【カルティエ 銀座4丁目ブティック】流れるドレープが包む、 ムーンゴールドのファサード

  • 文:佐藤季代
Share:
最大長5mのアルミ鋳造パネルはすべてオーダーメイドでパーツを作成。透明感と落ち着いた輝きを併せ持つ“ムーンゴールド”を再現している。photo: Raphael Olivier

世界のラグジュアリーブランドが軒を連ねる銀座。2025年9月、カルティエの新たな旗艦店が誕生した。4フロアからなる店舗はアジア最大規模を誇り、最上階にはラウンジなどを備えた日本初となるラグジュアリー空間「レジデンス」を設けている。ファサードデザインを手掛けたのはクライン ダイサム アーキテクツ。「銀座の街並みのなかでアイコニックな存在でありながら、カルティエを想起させるエレガントでやわらかな印象の建築を目指しました」とアストリッド・クラインは語る。

11.jpg
 「深いゴールドやロゼのような色彩まで、刻一刻と変化する光に応じて、まったく違う表情が現れるのを楽しんでほしい」とマーク・ダイサム。photo: Raphael Olivier

ファサードは、ゴールドに輝く金属のリボン、日本の伝統文様である青海波をあしらったガラス、そして通常の窓ガラスによる3層構成で奥行きを与えた。建物全体を“ジュエルボックス”に見立て、シルクのファブリックが優しく包み込むようなドレープを描く。夜には波打つような開口部からこぼれる光が、銀座の街に静かな輝きを灯す。内装は、パリ本店を手掛けるモワナー・ベタイユが設計。ファサードの曲線をインテリアにも連続させ、内外が響き合う一体感のある空間をつくり上げた。

12.jpg
 有機的な曲線を描く開かれたファサードが人々を誘い込む。インテリアは日本の伝統的な美意識を表現した装飾やアーティストの作品が彩る。photo: Raphael Olivier

職人の手仕事によって一点一点生み出されるジュエリーのように、オーダーメイドで仕立てられた新たな店舗。日仏の感性を融合させながら、カルティエが追い求める永続的な美のかたちを、建築として体現している。

13.jpg
ラウンジやバーなどを備える最上階の「レジデンス」。ファサードと対応するように、奥の開口や腰壁に緩やかなカーブを取り入れている。photo: Tomoyuki Kusunose

 

カルティエ 銀座4丁目ブティック

住所:東京都中央区銀座4-2-11
TEL:0120-190-484
営業時間:11時〜19時
定休日:不定休
www.cartier.jp
【設計者】クライン ダイサム アーキテクツ
アストリッド・クラインとマーク・ダイサムが1991年に設立。建築、インテリア、公共スペース、インスタレーションなど複数の分野のデザインを手掛ける。本建築ではファサードデザインを担当した。