一保堂茶舗 青山店
根津美術館の向かい、青山の緑を借景にするように、京都の老舗・一保堂茶舗の新たな旗艦店が誕生した。江戸時代から続く茶舗の哲学を、現代の都市空間へとアップデートしたこの場所は、「お茶を飲む」行為そのものを改めて体感させてくれる。
店内の象徴となるのは、“太陽”をかたどった円天井。窓辺には、茶畑で日差しを和らげる寒冷紗を想起させるカーテンが掛けられ、足元には麻布に漆を重ねた床が広がる。自然の要素を抽象化し、都市の中にそっと溶け込ませた設計が、空間全体に静かなリズムを与えている。
光がたっぷりと差し込む喫茶室では、抹茶や煎茶、玉露など多彩な日本茶を、季節の菓子とともに楽しめる。なかでも青山店限定の抹茶「SEIZAN」は、豊かな旨味と奥行きのある余韻が印象的で、一服ごとに気持ちが整っていくのを感じる一杯だ。
一方、地中をイメージした売場には、定番のティーバッグに加え、茶器や抹茶スターターキットも揃い、自宅でのお茶時間を気軽に始められる提案がなされている。格式にとどまらず、日常へと開かれた姿勢も一保堂らしい。
都会の真ん中で味わう一杯は、特別でありながら、暮らしに自然と寄り添うもの。青山店は、日本茶との距離を心地よく縮めてくれる、新しい入口となりそうだ。