【人気ブランドの周年モデル4選】シチズン、ウブロ、ゼニス、ロジェ・デュブイまで一挙に紹介!

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:柴田 充
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2025年、時計史に名を刻む多くの名門ブランドやコレクションが、アニバーサリーイヤーを迎えた。各ブランドの節目を祝う特別なモデルからは、それぞれの哲学と未来への意志が伝わってくる。この記事ではゼニス、ロジェ・デュブイ、ウブロ、ザ・シチズンのアニバーサリーモデルを紹介する。

2025年は腕時計の“名作”が改めてフォーカスされた1年であった。そして、名作と呼ばれる腕時計には、一つひとつの物語がある。時代を超えて受け継がれる100本の腕時計、その“物語”を読み解いていこう。
『未来へ受け継ぐ 名作腕時計、100の物語』
Pen 2025年12月号
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①ゼニスの160周年記念モデル
「G.F.J」

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G.F.J/手巻き、PTケース、ケース径39㎜、パワーリザーブ約72時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ(交換可能なブラックとブルーのカーフストラップが付属)、5気圧防水、世界限定160本。¥6,952,000/ゼニス(TEL:03-3575-5861)

1949年から62年にかけて製造された「Cal.135」は、当時235回ものクロノメトリー賞を受賞し、ヌーシャテル天文台の腕時計部門で5年連続で1位を獲得。これを復刻し、40時間だった駆動時間を72時間に延長し、秒停止機構を追加。美しいブルーのラピスラズリ文字盤を囲む“ブリック”ギョーシェは、本社の外壁を摸す。サブダイヤルはMOPを採用。

天文台コンクールを沸かせた、創業者へのオマージュ

創業160周年を迎えたゼニスの歴史は、ブランドのアイコンであり、時計史に残る名作クロノグラフ「エル・プリメロ」によって語られがちだ。だがそれも輝かしいレガシーのひとつであり、その背景となったブランドの精神や伝統にこそ真価はある。

1865年、ジョルジュ・ファーブル゠ジャコは22歳にして自らの工房をスイスのル・ロックルに開設した。目指したのは、それまで分業で行われていた時計製造をひとつの屋根の下に集約すること。それによって異なる分野の知見やノウハウがぶつかり合い、ひとつの目標に向かって新たな発想や創造性を生み出す。そうした近代的時計製造が、より正確で信頼性の高い時計に不可欠と考えたからだ。この完璧な腕時計を追求する精神は、天空の頂点を意味するブランド名にも象徴されている。

優れた精度を証明するため、天文台が行う計時コンクールにも1897年からいち早く参加した。はたして受賞したクロノメトリー賞は2333件に上り、他のブランドを圧倒したのだった。

160周年を記念したモデルも当時の名作ムーブメントを復刻し、リスペクトを捧ぐ。そこに記されたG.F.Jは創業者のイニシャルであり、いまもマニュファクチュール・ル・ロックルの壁面を飾る。まさに変わることなく輝き続ける天頂の星なのである。

ROOTS 

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早熟の天才時計師。ジョルジュ・ファーブル=ジャコは9歳の頃から時計製造の修業を重ねた。1898年にキャリバー「ゼニス」を発表し、1911年にブランド名に採用した。

LEGACY 

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伝説的な「Cal.135」。「Cal.135」の名は、ヌーシャテル天文台コンクールの腕時計部門でのキャリバーの最大直径30㎜に相当する13リーニュと厚さの5㎜にちなむ。

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②ロジェ・デュブイの30周年記念モデル
「エクスカリバーバイレトログラード カレンダー」

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エクスカリバーバイレトログラード カレンダー/自動巻き、18KPGケース、ケース径40㎜、パワーリザーブ約60時間、シースルーバック、レザーストラップ、10気圧防水。¥9,647,000/ロジェ・デュブイ 銀座ブティック(TEL:0120-151-995)

