年に一度開催されるアートブックの祭典、TOKYO ART BOOK FAIR。会場でひときわ存在感を放つのは、本だけではない。シルクスクリーンの手刷りから大胆なグラフィック、出版社の遊び心がにじむロゴワークまで、クリエイターたちの発想が宿った多様なトートバッグも、ページの外側に広がる表現世界だ。開催初日に出合った、個性あふれるトートバッグたちを編集部がレポート。
①TOKYO ART BOOK FAIR2025 公式トートバッグ
まずは今回の公式トートバッグから紹介したい。アーティスト・宮崎知恵(Stomachache.)が描き下ろした「TABF ASIA TOUR」トートは、フェアの空気そのままに、遊び心がぎゅっと詰まった一点だ。寝ても覚めても、食事の最中までも本を離さない“アートブックの虫”がひと際目を惹き、本好きの心をくすぐる。裏面には、まるでツアーTシャツのようにフェアの開催日程がずらり。手にした瞬間から、フェアそのものを連れ歩くような楽しさがある。
TOKYO ART BOOK FAIR
Instagram@tokyoartbookfair②imo.books. (東京)
世田谷を拠点に海外のアート書籍やZINE、雑貨を紹介する「imo.books.」からは、大胆でユニークな一点。グラフィティライター・REMIOのステッカーをそのまま“ポケット”に仕立てた斬新なデザインで、貼られた位置も柄も一点ずつ異なる。まさに、自分だけの表情を持つトートだ。ハンドルの差し色も効いていて、何を忍ばせようかと想像が膨らむ。フェアの中でも、思わず足を止めてしまう存在感を放つ。
imo.books.
Instagram@imo_books③Open Letter(東京)
中島あかねによるアートワークをシルクスクリーンで刷り込んだ一点。まず目を奪われるのは、その圧巻のカラーバリエーションだ。パッと見ただけでも10種類以上が並び、うごめく細胞のような有機的なフォルムが、生地いっぱいにのびのびと躍っている。色の選択によって印象ががらりと変わり、普段は選ばない色に手を伸ばしてみたくなる。日常の装いに、ちょっとした冒険心を添えてくれるトートだ。
Open Letter
Instagram@open_letter_gallery---fadeinPager---
④本屋青旗(東京)
ひとまわり大きめで裏地付きの、頼もしさと軽さを両立したトート。本屋青旗からは、チェックのシャツ生地を用いた一点が人気を集める。どんな服にもすっと馴染む素材感で、表地には小さく青の刺繍があしらわれている。控えめながら、丁寧な息づかいが感じられる。文庫本がすっぽり入る内ポケット付きで、ZINEと一緒に持ち歩きたくなる仕立てだ。
本屋青旗
Instagram@aohatabooks⑤Perimeter Books(オーストラリア)
アートブックフェア常連のPerimeter Booksからは、ニュージーランドのアパレルブランド「ascolour.」の布地を使った上質なトートが壁にずらり。丈夫でありながら、手に触れるとやわらかく滑らかなコットンの風合いが心地よい。ロゴの配色も特徴的で、裏面には表のフォルムに呼応するように凹凸を描いた「Books」のプリントが施されている。持ち手は長めで、容量もたっぷり。荷物をしっかり受け止めてくれる安心感もうれしい、使い勝手の良い一枚だ。
Perimeter Books
Instagram@perimeterbooks
⑥arigatos press(メキシコ)
「メキシコのトートは、この小さめサイズが一番使いやすいんだよ」と教えてくれたのは、メキシコ文化の温度を感じる表現を届ける arigatos press。店主は「みんなこういうトートを片手に、お酒を買いに行くんだ。ほら、ワイン二本がちょうど入る」とニヤリ。銭湯や図書館へ出かけるときにも活躍しそうな、うれしい“ちょうどいい”サイズ感が魅力だ。
arigatos press
Instagram@_arigatos---fadeinPager---
⑦Fotokino(フランス)
フランス・マルセイユを拠点に、写真やビジュアルアートの展示・刊行を行う Fotokino。トートを眺めていたら、店主が「これがいいんだよ」と言わんばかりに前へぐっと差し出してくれた。幾何学的なラインが描く静かな力強さと、深いブルーに差し込むアクセントカラー。そのバランスの良さに、思わず見惚れてしまう。肩掛けと手持ちのツーウェイ仕様で、“アートブックフェアで選ぶならこの一点”と思わせるような存在感だ。
Fotokino
Instagram@fotokino
⑧Deadbeat Club(アメリカ)
“本に金はない”という精神を掲げ、写真集や限定出版を世に送り出す独立系出版社 Deadbeat Club。作品やエディションをつくるだけでなく、“There’s no money in books.” の言葉の通り、制作の純度とコミュニティのつながりを誠実に守り続けている。その姿勢を映すように、トートバッグも実にストレート。横長のシルエットにマチを備えた、いわば“ザ・トートバッグ”とも言えるオーセンティックな2色展開。余計な装飾を排し、本づくりの本質をそのままかたちにしたような潔さが心地よい。
Deadbeat Club
Instagram@deadbeatclub
⑨Yuki MIKAMI(東京)
モチーフに意味を与えず、線と形、余白のバランスだけで世界を描く Yuki MIKAMI。自由でたおやかな線の感性は、トートバッグにもそのまま息づいている。揺れ動く筆致や余白の取り方が、日常の光や影をすっと受け止めてくれるようで、フェア会場でもひときわ目を引く存在だった。線の表情をゆっくり味わいながら、長く使い育てていきたくなる奥行きのあるデザインだ。
Yuki MIKAMI
Instagram@shortbangs
⑩vermikko books(東京)
ジャクソン・ポロックへのオマージュとして生まれた、プレイフルな一点もののトートバッグを手掛けたのは、ミニサイズのアートブックを専門とする vermikko books。一枚ずつインクを吹きかけて仕上げているため、表情はすべて異なる。飛び散る色の粒子が小さな宇宙のようで、使い込むほどにジーンズのような経年変化も楽しめそうだ。
vermikko books
Instagram@vermikko