【ジャガー・ルクルト「レベルソ」名作5選】アールデコが生んだ、角形時計の到達点

  • 写真:渡邉宏基(LATERNE)
  • 文:並木浩一 
  • 協力:富永 淳
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1925年のパリ万博から今年で100年。“アールデコ博”とも言われたこのパリ万博は、アールデコ躍進のきっかけとなり、腕時計の造形にも大きな影響を与え、多くの名作を生み出してきた。そのDNAは世紀を超えていまも息づく。今回はジャガー・ルクルトの「レベルソ」を見ていこう。

2025年は腕時計の“名作”が改めてフォーカスされた1年であった。そして、名作と呼ばれる腕時計には、一つひとつの物語がある。時代を超えて受け継がれる100本の腕時計、その“物語”を読み解いていこう。

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直線の美が昇華した、モダン様式の到達点

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1931年に誕生した初代「レベルソ」。ポロ競技の最中にも着けたままでいられる腕時計という要望を満たした。時計本体を反転させる発想はいまも新鮮だ。

腕時計のアールデコの成熟期、1931年に誕生した傑作がジャガー・ルクルトの「レベルソ」である。

モダンデザインの重厚な底流が透ける角形シルエットは、現代でもまったく色褪せることのないアールデコの痕跡だ。ケース外郭の輪郭線からガラス縁、ダイヤル上のレイルウェイミニッツトラックに至るまで、直交線と平行線が幾度も繰り返されている。その幾何学的構成こそが「デザイン」であり、ケース上下に刻まれた3本の直線が「装飾(ゴドロン)」であることを示し、世間にそれを認めさせた。しかも「レベルソ」は腕時計の機械部分をそっくり反転して、裏返しにすることができる。

ポロ競技中に着けたままでいるという着想は、機能主義と芸術的感性の両方を満足させる、まさにアールデコだ。古びることなく、今日でもさまざまなバリエーションを拡大するコレクションの背骨には、不朽のアールデコ精神が生きている。

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「レベルソ・クラシック モノフェイス」

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手巻き、SSケース、ケースサイズ35.78×21㎜、パワーリザーブ約38時間、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥1,267,200/ジャガー・ルクルト 0120-79-1833

初代のデザインコードを継ぐケース上下のゴドロン装飾様式、レイルウェイミニッツトラック、ツートーン仕上げのダイヤル、バトン針。初期からさまざまなダイヤルがつくられたが、そのクラシックなスタイルを現代に継承するモデル。ケース反転時に現れる台座内部にはペルラージュ仕上げを施すなど、反転時計のデザインを磨き上げてきたメゾンの誇りが光る。

 「レベルソ・トリビュート モノフェイス」

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手巻き、SSケース、ケースサイズ40.1×24.4㎜、パワーリザーブ約42時間、カーフストラップ、3気圧防水。¥1,425,600/ジャガー・ルクルト

初代とほとんど同じサイズと形状を採用したモデル。ケースの小型化がトレンドの現在に呼応するかのようなサイズと、誰の手首にも自然と収まる理想的なプロポーションが身上だ。ダイヤル外周に敷設された角形のレイルウェイミニッツトラック、先端を尖らせたバーインデックス、短い剣型のドフィーヌ針。どのディテールにも、アールデコ後期の成熟した華やかさが薫る。

 

「レベルソ・トリビュート デュオ・トゥールビヨン」

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手巻き、18KPGケース、ケースサイズ45.5×27.4㎜、パワーリザーブ約38時間、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥25,740,000(参考価格)/ジャガー・ルクルト

両面に異なる表示を持つ「デュオ」を、トゥールビヨンを搭載したウルトラスリムキャリバーのプラットフォームに統合したマニュファクチュールの渾身作。どちらの面からも、トゥールビヨンの異なる表情を楽しめる。クレードル(反転ケースを支える外枠)にはミラーポリッシュ仕上げディスクを備え、トゥールビヨンを通して光を反射させる劇的な効果を生む。

「レベルソ・ハイブリス メカニカ・キャリバー185」

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手巻き、18KWGケース、ケースサイズ 51.2×31.0㎜、パワーリザーブ約50時間、アリゲーターストラップ、3気圧防水、世界限定10本。¥286,000,000(参考価格)/ジャガー・ルクルト

「レベルソ」誕生90周年記念で製作された、計4面の超複雑時計。表面は永久カレンダーでビッグデイトとデイ/ナイト表示を配し、フライングトゥールビヨンがのぞく。裏面はデジタルジャンピングアワーを備えたミニッツリピーター。クレードルには3種の月齢表示、ケースバックには南半球のムーンフェイズを装備。

「レベルソ・トリビュート・ジオグラフィーク」

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手巻き、SSケース、ケースサイズ49.4×29.9㎜、パワーリザーブ約42時間、レザーストラップ(交換可能なレザー×キャンバスストラップが付属)、3気圧防水。¥3,388,000/ジャガー・ルクルト

表面にはグランドデイト表示、裏面にはワールドタイマーを装備する。1998年発表のモデルを再解釈した、2025年の最新作だ。ケース上部にはシームレスにプッシャーが装備され、ワールドタイムを1時間毎にジャンプさせる調整を容易に行える。世界地図はレーザー彫刻とハンドラッカーを組み合わせて仕上げられ、視覚的にも美しい。

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並木浩一(桐蔭横浜大学教授/時計ジャーナリスト)

1961年、神奈川県生まれ。1990年代より、バーゼルワールドやジュネーブサロンをはじめ、国内外で時計の取材を続ける。雑誌編集長や編集委員など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。ギャラクシー賞選奨委員、GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)アカデミー会員。著書に『ロレックスが買えない。』など多数。

 

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