30周年記念モデルは、1996年に発表されたメゾン初のモデルと同じバイレトログラードを搭載する。文字盤の左右で曜日と日付を示し、美しいシンメトリーを完成させる。2000年代初頭の代表作をモチーフにしたデザインは、ノッチを入れたベゼルや3本ラグといったアイコニックなスタイルを継承し、40㎜のケース径も手首に馴染む。12時位置にはジュネーブシールの紋章を刻印。

ジュネーブの伝統を守り、さらなる前衛へ

ロジェ・デュブイが歩んできた30年は、ブランドの歴史であると同時に、スイス時計の現代史といってもいいだろう。

1970年代から80年代にかけてのクオーツ式の台頭に対し、スイス時計は構造変革やブランド再編によって90年代半ばようやく息を吹き返し始めた。時計に高級感やステータスを求め、複雑機構を頂点とする機械式への価値が見直される中、名門ブランドばかりでなく、腕利きの時計師たちが自らのブランドを立ち上げた。そのひとつがロジェ・デュブイである。

目指したのはジュネーブ時計製造の伝統の継承であり、いち早くジュネーブシールを取得し、独自の表現力を備えた複雑時計を発表してきた。特にトゥールビヨンは、複数化やセンターレイアウトなど超絶技巧を注ぎ、傑作の数々を生み出した。

30周年を祝す新作は、メゾンのアイコンである「エクスカリバー」に、バイレトログラードを搭載した。創業前の88年に特許を取得し、ロジェ・デュブイ本人が特別な思い入れを持っていた特別な機構が、過去と現在をつなぐ。ブランドのオリジナリティの確立から、ストーリー性のある独創的な表現やランボルギーニとのコラボレーションといった魅力の拡張を経て、さらなる高級時計を目指すステージに入った。前衛を希求する精神は揺るがない。

ROOTS

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有名ブランドを渡り歩いた天才。創業者のロジェ・デュブイは時計学校の卒業製作で既にジュネーブシールを取得していた。その後名門ブランドを経て自らのブランドを興した。

LEGACY

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最初のバイレトログラード搭載モデル。1988年に独自のレトログラード機構の特許を取得。96年に代表作「シンパシー」を発表、バイレトログラードの永久カレンダーを搭載した。

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③ウブロ「ビッグ・バン」の20周年記念モデル
「ビッグ・バン 20th アニバーサリーチタニウム セラミック」

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ビッグ・バン 20th アニバーサリーチタニウム セラミック/自動巻き、チタンケース、ケース径43㎜、パワーリザーブ約72時間、ラバーストラップ、シースルーバック、10気圧防水、世界限定500本。¥2,849,000/LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ(TEL:03-5635-7055)

初代のデザインを忠実に再現し、ローレット仕上げのベゼルエッジや先端にラバーを配した長方形プッシャー、ロズンジパターンのストラップも復活した。一方で自社製ムーブメントを搭載し、ケースはチタンの採用で軽量化。より際立たせたカーボンパターンに、赤いクロノグラフ秒針が映える。ワンクリック機構の採用でストラップが容易に着脱交換できる。

「アート・オブ・フュージョン」の衝撃を、いま再び

誕生20周年を迎えたウブロの「ビッグ・バン」が、21世紀の幕開けを飾った初のアイコンウォッチであることに異論はないだろう。ブランドはもとより、まさにここから現代に至る時計界のビッグバンは始まったのだ。

ウブロは1980年に創業し、ゴールドケースにラバーストラップを組み合わせた初の高級時計として脚光を浴びる。その革新性に着目し、2005年にブランドをリノベーションしたのが時計界の重鎮ジャン-クロード・ビバー。異なる素材やアイデアを融合させる「アート・オブ・フュージョン」のコンセプトのもと、「ビッグ・バン」を発表したのだった。

多層構造からなるケースは、異素材を組み合わせ、両側に突起した特徴的なケースに、ベゼルにはビスを配す。ブランド黎明期のデザインを見事に換骨奪胎し、モダンに生まれ変わった。周年記念モデルはこれを復刻する。

