中世の修道院に起源を持ち、当時の製法がいまもなお守られているチーズ、パルミジャーノ・レッジャーノ。 原産地呼称保護(DOP)認定を厳格に守り続けるコンソーシアムの会長に話を聞いた。
日本でもすっかりお馴染みとなったパルミジャーノ・レッジャーノ。その生産過程はEUに登録された厳格な規定によって管理されているのをご存じだろうか。
原産地呼称保護(DOP)の認定を受けるためには、原産地と定められた地域のみで生産されること、その地域内で乳牛の飼育からチーズの製造までが行われていること、最低12カ月間の熟成、製造から包装まですべての工程が同じ地域で行われることなどが義務付けられている。イタリアのパルマ県をはじめ約10000km²内にある全291のチーズ工房がコンソーシアムに加盟しているが、会長を務めるニコラ・ベルティネッリはチーズの番人といえる人物だ。
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素材と時間、人の技によって生み出される、複雑で豊かな味わい
「パルミジャーノ・レッジャーノの原材料はいたってシンプルです。使用するのは牛乳、塩、レンネット(凝乳酵素)の3つのみ。発酵を促進するための添加物や保存料はいっさい使いません。生乳は牛の主食である牧草や干し草、飼料の影響を受けており、地域特有の微生物による細菌活動が見られます。複雑で豊かな味わいは、素材と時間、そして人の技によって生み出されるのです」
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ホイールには固有の連続英数字コードが刻まれたカゼインプレートが付けられており、いつでもどこでも原産地まで遡って追跡することができる。いわばチーズのIDカードだ。型から取り出したホイールの全周には点状の刻印が刻まれているが、これに特別な刻印バンド (写真)を使って製造年月、工場の登録番号を記す。
1ホイール約40kgのパルミジャーノ・レッジャーノをつくるのに必要な牛乳は約550ℓ。これに前日から用意したホエー(乳清)とレンネットを加え、自然に凝固させる。出来上がったカード(凝乳)を熟練の職人が伝統的な道具で細かく砕き、55度まで加熱すると、チーズの粒が底に沈み、ひとつの大きな塊になる。それを取り出してふたつのホイールに切り分け、型に入れ、製造年月日や登録番号を刻印。数日後、飽和した塩水に浸し塩分を吸収させたら製造工程は完了。
いよいよ熟成の開始だ。最短熟成期間は12カ月。基準に合格したチーズには焼印が押され、ここで正式にパルミジャーノ・レッジャーノとして認定され、さらに熟成を進める。
「イタリアでは多くの銀行がパルミジャーノ・レッジャーノを担保とした融資を提供しています。熟成中のチーズは投資先として安全性の高い資産とみなされます」
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ワインはもちろん、スコッチウイスキーや日本酒とのペアリングも、奥深い味を広げてくれる。
「パルミジャーノ・レッジャーノには天然のグルタミン酸が豊富に含まれており、熟成が進むにつれ増加します。この旨み成分は鰻や和牛など、日本の料理にもぴったりです。また、日本酒は果実や花、土など複雑な香りを持つため、チーズの風味を引き立たせ、相性抜群です」
歴史が培った味の芸術を堪能したい。
パルミジャーノ・レッジャーノ協会
www.parmigianoreggianodou.eu
※本記事は欧州連合規則 第1144/2014号に基づく、EU共同出資による農産物販促事業プログラム101194314 ENSO-EUの一環です。
