『水戸芸術館』1990年竣工、展示風景『Arata Isozaki: In Formation』2023年 Courtesy of Power Station of Art, Shanghai
2022年に逝去した建築家、磯崎新。没後、国内初となる大規模な回顧展が開催されている。会場は磯崎が設計した「水戸芸術館」。彼の思想を、彼の空間で体感できる。
磯崎新は1931年、大分県生まれ。東京大学丹下健三研究室を経て63年に磯崎新アトリエを設立した。以後、「群馬県立近代美術館」など国内外に多くの作品を残している。展覧会は60年以上にわたって建築だけでなく思想や美術、批評の分野でも活躍した彼の軌跡を追うもの。磯崎がたびたび言及した「群島」をモチーフに構成される。
会場では丹下健三のもとで関わった、東京湾を横断する人工都市『東京計画1960』などアンビルトの都市計画、「大分県医師会館」など故郷・大分で手掛けた初期作品、「つくばセンタービル」「カタール国立コンベンションセンター」などの代表作が紹介される。また磯崎は複数の建築家を束ねてひとつの街をつくる、“建築のキュレーション”とでも言うべきプロジェクト、「くまもとアートポリス」「ネクサスワールド」などを手掛けた。美術にも造詣が深く、「奈義町現代美術館」では荒川修作+マドリン・ギンズらと、また「ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ」ではアニッシュ・カプーアと協働している。主要建築をシルクスクリーンで表現した「還元」シリーズや水彩画、旅先で訪れた古典建築、モダニズム建築のスケッチブックも興味深い。
会場の「水戸芸術館」も重要な出品作のひとつだ。1990年に開館した同館は磯崎によるポストモダン建築の代表作。展覧会にあわせて刊行された『水戸芸術館ガイドブック』を片手に館内を巡ることで磯崎建築を体感できる。建築や都市計画だけでなく多くの著書を残した彼は、思想界の巨人でもある。本展でその全貌に触れることができる。
『磯崎新:群島としての建築』
開催中〜2026/1/25会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
TEL:029-227-8111
開館時間:水戸芸術館現代美術ギャラリー
休館日:月(1/12は開館)、12/27〜1/3、13
一般¥900
www.arttowermito.or.jp/gallery
