ディスク復権の牽引役は、 高音質を追求したプレーヤー「SHANLING EC Zero T」【麻倉怜士が選ぶ今月の家電】

  • 文:麻倉怜士
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〈ポータブルCDプレーヤー〉
SHANLING EC Zero T(シャンリン イーシー ゼロ T)

 

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ポータブルにふさわしい手のひらサイズで、重量は約669g。コンパクトながら、安定性と強度を担保した設計のため、外出先でも音質にこだわる人には最適。¥89,100

サブスクだ、配信だと巷はかまびすしいが、実はいまCDプレーヤーが人気。若い世代には物理メディアが新鮮に映り、目でジャケットを見て、手に持って音楽の存在を確かめられる“実在する価値”が再発見されたのか。特に中国のメーカーが積極的だ。ここに紹介するシャンリンの「EC Zero T」は格段に音質がよい。筆者はこれまで、オーディオ評論では日米欧の製品を対象にしてきたが、今後は中国製品にも注目だ。

それはともかく、1980年代からオーディオ製品を世に送ってきた老舗シャンリン。バッテリー内蔵のポータブル機でも、その構え、素材感、デザインに、軽薄さはまるでなく、本格的な据え置きプレーヤーのような立派な風貌。中身も充実している。音質のカギを握る、デジタル信号をアナログに変換するDACは、一般的な汎用ICではなく、抵抗やトランジスタなどの部品を組み合わせて自社開発した回路を採用。さらにサンプリング周波数を、音が鮮明な等倍と、音がなめらかな複数倍のふたつから選べるようにした。

出力にも凝った。ポータブルプレーヤーではオペアンプなどで増幅するのが当たり前だが、真空管とトランジスタの2方式を内蔵しているので、音質の違いを楽しめる。サンプリング周波数と出力で4通りの組み合わせが可能だ。

基本の「等倍+トランジスタ」で、音質の高さがわかる。ありがちな不自然な強調や、人工感がまるでなく、ナチュラルに音楽情報を再生する。「複数倍+真空管」に替えると、音の粒子が細かく、たいへん緻密。人肌感覚の温度感が心地好い。優れた基本音質に加え、音源によって音調が選べるので趣味性も高い。ディスク復権を先導する高音質プレーヤーとして人気を集めるだろう。

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Bluetooth送信にも対応。リチウムイオンバッテリーを内蔵し、Bluetooth送信ならポータブル環境でも約20時間の利用が可能。キーロック機能により、不意の誤動作も防げる。

麻倉 怜士

デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。著書に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)などがある。

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※この記事はPen 2025年9月号より再編集した記事です。