【宇宙船のような新美術館】スター・ウォーズ展示のルーカス美術館が誕生 ロサンゼルスで来年ついに開館

  • 文:青葉やまと
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アメリカ

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かつて何の変哲もない広々とした駐車場だった、ロサンゼルスの一角。その土地に、宇宙船のような巨大建築が出現する。スター・ウォーズの生みの親であるジョージ・ルーカス氏が約1500億円を投じ、4万点超のコレクションを収蔵する美術館だ。2026年秋のオープンを目指す。

「はるか彼方の銀河系」から来た流線型フォルム

米ロサンゼルス南西部、南カリフォルニア大学の南方に広がる、広大なエクスポジション公園。かつて駐車場だったその一角に、宇宙船のような建造物が目下建設中だ。施設の面積は11エーカー(約4.5ヘクタール)で、東京ドームほぼ1個分に相当する。

純白のファサードは、2つの円が有機的に融合したかのような流線型。屋根付近の大部分を覆う曲面ソーラーパネルと開口部が、ブラックのほどよいアクセントを添える。柱の接地部は球面状に処理されており、まるで地面から少し離れているかのような絶妙な浮遊感を醸し出す。

設計は、ハルビン・オペラハウスや、「マリリン・モンロー・タワー」の愛称で知られるカナダのうねる高層タワー住宅などを手がけた、MADアーキテクツ。停泊中の宇宙船を思わせるヴォリュームのその下には、カリフォルニアの日差しから人々を守る広大な日陰空間が広がる。内部には35のギャラリーと2つの劇場、図書館、教育施設のほか、カフェやレストランも備える複合型施設だ。

 設計者のマ・ヤンソン氏は英ウォールペーパー誌に対し、「芸術とストーリーテリングの感情的な力を体現する空間」として構想したと語った。思わず撫でたくなるような曲線に、柔らかなエッジ。こうしたフォルムは、山や雲、波といった自然の地形から着想を得たものだという。

「単に自然を模倣したのではありません。地に足がついていながら、どこか異世界的でもある空間体験を創り出すのです」。訪れる人々に開放感と想像力、そして平和を感じてほしいとヤンソン氏は述べる。スター・ウォーズにふさわしい壮大なビジョンが形になった。

4万点のコレクションで大衆のための芸術を称える

同館の常設コレクションは4万点を超える。建築専門メディアのアーキ・デイリーによると、イラストや絵画からコミックアート、写真、映画資料まで多岐にわたり、ノーマン・ロックウェル氏やフリーダ・カーロ氏、写真家アンリ・カルティエ=ブレッソン氏やドロシア・ラング氏らの名品が収蔵される予定だ。

コミック界からは『ファンタスティック・フォー』『X-メン』『アベンジャーズ』などマーベルコミックスの礎を築いたジャック・カービー氏や、ヒロイック・ファンタジーの第一人者フランク・フラゼッタ氏といった巨匠も名を連ねる。

展示の切り口には、独自の哲学がある。ギャラリーは単に、よくある年代順やメディア別で編成することも可能だった。だが、ルーカス美術館は別の形を選んだ。家族、仕事、コミュニティ、冒険といった人間の普遍的な経験をテーマとし、こうしたグループを順に見せることで豊かなストーリーを紡ぐ。来館者は時代を超え、映画やコミック作品の神髄とも言える「物語性」を主軸に鑑賞できる仕掛けだ。

アートネット・ニュースによると、ルーカス氏は7月のサンディエゴ・コミコンで「大衆の芸術のための神殿(a temple to the people's art)」を目指すと宣言した。

長年、コミックアートや雑誌・イラストは、西洋美術史において伝統的に高い文化的価値を持つとされる絵画や彫刻などの、いわゆる「ハイアート」には及ばないとする暗黙の風潮があった。

美術館ではこれまでのコミック観を覆し、改めてその影響力に光を当てることで、芸術的価値を称える趣向だ。ルーカス氏の映画キャリアを彩った衣装や小道具も展示され、物語が持つ力を体感できる空間となる。

開館目前に相次ぐ幹部の退職

ただし、不安要素もある。開館まで1年を切るなか、組織体制に課題が浮上している。アートネット・ニュースによると、5年間にわたり開館準備を率いてきたチーフキュレーターのピラー・トンプキンス・リヴァス氏が退職した。後任は置かず、ルーカス氏自身がキュレーションを監督する方針だ。3月にはCEOも退任し、元20世紀フォックス会長のジム・ジャノプロス氏が代行を務めている。

人員削減も続いた。5月にはフルタイム15名、パートタイム7名を解雇。対象は教育・公開プログラム部門が中心だった。ロサンゼルス・タイムズの取材に匿名で応じた従業員は、当時の様子を「衝撃的で混乱していた」と振り返る。

10億ドル(約1500億円)規模の巨大プロジェクトだが、パンデミックやサプライチェーンの混乱で開館延期が続いてきた。いよいよ来年に迫った2026年9月の一般公開に向け、急ピッチで準備が続く。

屋上緑化に機能性のある滝。環境を意識した設計

開館後に訪れる機会があれば、充実の館内展示はさることながら、約6000平方メートルの屋上緑化にも注目したい。

Studio-MLAのミア・レーラー氏がデザインを手がけ、かつてコンクリートで覆われていた駐車場を、200本の樹木と数百種の在来植物が彩る緑の空間へと変貌させる。空中庭園や円形劇場のほか、建物の自然冷却効果を高める滝も設けられる予定だ。

ほかにも徹底して環境への配慮がなされている。ウォールペーパー誌によると、地熱システムや雨水回収機能、約2200平方メートルの屋上太陽光パネルを導入。高断熱の外皮構造に加え、あらゆる方向において約1メートルの地震動に耐える免震設計も施す。ヤンソン氏は同誌に「建物は生きたシステムの一部になる。公園の一部、都市の一部、自然界の一部になる」と語った。

壮大な構想を経て、2026年の開館がいよいよ近づいている。銀河を思わせる新たなランドマークが、まもなくロサンゼルスに姿を現す。

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Aerial view of Lucas Museum construction, September 2025.
© 2025 Lucas Museum of Narrative Art. Photo courtesy of Hathaway Dinwiddie. Photo by Pedro Ramirez. All rights reserved.

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Aerial view of Lucas Museum construction, September 2025.
© 2025 Lucas Museum of Narrative Art. Photo courtesy of Hathaway Dinwiddie. Photo by Pedro Ramirez. All rights reserved.

 

青葉やまと

フリーライター

1982年生まれ。大手メーカー系企業でのシステムエンジニア職を経て、2010年から文筆業に転身。IT・アートから国際政治・経済まで、幅広くニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『プレジデントオンライン』などに寄稿中。

青葉やまと

フリーライター

1982年生まれ。大手メーカー系企業でのシステムエンジニア職を経て、2010年から文筆業に転身。IT・アートから国際政治・経済まで、幅広くニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『プレジデントオンライン』などに寄稿中。