時計界の次なる名作のトレンドとしてPenがいま注目するのは、ドレスウォッチとラグジュアリースポーツを融合した、薄く、小さく、洗練されたデザインの“ドレスポ”だ。
ブレスレット一体型の外装などラグスポの要素を持ち合わせながら、ケースは小径化・薄型化を果たし、セクターダイヤルやギョーシェ彫りといったクラシカルな意匠や、研ぎ澄まされたミニマルなデザイン、シックなカラーリングなど、ドレスウォッチへと歩み寄るように進化を遂げた新作の数々。
ルイ・ヴィトンからパテック フィリップまで、名だたるブランドが今年発表したドレスポウォッチの名作6本を紹介しよう。
2025年は腕時計の“名作”が改めてフォーカスされた1年であった。そして、名作と呼ばれる腕時計には、一つひとつの物語がある。時代を超えて受け継がれる100本の腕時計、その“物語”を読み解いていこう。
『未来へ受け継ぐ 名作腕時計、100の物語』
Pen 2025年12月号
1.ルイ・ヴィトン「タンブール オトマティック スティール シルバー」
2002年に誕生した、フランス語で「太鼓」を意味する「タンブール」は、16世紀のドイツで初めてつくられたトラベルウォッチに由来し、ドラム型ケースを特徴とする。23年には初の自社製自動巻き3針ムーブメント「LFT023」を搭載し、8.3㎜の薄型かつブレスレット一体型のデザインに一新。伝統的なセクターダイヤルを採用し、スポーティな外装にクラシカルな要素を加味した。
2.パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF オートマティック」
“神の手を持つ時計師”と呼ばれるミシェル・パルミジャーニがスイス・フルリエの地でブランドを立ち上げてから25周年となる、2021年に誕生した「トンダ PF」。その最新作は36㎜径に8.6㎜厚というスマートさに加えて、カレンダーも省いたノンデイト仕様。バーリーコーン模様の繊細なギョーシェが入ったストーンブルーのダイヤルが静謐なラグジュアリーを醸す。
3.IWCシャフハウゼン「インヂュニア・オートマティック 35」
伝説的ウォッチデザイナー、ジェラルド・ジェンタが1976年に発表した「インヂュニアSL」のデザインをもとに、2023年に復活した「インヂュニア」コレクション。今年加わった35.1㎜の新作は、厚さも9.44㎜とスリムになり、シャツの袖口にも納まる。ダイヤルのグリッド模様や5つの機能ネジを備えたベゼルなど、象徴的なデザインを残しながら、細部まで再設計し、サイズダウンを図った。
4.パテック フィリップ「CUBITUS 7128/1G」
昨年、25年ぶりに誕生した新コレクションから、初のホワイトゴールドを採用し、5㎜小径化した新作が登場。スクエアのケースを特徴としながら、8.5㎜の薄型仕様と、角に丸みを帯びた八角形のアウトラインにより、都会的な洗練さを醸す。リューズガードやダイヤルの水平エンボスパターンなど、「ノーチラス」から継承した意匠も。
5.ジラール・ペルゴ「ロレアート ミッドナイトブルー」
1975年の誕生から50周年を迎えた「ロレアート」。2017年に登場した現行モデルは、ブレスレット一体型のトノー型ケースの上に丸形の台座、さらにその上に八角形ベゼルを配したデザインコードなど、初代からのDNAを受け継ぐ。38㎜にサイズダウンした本作は、厚さ10㎜の薄型ケースに、文字盤にはクル・ド・パリ模様のギョーシェを施し、スポーティな中にドレッシーな輝きを携える。
6.ロンジン「コンクエスト」
1954年に商標を登録し、70年以上の歴史を持つコレクションが昨年、現代的にリファインされ38㎜サイズも新たに加わった。控えめなリューズガードを備えた端正なフォルムと、ダイヤル上の優美なサンレイ仕上げや、外縁を切り替える同心円を重ねたサークル装飾など、スポーティな精悍さの中にエレガンスが共存する。シリコン製ヒゲゼンマイを採用した「Cal. L888.5」を搭載し、機能性も申し分ない。

『未来へ受け継ぐ 名作腕時計、100の物語』 ¥990
Pen 2025年12月号