画家・藤田嗣治の作品を数多く所蔵する日本とフランスの美術館による共同企画『藤田嗣治からレオナール・フジタへ 祈りへの道 』が軽井沢安東美術館で2026年1月4日まで開催中だ。
1920年代、エコール・ド・パリの寵児としてパリ画壇の注目を集め、日本人画家としてヨーロッパで大成功をおさめた藤田嗣治。その後世界各地を旅しながら第二次世界大戦中を日本で活動した。しかしそこで取り組んだ「作戦記録画」によって、藤田は戦後追われるようにして故国を去り、1950年再びフランスの地を踏む。忌まわしい過去と決別すべく、新たに取り組んだテーマは「祈り」だった。60代を迎えた藤田がこの時期に取り組んだのは「子ども」と「宗教」だ。とりわけ少女や母子像は、無垢と純粋の象徴として繰り返し描かれている。藤田とゆかりのあるランス美術館から46点が、藤田作品を専門とする軽井沢安東美術館で特別展示中だ。
晩年、ランス礼拝堂のフレスコ画のために描かれたスケッチ。『四聖獣に囲まれた神神秘の子羊』(1965年) ランス美術館
フランス人として終生かの地で生きたいと願った藤田は1955年、妻・君代とともにフランス国籍を取得後、洗礼を受けてカトリックへと改宗する。洗礼式を行ったのはシャンパーニュ地方・ランスにあるノートルダム大聖堂。この地でレオナール・フジタとして、残りの人生を賭けた大きな挑戦をすることになる。
ランスの人々の協力を得て、藤田は念願の礼拝堂建立に向けて準備を進めた。「平和の聖母子礼拝堂」と名付けられた建物のために、内部のフレスコ画、ステンドグラスはもとより細部に至るまですべて自ら計画し、装飾のためのデッサンや模型を制作。本邦初公開となる貴重なスケッチや習作からは、老齢の画家の並々ならぬ気迫が伝わってくる。展示後半では、礼拝堂の祭壇に描かれたフレスコ画の一部がほぼ原寸サイズで再現されている。80歳を目前にして神へ捧げるに相応しい大仕事をなし終えた藤田は、礼拝堂の完成を見届け1968年、永遠の眠りについた。
『ランス美術館コレクション 藤田嗣治からレオナール・フジタへ 祈りへの道』
開催期間:開催中〜2026年1月4日(日)
開催場所:軽井沢安東美術館
長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東43-10
www .musee-ando.com