猛暑の余韻が続きつつも夏休みは過ぎ、そろそろ次の「ご褒美旅」を思い描く頃である。
次の旅先は、観光名所やグルメだけではなく、ホテルそのものを目的地に選んでみてはどうだろうか。いま世界では、有名建築家やデザイナーが手掛けた新たなホテルが次々と誕生している。都市の風景に新しい輪郭を与える外観、そして癒しと開放感を提供する空間――両方を感じられるホテルに滞在することで、1年分の休息とリチャージが実現できるはずだ。
建築とデザインを愛する人にこそ薦めたい、滞在そのものが旅の記憶となるホテルの最新8選をお届けする。
1.Capella Taipei(台北/台湾)
インテリア:アンドレ・フー・スタジオ(André Fu Studio)/開業:2025年4月
台北の「モダン邸宅」たる設計を据えたこのホテルは、木や大理石を基調にした静謐な空間が広がる、まるで都会の隠れ家のような存在である。アートや職人の細やかな意匠が随所に息づき、客室のガラス窓越しには街並みを一望できる。静と動が交差する「詩的邸宅」のような情緒が、旅の拠点として最適だ。
2.Maison Heler(メス/フランス)
デザイン:フィリップ・スタルク(Philippe Starck)/開業:2025年3月
ブルータリズムな9階建の建物をベースに、19世紀のロレーヌ風邸宅をそっと乗せた奇抜な構成が斬新。虚構の小説『The Meticulous Life of Manfred Heler』をデザイン源に据えたスタルクの演出は、宿泊するごとに夢と現実が交錯する感覚を誘う。温かみのある木や革、ステンドグラスがアクセントとなり、メスの異境へ導く。
3.The Lana Hotel(ドバイ/UAE)
建築:フォスター+パートナーズ(Foster + Partners)/開業:2024年10月
ドバイの水辺にそびえるそのシルエットは、都市のスカイラインを再解釈したかのように描かれている。屋上プールからはブルジュ・ハリファを一望でき、圧倒的な眺望が広がる。インテリアを手掛けたのはジル&ボワシエ(Gilles & Boissier)。自然光と多彩なテクスチャーが織りなす空間にアートが響き合い、フォスター流のモダン建築と洗練されたインテリアが見事に融合。ここで過ごす時間は、まさに地上の極上体験となる。
4.ROMEO Roma(ローマ/イタリア)
建築デザイン:ザハ・ハディッド・アーキテクツ(Zaha Hadid Architects)/開業:2024年12月
16世紀のパラッツォを舞台に、ザハ・ハディッド・アーキテクツが描く流体的なラインと大胆な素材が、歴史と響き合う。イタリア産大理石と木材がかつてのフレスコ画と溶け合い、シスレイ・パリのスパ、屋外プール、庭園が現代的なパレットに昇華している。アラン・デュカスが監修するメインダイニング、ルーフバーもドラマティックな演出を添える。
5.The Emory(ロンドン/イギリス)
建築デザイン:ロジャース・スターク・ハーバー+パートナーズ(RSHP)インテリア:ピエール=イヴ・ロション(Pierre-Yves Rochon)、パトリシア・ウルキオラ(Patricia Urquiola)、アンドレ・フー(André Fu)、シャンパリモード・デザイン(Champalimaud Design)他/開業:2024年7月
ロンドン初のオールスイートホテルとして話題となった。ロジャースらしい鋼とガラスのモダニズム建築の中は、各フロアの内装を異なるデザイナーが手掛けている。まさに「デザイン・ラグジュアリー」を満喫できるホテルだ。バーと葉巻ラウンジを収めた全面ガラス張りの屋上「アクエリアム」等、豪華さと精巧な設計が作り出す「都市に浮かぶ静かな邸宅」の雰囲気が味わえるのが魅力だ。
6.Hôtel Dame des Arts(パリ/フランス)
インテリア:ラファエル・ナヴォ(Raphaël Navot)/開業:2023年2月
パリ左岸、カルティエ・ラタンに佇むこのホテルは、詩情豊かな街並みに呼応するように、ラファエル・ナヴォが手掛けた温かみのあるデザインで包まれている。天然素材を活かした家具や、有機的な曲線を描く装飾が空間に柔らかなリズムを与え、心地よさを演出する。最上階にはエッフェル塔を望むルーフトップバーがあり、パリの風景を楽しむことができる。
7.Waldorf Astoria New York(ニューヨーク/アメリカ)
インテリア:ピエール=イヴ・ロション(Pierre-Yves Rochon/公共空間)+アヴロコ(AvroKO/客室、ブラッセリー他)/再開業:2025年9月
老舗ホテルが8年ぶりに壮麗に復活した。アール・デコの遺構を保存しつつ、ロションが柱やロビーを繊細に蘇らせ、アヴロコが客室に温かみと現代性を注入。グランド・ボールルームも9月1日に再開し、歴史と最新の贅沢が同居するニューヨークのランドマーク的ホテルといえるだろう。
8.Nujuma, a Ritz-Carlton Reserve(ウムマハット諸島/サウジアラビア)
建築:フォスター+パートナーズ(Foster + Partners)/開業:2024年5月
紅海に浮かぶヴィラ型リゾートは、貝殻を思わせる流線形の設計に、地元の工芸や自然素材が融合する。ソーラーパワーで駆動され、レッドシー・プロジェクトの中でも再生型観光を体現。星空観賞用望遠鏡付きのヴィラから、地球と宇宙の美を感じる宿である。