【伝説の香木・蘭奢待】実際に香りを体験。正倉院の宝物を最新技術でよみがえらせた『正倉院 THE SHOW』が開催

  • 文:久保寺潤子
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奈良時代に創建された東大寺の宝庫、正倉院。756年、聖武天皇の四十九日に公明皇后によって捧げられた御遺愛品を中心に約9000件にもおよぶ宝物が収められている。大阪で10万人を動員した『正倉院 THE SHOWー感じる。いま、ここにある奇跡ー』が、11月9日まで上野の森美術館で開催中だ。世界に類をみない貴重な品々が最新テクノロジーによって新たな魅力を放つ。

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4.STAGE02 巨大スクリーン映像.jpg
宝物に多方向から照明を当てて取得した三次元計測データに、高精細画像を組み合わせた大迫力のスクリーン映像。

正倉院は創建当初から、その開扉に天皇の許可を必要とする勅封により管理されてきた。宝物の公開は年に一度、奈良国立博物館で開催される正倉院展のみ。1300年近くを経てなお、極めて良好な状態のまま現代に伝えられているのは、勅封管理が厳格に守られてきたからにほかならない。「宝物を大切に守ろうとすればするほど、それが宝物の魅力を伝える上での支障になるというジレンマに悩まされることになるのです」と話すのは本展覧会の監修を務めた宮内庁正倉院事務所長の飯田剛彦だ。

3.STAGE01 「国家珍宝帳」.JPG
聖武天皇が生前使っていた品々を東大寺大仏に捧げた際の目録「国家珍宝帳」。宝物660点以上が全長14m以上にわたって書き上げられた全紙を、原寸大で再現。

本展覧会の見どころのひとつは、巨大スクリーンに映し出される迫力の高精細映像だ。正倉院宝物を360度からスキャンして得られた3Dデジタルデータを高さ約4m、幅約20mの巨大スクリーンに投影。2019年より螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)をはじめとする宝物のデジタルアーカイブを手掛けるTOPPANの技術により、肉眼では捉えにくい細部や質感までを鮮明に映し出す。単眼鏡を使わずとも宝物の立体感やディテールに没入できるだろう。

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5.STAGE03 「美のアベニュー」.JPG
正倉院に伝わる数々の文様を再現した「美のアベニュー」。

もうひとつの見どころは、正倉院宝物の再現模造だ。模造事業は1972年から行われており、現在までにつくられた再現模造は50件。今回はその中から聖武天皇ご遺愛の琵琶や肘置きなどを展示。これらは宝物を徹底的に調査し、素材・構造・技法について忠実に再現した高精度なもので、それ自体が文化財レベルの品となっている。

3つ目の見どころは伝説の香木「蘭奢待(らんじゃたい)」の香りの再現コーナーだ。蘭奢待(宝物名・黄熟香)とは東南アジアに分布するジンチョウゲ科アクイラリア属の木の切り株に樹脂や精油が沈着してできた香木で、いわゆる「沈香(じんこう)」のこと。織田信長も熱望した伝説の名香だ。会場ではこの蘭奢待のレプリカとともに、香料メーカー・高砂香料工業の調香師によって再現された香りをガラス容器に閉じ込めて展示し、実際に香りを体験することができる。多くの偉人を魅了してきた幻の香りとともに、古へと思いを馳せてみたい。

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7.東京展 展示風景.JPG
会場では、蘭奢待を再現した香りを実際に体験することができる。

最後の展示室では現代のアーティストたちによるコラボレーション作品を展示。職人技術の粋を集めたペルシア風水瓶「漆胡瓶(しっこへい)」をドレスにデザインした篠原ともえ、正倉院の荘厳な姿を写真に捉えた滝本幹也、1300年前の物語を陶芸に紡いだ亀江道子、琵琶や尺八など正倉院の楽器を音源に使用し、新たなメロディーを生み出した亀田誠治ら多彩な才能が顔をそろえた。時を超えて輝き続ける正倉院宝物が現代の感性と響き合い、新たな魅力を放つ。

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水瓶「漆胡瓶」に描かれた動植物、昆虫などの文様をなぞり、現代のファッションによみがえらせた篠原ともえによる作品。

東京会場ではオリジナルグッズを販売。蘭奢待の香りのフレグランスカード(ひとり1点まで。※販売状況は公式Xで随時更新)、イラストレーター本間あきらが描きおろしたメモやポチ袋、「平螺鈿背円鏡」にあしらわれた獅子のヘアクリップなど、展覧会の思い出に買い求めたい。

奈良時代から連綿と受け継がれてきた正倉院の文化遺産を、最新技術で体感する本展覧会。日本人の美への思いが時代を超えて交差する、貴重な体験だ。

『正倉院 THE SHOWー感じる。いま、ここにある奇跡ー』

開催期間:開催中〜2025年11月9日(日)
開催場所:上野の森美術館
https://shosoin-the-show.jp/tokyo/

公式X