本来の個性をよりスタイリッシュに磨き上げる一方、ムーブメントには自社製の「ウニコ」を搭載し、最新機能と品質を向上した。創業時からのオリジナリティが宿る、その大胆かつ新鮮な魅力はいまも決して色褪せない。

ビス留めした特徴的なベゼルから、ブランド名をフランス語で舷窓を意味するウブロと名づけた。それは、大海原をのぞくようにいまも未来を映し出す。

ORIGIN

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現在のウブロを形成する傑作。2004年にウブロCEOに就任したジャン-クロード・ビバーは、ウォッチコンセプターとして手腕を発揮し、ブランドの中興の祖となった。2005年の初代モデルは、ベゼルにセラミック、ラグやケースサイドにはステンレス・スチールを組み合わせた。異素材の採用はその研究開発に結びつき、現在は先進素材のパイオニアとしての地位を築く。

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④ザ・シチズンの30周年記念モデル
「30周年記念限定モデル メカニカルモデル Caliber 0200」

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30周年記念限定モデル メカニカルモデル Caliber 0200/自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径40㎜、パワーリザーブ約60時間、シースルーバック、5気圧防水、世界限定300本。¥715,000/シチズンお客様時計相談室(TEL:0120-78-4807)

ザ・シチズンはクオーツ式から始まり、やがてエコ・ドライブのムーブメントを搭載し、高い実用性と信頼性を備える。機械式は2010年に初登場。21年に「Cal.0200」を経て、周年記念モデルに続く。精度はスイスのクロノメーターを超える平均日差−3〜+5 秒。シャープな面で構成したケースは美しいヘアラインで仕上げ、細部に施したポリッシュをアクセントに、品格ある輝きを演出する。

市民に愛され、貢献し続けた30年

ザ・シチズンは、シチズン時計の設立65年を記念し、1995年に誕生した。それは「市民に愛され、市民に貢献する」というブランドの理念に基づき、発表当時の新聞広告にも「壊れないキカイはない。しかし、直す努力は続けられる」と謳われ、いたずらな付加価値でなく、本当に価値ある時計を目指す姿勢を訴えた。文字盤には「常に先を見据え、理想を追求する」「身に着ける方に永く寄り添う」というふたつの意志を込めたイーグルマークを掲げる。

30周年を記念するモデルは、未来への飛翔をテーマに、コレクションのシンボルであるイーグルの羽ばたきを思わせるパターンで文字盤を飾る。ラグを省いたすっきりとした面構成のケースや一体感あるブレスレットとのコントラストも美しく映えるのだ。

搭載する「キャリバー0200」は、2012年に傘下に収めたスイスのムーブメントメーカー、ラ・ジュー・ペレ社との協業で誕生した。それは、海外に比肩する機械式時計のさらなる技術革新を目指す情熱を内に秘める。

機械式をシンボライズするスモールセコンドは、本来クラシックな機構だが、その直径を広げて大きく配することで計器のような高精度を感じさせる。そんな現代的な感性をデザインに吹き込み、日常に寄り添い続けてきた30年の集大成にふさわしい。

ORIGIN

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圧倒的高精度の初代モデル。現在も変わらない「共に一緒に生きていくこと」をコンセプトに掲げ、当時ブランドが持ちうる技術のすべてを結集し、腕時計の本質を追求した時計としてザ・シチズンは誕生した。初代モデルから既に、年差±5秒という高精度や、機能美を具現化した普遍的なデザイン、時計業界初の10年間無償保証などを確立していた。
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柴田 充(時計ジャーナリスト)
1962年、東京都生まれ。自動車メーカー広告制作会社でコピーライターを経て、フリーランスに。時計、ファッション、クルマ、デザインなどのジャンルを中心に、現在は広告制作や編集ほか、時計専門誌やメンズライフスタイル誌、デジタルマガジンなどで執筆中。

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