アルバニア
バルカン半島の小国アルバニアで、「土地とともに建てる」をコンセプトにした新しい住宅「シグネチャー・ヴィラ」の建設計画が進行中だ。伝統、景観、現代デザインを融合させたこの地ならではの邸宅となる予定で、アルバニアの建築的進化を象徴するものになると期待されている。
引き立て役のデザイン、現地の文脈を重視
「シグネチャー・ヴィラ」は、アルバニア南部の海岸の崖に建設される高級開発地区「ジャレ・ベイ」を構成する 4 棟の住宅群の一部。デザインを担当したのは、マイアミを拠点とし、欧米の数か所にオフィスを構える国際的設計事務所、オッペンハイム・アーキテクチャーだ。「土地の上に建てるのではなく、土地とともに建てる」というこの事務所の哲学に基づいて設計されている。
オッペンハイム・アーキテクチャー・ヨーロッパのディレクター、ビート・ヒュースラーは、「建築は立地と一体となるべきだ」と主張する。「シグネチャー・ヴィラ」に関しては、素材、光、眺望が調和する、崖そのものから生まれた隠れ家を目指したと説明。デザインは控えめにして、アルバニアの景観と遺産を主役にしたと述べている。
シンプルな建物は、大地や海と一体化
公開された完成予想図によれば、ヴィラは現場打ちコンクリートで形成され、全体的なデザインは、永続性とシンプルさを強調するものだ。その一方で、建物には伝統的なアルバニア刺繍にヒントを得た複雑な模様が施され、敷地と地域遺産への強い結びつきを生み出している。
大地と水平線の間に浮かぶように配置された室内空間は、イオニア海と空に浮かぶ月や星々の広大な眺めをフレームに収めつつ、海と石との静かな対話の機会を作り出す。バルコニーには、細長いプールを設置。崖に張り出すかのように作られており、山と水と水平線とのつながりをより強固なものにしている。さらに、精巧な細部の装飾や仕上げを通じ、アルバニアの文化を視覚的に表現これらが敢えて色味を失くした室内のミニマルな美しさを補完するアクセントとなっている。
アルバニアの魅力を引き出す、新たな挑戦
オッペンハイム・アーキテクチャーは、アルバニアの首都ティラナに専用事務所を構え、これまでに多様な景観と文化的アイデンティティの魅力を引き出す建築物をいくつも手掛けてきた。伝統、景観、現代デザインを融合させたサイトスペシフィックな建築である「シグネチャー・ヴィラ」は、これまでの彼らの取り組みをさらに発展させるもので、2026 年に予定されている完成が待ち望まれる。
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山川真智子
●Webライター早稲田大学第一文学部卒業。レコード会社に勤務した後に渡米し、コミュニケーション学の修士号取得。米ノースウエスト航空機内誌の編集を経て、日本航空の機内エンターテイメントの選定買付に携わる。夫の転勤で通算9年の東南アジア滞在後、帰国して世界のニュースを紹介するライターに。現在は関西の片隅で、仕事の合間にフランス語学習に奮闘中。
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