げする完成度が、ここにある。
