【チームラボ バイオヴォルテックス 京都】京都駅近に誕生、“環境が生むアート”の渦に実際に没入してきた

  • 文・写真:石川博也
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《変容する連続体 / Morphing Continuum》

チームラボの最新アートミュージアム「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」が10月7日(火)にオープンした。延べ床面積はおよそ10,000平方メートルで、チームラボのミュージアムとしては国内最大となる。

場所は京都駅を挟んで京都タワーとは反対側の京都市南区。駅から徒歩7分ほどの好立地だ。実は京都市が進める京都駅東南部エリアプロジェクトの一環としてこの場所につくられ、周辺の人の流れを変えるきっかけとなる存在としても期待されている。

 

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「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」

チームラボのアートミュージアムは、東京・豊洲の「チームラボプラネッツ TOKYO DMM.com」や東京・麻布台ヒルズの「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」、サウジアラビアの「チームラボボーダレス ジッダ」など国内外に多数存在する。

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《永遠の今の中で連続する生と死 / Continuous Life and Death at the Now of Eternity》、《流れははるか遠くに / Flow Reaches Far》

中でも2025年4月にUAEのアブダビにオープンした「チームラボフェノメナ アブダビ」は、歴史的作品を収蔵した「ルーヴル・アブダビ」、現代アートの「グッゲンハイム・アブダビ」(2026年オープン予定)と同じ文化地区にあり、先進的な作品を展示するミュージアムとして、これらと並び称される存在になっている。

今や世界的に注目を集めるチームラボのアートミュージアム。その最新ミュージアムが「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」だ。

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《質量も形もない彫刻 / Massless Amorphous Sculpture》を体感するチームラボ代表の猪子寿之。
 

「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」の館内に広がっているのは、物質の概念を超越した世界に身体ごと没入する世界だ。

具体的には「環境が現象を生み、その現象が存在を創る」という「環境現象」をコンセプトにした日本初お披露目の作品《質量も形もない彫刻 / Massless Amorphous Sculpture》をはじめ、教育的なプロジェクトをテーマとした複雑で立体的な創造的運動空間「運動の森」や、共創(共同的な創造性)のための「学ぶ!未来の遊園地」、スケッチファクトリーなど、ミュージアム全体が50以上の作品群で構成されている。

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《内に秘めた輝き / Silent Radiance Within》

チームラボのアートミュージアムではすでにおなじみの作品もアップデートされ、より高精細に描かれるように進化していたり、光るとか反射するといった表現も臨場感が向上。これまで以上に心に響く作品となっている。

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《生と回帰の無常の抽象 / Transient Abstract Life and Return》

では、この「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」を、どのように楽しめばいいのだろうか? チームラボ代表の猪子寿之に話を聞いた。

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《質量のない太陽と空の境界面 / Massless Sun and Surface of the Sky》

このアートミュージアムをより深く理解するために意識しておきたい言葉が、ミュージアムの枕詞にもなっている“存在の宇宙、認識の宇宙”だ。

「多くの人は、今までの物質的な存在だけを存在だと思ってしまったがゆえに、この世界の見え方が、ある側面だけに限定されてしまっていると思うんです。我々がこの世界をどう認識しているのか? 認識とはある種の宇宙であり、まだまだ無限の可能性があると思っています。だからこそ、“チームラボ バイオヴォルテックス 京都”のさまざまな作品を通して、今までの常識的な認識では考えられないような存在に気づき、認識を拡張することで、この世界の見え方がより広がるような鑑賞体験になってくれたらいいですね」と猪子。

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高速で渦を巻く《変容する連続体 / Morphing Continuum》と一体化する猪子。

例えば、《変容する連続体 / Morphing Continuum》は、大量の球体ひとつひとつがまるで意志を持っているかのように空中を浮遊し、集団で渦を成し、ムクドリの大群のようにさまざまな立体を形成していく。

これはドローンのショーのようにひとつひとつの球体の動きがプログラミングされているわけではない。空間が織りなす環境に影響を受けて自由に動いていると猪子は話す。

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《開いた宇宙の永遠の存在の中のメガリス / Megaliths in the Eternal Existence of the Open Universe》

「閉じた美術館の中ですが、外部からのエネルギーがあり続ける開かれた環境で存在できる作品を数多く展示しています」と猪子。

「京都は園芸や庭園文化のように開かれた環境で作品を楽しむ風土がまだ残っている稀有な街です。だからこそ、京都の街と“チームラボ バイオヴォルテックス 京都”を連続して楽しむことで、新しい存在、新しい作品をより意識して感じてもらえたら嬉しいです」

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オープニングテープカットセレモニー。左から/山王学区自治連合会長の九十九壽雄、京都市長の松井孝治、チームラボ代表の猪子寿之、京都市会議長の下村あきら。

「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」のオープン初日。行列の先頭にいたのは外国人で朝7時15分から並び始めたという。そのほかオープン直後に入場した人たちの多くも海外の人だった。

世界的な認知度が上がり、規模が大きくなり、作品も進化し続けているチームラボのアートミュージアム。今後について猪子に聞いた。

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《浮かぶ宇宙球体 / Floating Cosmic Spheres》

「国内外を問わず、必要だと思ってもらえる場所につくっていきたいですね。そして、世界中の人たちが我々のアートミュージアムを訪れることによって、作品の世界と一体になったり、体験や風景、存在自体を人と分かち合うようになったらいいなと思います。それらの出来事を通じて、この世界に今、自分が生きていることや、この世界が存在することに対して、なにか肯定できる、自分や他者が生きていることを肯定できるようなものを今後もつくっていきたいですね」

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《質量も形もない彫刻 / Massless Amorphous Sculpture》に没入する猪子。作品は周囲の環境に従って動いている。

「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」の作品群は、なにも考えなくてもアトラクション的に十分満喫できるが、深く考えてみるとさらに楽しめる。その人の持つ知識や感性、人生経験によって感じ方は異なり、人によってはその後の世界観や人生観が変わるかもしれない。そんな深遠なる魅力を秘めた最新のアートミュージアムなのである。

チームラボ バイオヴォルテックス 京都

住所:京都市南区東九条東岩本町21-5
営業時間:9時〜21時(最終入館時間19時30分)※スケッチファクトリーは11時〜21時
休館日:11/4(火)、11/18(火)、12/2(火)、12/16(火)
※2026年以降はHPを参照ください。
※開館時間や休館日が変更になる可能性あり。
https://www.teamlab.art/jp/e/kyoto/