【戦後美術を塗り替えた女性たち】 男性中心の前衛史の陰で生まれた、もうひとつの「アクション」

  • 文:河内タカ(アートライター)
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田中敦子『地獄門』 1965〜69年 ビニール塗料、アクリル・カンヴァス 331.5×245.5cm 国立国際美術館蔵 Ⓒ Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association

1950年代から60年代の日本において、足で絵を描く白髪一雄に代表される具体美術のように、豪快さや力強さといった激しい身振りによる男性画家が主体となっていた「アクション・ペインティング」が高く評価されていた。その一方で、身体性や衝動的なエネルギーを伴う表現方法とは異なる、フランスを中心としヨーロッパで広まった抽象芸術運動「アンフォルメル」に触発され、新たな表現方法を模索した女性美術家たちがいた。

展覧会のタイトルである「アンチ・アクション」は、特定の画風や流派を指す名称ではなく、美術史家の中嶋泉が提唱したジェンダー研究の批評的な観点である。その考えを足掛かりにして、本展は草間彌生や田中敦子、福島秀子ら14名の女性美術家たちの未発表作品を含む約120点を紹介。短期間ながら女性美術家が前衛美術の領域で注目を集めた動きを独自の視点から再考している。

出展された作品の特徴をいくつか挙げると、草間や田中のように、円、点、網目などの同じモチーフを執拗に反復して画面全体を埋め尽くした表現がそのひとつだ。ほかにも、抑制されたプロセスで作品を構築したり、あるいは電球、布、ガラス、金属など「芸術」と見なされにくかった素材を積極的に用いたことも挙げられるだろう。

日本の近現代美術史の再解釈を試みる本展は、単純に「アクション」を否定するのではなく、男性による主流派とは異なる種類のアクションであったり、身振りや作為の痕跡が残されていることから、素材の質感、筆致、描くという行為そのものを芸術として評価する視点が感じられる。戦後日本の男性批評家たちからは見過ごされてきた女性美術家たちによる、もうひとつの「アクション」のあり方を示す意欲的な展示であり、必見だ!

『アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦』

開催中〜2026/2/8 東京国立近代美術館
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時〜17時(金、土は20時まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(1/12は開館)、12/27〜1/3、13
一般¥2,000
www.momat.go.jp