鳥取・倉吉市に初の県立美術館が開館。市民が集う「ひろま」が中心に【今月の建築ARCHITECTURE FILE #35】

  • 文:佐藤季代
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全国初のPFI(民間資金活用)方式で整備された公立美術館。隣接する公園を観客席に、テラスをステージに見立てたイベント開催もできる。

豊かな自然や歴史ある街並みが残る鳥取県・倉吉市。2025年3月、市内中心部に鳥取県で初となる県立美術館が開館した。美術館建築を数多く手掛けてきた、槇総合計画事務所による11個目の美術館としても注目を集めている。

美術館は、市立図書館や複合施設などが集まる「倉吉パークスクエア」内に立地。地域の公園として親しまれている大御堂廃寺跡(おおみどうはいじあと)に隣接している。代表を務める亀本ゲーリーは「従来型の鑑賞だけを目的とした美術館ではなく、市民が気軽に立ち寄れるリビングルームのような、地域コミュニティの核となる多目的で自由な集いの場所を目指しました」と語る。

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美術館3階の展望テラスからは、山並みと街を一望できる。室内まで連続する格子状の天井は、鳥取砂丘の風紋などをモチーフにしている。

 

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カフェやキッズスペースを含む多目的な「ひろま」は美術館の中心となる空間。ガラスの開口を介して、屋外には「えんがわ」と公園が広がる。

建物は、大きな庇が特徴的な地上3階建て。建物裏手の道路側に展示機能をまとめ、公園に面した3層吹き抜けの開放的な「ひろま」が来館者を迎える。ひろまにはカフェやキッズスペースも併設され、イベントや地域活動にも活用できる柔軟性を備えた。さらに、公園と一体となった軒のある「えんがわ」や、2〜3階に立体的に連なるテラスなど、建物の約半分のスペースが無料で開放され、山並みの風景を眺めながら思い思いの時間を過ごすことができる。

開館記念イベントでは約2万人の市民や観光客が来場。人口減少や経済低迷が進む地方都市において、活気を取り戻す拠点としての期待が高まっている。

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大小6つの展示室を備える。チケットなしで誰でも立ち寄れるホールやベンチスペースなど、公共性を重視した設計が随所に施されている。

 

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美術館に隣接するカフェ・ショップ「集いの森」は、アーケードで直結している。槇総合計画事務所が建築とランドスケープを手掛けた。

鳥取県立美術館

住所:鳥取県倉吉市駄経寺町2-3-12
開館時間:9時~17時
休館日:月曜日、年末年始
https://tottori-moa.jp
【設計者】槇総合計画事務所
槇文彦(1928-2024)が設立。代表の亀本ゲーリー率いるデザインチームが建築から都市設計まで幅広いプロジェクトを手掛ける。近作に、ドイツのラインハルト・エルンスト美術館(2024)などがある。

※この記事はPen 2025年9月号より再編集した記事です。