水辺に立つ新しい“広島の顔”、駅ビル「ミナモア」が開業。川と都市が交差する建築とは?【今月の建築ARCHITECTURE FILE #34】

  • 文:佐藤季代
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駅ビルの2階に広がる4層吹き抜け のアトリウム。天井は鏡面仕上げを施したストライプのアルミパネルをしつらえ、水面の煌めきを表現した。

広島市、JR西日本、広島電鉄の三者が進める広島駅南口の再整備。その核となる駅ビル「ミナモア」が2025年3月に開業した。戦前から走る路面電車のホームとなるアトリウム空間と、屋上広場のデザイン監修を地元・広島と東京を拠点とするサポーズデザインオフィスが担当。谷尻誠と吉田愛は「市内を流れる6本の川に着目し、水面の揺らぎや光の反射をつくり出すことで、川の街と呼ばれる広島らしい風景が感じられる空間を目指しました」と語る。

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建物の2階に路面電車が乗り入れる構造は国内唯一。建替えに合わせて、JR在来線や新幹線の改札とスムーズにつながり、利便性が向上する。

 

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アトリウムの両サイドからホームを見下ろせる「雁木テラス」。階段状のベンチが並び、憩いの場として飲み物を片手に公園のように過ごせる。

路面電車の乗り入れは8月からスタート予定。地上20階建てのビル中央を貫く4層吹き抜けのアトリウム空間は、ガラス張りのファサード越しに自然光が降り注ぐ。アルミパネルを用いた曲面壁やリズミカルな天井に光がランダムに反射し、発着する路面電車と人々が交錯する風景が水面のように映り込むだろう。階段状になった親水空間「雁木」をモチーフにした、3階の「雁木テラス」からホームを見下ろしながら、移ろいゆく情景を川辺に佇むように楽しめる。

人が滞在し、風情を感じられる工夫は、7〜9階にかけて大階段でつながる屋上広場にも施された。芝生広場など高低差のある多様な場所が用意され、駅前のダイナミックな街並みを一望できる。

駅ビルを起点に路面電車の新ルートも開通予定。広島の玄関口として進化を遂げていく。

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屋上広場は、7階から9階までを大階段でつなげたダイナミックな構成。山を背景に、高い視点から路面電車や人々が行き交う大通りを見渡せる。

 

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階段状のデッキが広がる9階の「ソラモア広場」。イベントスペースとして多目的に活用できる人工芝の広場やフットサルコートも備える。

広島駅新駅ビル「ミナモア」

住所:広島県広島市南区松原町2-37
www.minamoa-ekie.jp
【設計者】サポーズデザインオフィス
谷尻誠と吉田愛が率いる建築設計事務所。本建築ではアトリウムと屋上広場のデザイン監修を務めた。基本設計はジェイアール西日本コンサルタンツ・東畑建築事務所JV、実施設計は大林組・広成建設JVが担当。