【小山薫堂の愛用時計7本】独自の審美眼で集めた、時と記憶のコレクション

  • 写真:丸益功紀(BOIL)
  • 文:佐野慎悟
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創造の現場でクリエイターたちとともに“時”を刻む腕時計。そこには、生き方の哲学と美意識が宿る。食、湯、カメラ、クルマなど多様な分野に精通し、独自の感性で“豊かさ”を紡いできた小山薫堂。誌面で紹介した2本に加え、思い出のエピソードとともに、特別に5本の愛用時計コレクションを紹介してくれた。

2025年は腕時計の“名作”が改めてフォーカスされた1年であった。そして、名作と呼ばれる腕時計には、一つひとつの物語がある。時代を超えて受け継がれる100本の腕時計、その“物語”を読み解いていこう。

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小山薫堂 × リシャール・ミル「RM 035」、グランドセイコー「SBGA129」

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小山薫堂●放送作家、脚本家 1964年、熊本県生まれ。『料理の鉄人』など斬新なテレビ番組を数多く企画。脚本を担当した映画『おくりびと』で第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞と第81回米アカデミー賞外国語部門賞を受賞。

出会いの縁が導く、時と記憶のコレクション

ひとつは、リシャール・ミルの「RM 035」。小山の自社の名であるN35との縁を感じて35の数字がつくこのモデルを選び、ロットナンバー35番を手に入れることができたという。軽く、スポーティで、Tシャツに短パンといったカジュアルな装いにもよく馴染む。

もうひとつは、自身がプロデュースしたグランドセイコーのAJHH(日本正規高級時計協会)特別限定モデル。パワーリザーブ針を赤くし、裏蓋に「ENERGY」と刻んだ。 

「針が下がると、自分のエネルギーも減っていくように感じる。だから巻き上げると、今日も頑張ろうという、エナジー(ENERGY)を注入する儀式になるんです」

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「SBGA129」(左)、「RM 035」(右)

誠実さを感じるというグランドセイコーは、年上の人との会食など、謙虚さを意識する場面に。一方でリシャール・ミルは、軽やかな遊び心で日常を彩る。

「時計はコレクションというより、出会いの記憶です。新しい時計を買うというより、新しい時間と出会う感覚。その瞬間の自分の気持ちや状況が刻まれていくから、時計を見るたびに思い出が蘇ります。時の流れとともに、人との縁も重なっていく気がするんです。時計にも、その時々の出会うタイミングがある。だからこそ、次の世代に渡す時、『かっこいい生き方だったな』と思ってもらえるようでありたいですね」

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誌面で紹介しきれなかった、愛用時計コレクション

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左から、ロレックス「デイトナ」、パテック フィリップ「アクアノート」、パテック フィリップ「コンプリケーション ワールドタイム」、ウブロ「ビッグバン オールグリーン」、ジャガールクルト「レベルソ・クラシック モノフェイス」

・ロレックス「デイトナ」

20代の頃、サーキットへ愛車のスポーツカーを走らせに行ったときに、レース仲間が自分の「デイトナ」でタイムを計っている姿に衝撃を受け、以来憧れ続けた腕時計。人気モデルのためウェイティングリストに入ったが、すっかり忘れていた7年後に突然連絡が入り、ようやく購入できた。

・パテック フィリップ「アクアノート」

カーキのアイテムが好きな小山が、カーキの文字盤とラバーベルトを採用した「アクアノート」が出るというニュースを見て、反射的に購入した一本。しばらく「欲しい」と思える時計が見当たらなかった中で、久しぶりに心が動かされた腕時計。

・パテック フィリップ「コンプリケーション ワールドタイム」

もともと仲のよかった渋谷西武の外商担当者に、「なんでもいいから僕が欲しがるようなものを持ってきたら買いますよ」と伝えた結果、提案されたもの。自分にしか見えないプラチナケースの6時位置に、さり気なくダイヤモンドがセッティングされているのもお気に入りのポイント。

・ウブロ「ビッグバン オールグリーン」

ジュネーブサロンでウブロのジャン-クロード・ビバーCEO(当時)から直接紹介された、世界限定500本のクロノグラフ。ちょうど映画『おくりびと』がアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされたというニュースを受けたタイミングで、ビバーからの「幸運のパワーが宿っている」という後押しもあり、お守り代わりに手に入れた。見事受賞を叶えたラッキーアイテムだ。

・ジャガールクルト「レベルソ・クラシック モノフェイス」

同じく映画『おくりびと』が2009年日本アカデミー賞で脚本賞と作品賞を受賞した際に、副賞として授与されたもの。裏蓋には「日本アカデミー賞」の刻印が施されている。スーツの時は革のベルトを選ぶことが多く、かしこまった場面でも活躍してくれる一本。

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