【水面に浮かぶ“真珠”】湖の上に建つ、幻想的なオペラハウスが始動。著名建築家が手がける

  • 文:宮田華子
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HANOI ハノイ/ベトナム

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© RPBW, rendering by Aesthetica Studio

ハノイの湖面に、美しい「真珠」が静かに姿を現そうとしている。

レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップ(RPBW)が設計を手掛ける「Isola della Musica(音楽の島)」が、ついに着工を迎えた。

湖のあいだに生まれる「音楽の島」

計画地は、ハノイの西湖とダム・チー湖という二つの湖のあいだに位置する。これまで両湖を分けていた約1万3347㎡の既存地盤を撤去し、水の流れを回復させることで、新たな人工島を生み出す構想だ。

 

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© RPBW

島の上に建てられる建築物は自然と共存するように設計されている。湖面の上にやわらかく浮かぶ姿は、まるで連なった真珠を連想させる。

水と光に呼応する建築群

「音楽の島」は、メインとなるオペラハウスを中心に、練習スタジオ、展示空間、屋外ステージ、カフェなど、文化活動を支える複数の建築群で構成される。

レンゾ・ピアノ建築作品特有の軽やかな屋根の曲線と透明感のあるガラスファサードが、湖面の光を受けて柔らかくきらめく。昼は自然光が建物内部に拡散し、夜は内部の灯りが水面に反射して、まるで浮遊する真珠のように見える。

建築の高さは周囲の樹木や街並みに合わせて低く抑えられ、水平ラインが水辺の景観に溶け込むよう計算されている。環境負荷を最小限に抑えるため、自然換気や日射制御の工夫も取り入たとのこと。静謐な湖面に呼応する「呼吸する建築」を目指している。

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© RPBW, rendering by Aesthetica Studio

ベトナムの素材と職人技を未来へ

建築の構造には、ガラスとスチールに加え、ベトナム産の木材や石材など、地域の素材が積極的に用いられる予定だ。これにより、国際的な建築言語とローカルの文化的アイデンティティが融合し、伝統と現代性の調和が図られている。

RPBWの公式発表によれば、同プロジェクトはすでに施工段階に入り、完成は2030年を予定している。

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© RPBW

 

音楽と建築が響き合う、新たなランドマークへ


レンゾ・ピアノは、かつて「建築とは光をかたちにする行為だ」と語っている。この「音楽の島」もまた、音と光、水と風が一体となって奏でる空間として構想されたものだ。

ハノイの豊かな自然と文化のあいだに浮かぶ建築群― 単なる劇場ではなく、人々が集い、感性を育む「文化の真珠」として、静かに輝きを放つだろう。

宮田華子

ロンドン在住ジャーナリスト/iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授
アート・デザイン・建築記事を得意とし、さまざまな媒体に執筆。歴史や潮流を鑑み、見る人の心に届くデザインを探すのが喜び。近年は日本のラジオやテレビへの出演も。英国のパブと食、手仕事をこよなく愛し、あっという間に在英20年。