カレンダーとしてはあまり役に立たなそうだが、世界でもっとも有名なカレンダー。それが「ピレリ・カレンダー」だ。

私見が入っておりますが、アートブックとまで言われるピレリ・カレンダーは、とにかく凝った出来。2026年版の発表会が、25年11月14日にプラハで開催された。
このカレンダーは、今回で52回目。1964年にスタートしている。なので、もはやくだくだしい説明はいらないかもしれない。

イタリアのタイヤメーカーであるピレリが制作するカレンダーで、トップクラスのファッション写真家とモデルを起用することで知られている。
そもそもピレリはゴムの会社。タイヤでは、F1をはじめ、フェラーリやランボルギーニといったスーパースポーツの足元を固めている。
一方でアート好き、建築好きにもよく知られている。建築に興味ある人で、ジオ・ポンティに依頼したミラノのピレリビルを知らない人はいないだろう。

最近の話題は、23年にミラノ郊外に開設した「ピレリ・ハンガー・ビコッカ」だ。現代アートセンターであり、最近では柳幸典の回顧展「ICARUS」が開催されて大きな話題を呼んだ。
カレンダーにおいては、ピレリは、写真家にはじまり、テーマ、モデルと、それぞれの選択を通して、現代的な主題を追求している。

「ピレリ・カレンダー2026」は、ノルウェイの写真家ソルベ・スンズボー(Sølve Sundsbø)と、「人間と自然」を大きな主題とした。
ファッション写真家として認知度が高く、デジタル技術を使い、従来と一線を画した仕上がりの作品が多い。動画でも知られ、2010年にザ・ニューヨークタイムズの依頼で制作した「14 Actors Acting」は、マット・デイモン、バンサン・カッセル、クロエ・サビニーら、男女の俳優を主人公にした連作。エミー賞を受賞している。

「(カレンダーの)依頼があったとき、考えたのは、エレメンツというコンセプトに掘り下げてみようということでした」
私が参加した、チェコ共和国のプラハでのメディア向け発表会。そこでスンズボー氏は、インタビューに応じて、上記のように説明する。

エレメント(単数)は、風、水、火、土のこと。この4つが自然界の構成要素とされ、人間も例外でない。たとえば、風の人は、"動き"や”力”を強く秘めている、といった具合。
スンズボー氏は、4つのエレメンツを、11人のモデルに割り振った。世界的によく知られた人も多く、この人がこのエレメントか、と見るのも一興だ。
例をあげると下記のとおり。
・FKAツイッグス(英国のシンガー・ソングライター):土
・エヴァ・ハーツィゴヴァ(チェコ出身のスーパーモデル):水
・ビーナス・ウィリアムズ(テニスプレイヤー):火
・イリーナ・シェイク(ロシア出身のスーパーモデル):風

加えて、ティルダ・スウィントン(女優)、グェンドリン・クリスティー(女優)、イザベラ・ロッセリーニ(女優)、スージー・ケイブ(ファッションデザイナー/モデル)、ルイーザ・ラニエリ(女優)、杜鵑(ドゥ・ジュアン、モデル/女優)、アドリア・アルホナ(女優)、が登場している。
「私は(写真を通して)物語を語るのが好きなのです」とスンズボー氏は言う。

「大変といえば大変なお仕事でした」と撮影を振り返って語るのは、水中での撮影となったエヴァ・ハーツィゴヴァだ。
「通常の撮影では、モデルの私も、自分の髪型やメイクや、もちろんポーズもコントロールできていると思っています。でも水中では、ヘアスタイルもメイクもポーズも表情も、コントロールしきれない。カメラがどこにあるのかだってわかりません」

あとで出来上がった写真を観て、なんておもしろいんだろうと思ったそうで、「そもそも自然が大事ってコンセプトに共感できます」とつけ加えた。

「自然とのハーモニーって考えても、すてきなコンセプトだったと思う」
グウェンドリン・クリスティも、メディアむけ発表会場でインタビューに応じて答えてくれた。
モデルになった人たちは、ピレリ・カレンダーのコンセプトに理解を示し、参加したことに、おおいなる意義を感じたという。

ビーナス・ウィリアムズや、イリーナ・シェイクも、同様の感想だった。

「できるだけ大判にしたかった」と、プロダクトへのこだわりを語ったスンズボー氏。あいにく、ピレリ・カレンダー2026の市販予定はない。将来の市販を強く願いつつ、26年版は、ここで画像を楽しんでください。















