【2025年夏】東京で“無料”で楽しめる、見逃せないアート展10選【現代美術から浮世絵まで】

  • 文:はろるど
Share:

話題の大型展が相次ぐいま、都内では“無料”で楽しめる展覧会が数多く開かれている。洗練された現代アートから話題の浮世絵まで、クオリティは折り紙付き。気軽に立ち寄れるのに、確かな刺激と余韻をもたらしてくれる場所ばかりだ。お薦めの10展を紹介する。

1.『横尾忠則 未完の自画像 - 私への旅』

開催場所:グッチ銀座 ギャラリー
開催期間:開催中~2025年11月9日(日)

1.jpg
Courtesy of Gucci

日本を代表するアーティストである横尾忠則の個展『横尾忠則 未完の自画像 - 私への旅』が、グッチ銀座 ギャラリーにて開催されている。会場では「旅」を思わせるテーマを描いた作品を中心に、初のお披露目となる自画像や家族の肖像など、最新作6点を含めた約30点の作品を公開。1960年代より約60年にもわたって常に新しい表現の可能性に挑戦し、膨大な作品を生み出してきた横尾のさまざまな創作世界を楽しめる。

7階のギャラリーの吹抜けから、特別に解放された屋上スペースへと続く真っ赤な足場に注目したい。これは70年の大阪万博で「せんい館」の建築デザインを手がけていた横尾が、その工事現場に着想を得て制作したパヴィリオンを55年ぶりに再現したもの。当時、前代未聞の試みとして人々を驚かせ、いまもなお強いインパクトを放つ足場による「未完のアート」を、階段を上り下りしながら全身でじっくりと体感したい。

『横尾忠則 未完の自画像 - 私への旅』

 

公式サイトを見る

 

2.『夢みる!歌麿、謎めく?写楽-江戸のセンセーション』

開催期間:開催中~2025年8月6日(水)
開催場所:慶應義塾ミュージアム・コモンズ

2.jpg
撮影:村松 桂(カロワークス)


「夢みる!歌麿、謎めく?写楽-江戸のセンセーション」が、三田の慶應義塾ミュージアム・コモンズにて開かれている。これは経済学者でかつて慶應義塾の塾長(代理)を務めた高橋誠一郎が収集した浮世絵コレクションより、美人画で名高い喜多川歌麿と役者絵で名を馳せた東洲斎写楽に着目して紹介するもの。あわせて2人を起用した版元・蔦屋重三郎による『吉原細見』などの資料や、歌川豊国といった同年代の絵師たちの作品も展示している。

美しい雲母摺(きらずり)の残る写楽の大首絵など、質のよい作品ばかりが並ぶことにも驚くが、ミュージアム・コモンズの学生メンバー、KeMCoM+(ケムコムプラス)が制作したZINE(小冊子)にも注目したい。中には浮世絵の制作プロセスや歌麿と写楽を深掘りするコラムなどが掲載されており、内容についての理解を深めることができる。都内でも蔦屋重三郎や浮世絵に関する展覧会が続く中、作品自体の魅力はもとより、学生のユニークな取り組みも光る企画としてお薦めだ。

『夢みる!歌麿、謎めく?写楽-江戸のセンセーション』


 

公式サイトを見る

 

---fadeinPager---

3.『ホセ パルラ「Home Away from Home」』

開催期間:開催中〜2025年7月27日(日)
開催場所:ポーラ ミュージアム アネックス

3.jpg
José Parlá Morning Blossoms Over Tokyo (Multiversal) 2025 6 x 16 feet (182.8 x 487.6 cm) quadriptych Acrylic, oil paint, plaster and collage on canvas

ニューヨークを拠点に活躍するアーティスト、ホセ・パルラの個展『Home Away from Home』が、銀座のポーラ ミュージアム アネックスにて開催される。キューバ系の両親のもとに生まれたパルラは、マイアミとプエルトリコを行き来しながら育ち、ニューヨークへ移住する中で都市の文化や現代抽象を結びつける表現を確立。まるで都市の壁を思い起こさせるような、幾重にも塗られた絵肌を特徴とする絵画などで人気を集めてきた。

本展では東京をテーマとした新作1点を含む約20点の作品を公開。さらに窯元で滞在し制作された備前焼の作品や、日本のアーティストらとのコラボレーション作品なども展示する。2021年、新型コロナに罹り、約4カ月の昏睡状態から生還したパルラは、以前よりもさらに緊迫感が増し、より進化を遂げた作品を制作している。カンヴァスから飛び出さんばかりに絵具がほとばしる、熱っぽく、それでいて詩的な作品に全身で思いっきり没入したい。

『ホセ パルラ「Home Away from Home」』


 

公式サイトを見る

4.『未知なる世界と出会う —英国アール・ブリュット作家の現在(いま)』

開催期間:開催中~2025年8月31日(日)
開催場所:東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室1・2、交流スペース

4.jpg
アール・ブリュット ゼン&ナウ Vol.4 『未知なる世界と出会う ―英国アール・ブリュット作家の現在(いま)』2025年 展示風景 撮影:柿島達郎

英国のアール・ブリュット分野の作家を紹介する展覧会が、東京都渋谷公園通りギャラリーにて行われている。ここではマッジ・ギル(1882-1961)といった伝説的な作家から、ジェシー・ジェームズ・ネーゲル(1993-)などの幅広い世代の11名の作家の作品を紹介し、素材や手法の多様な表現に触れられる。

白黒の作品とカラフルな作品を2つの展示室に分けて並べたり、作品を分かりやすい言葉とイメージで紹介する冊子『easy read』の取り組みも見どころだ。

生前無名だったものの、没後に評価されたマッジ・ギルは、英国で最も有名なアール・ブリュット作家。精霊に導かれて描いたという、神秘的な女性の顔のインク画が目を引く。絵画や陶芸などを手がけるキャメロン・モーガン(1965-)はカメラをモチーフとした立体作品を展示し、つい手に取りたくなるような楽しいデザインと明るくポップな色使いに魅力を感じる。それぞれの表現者の織りなすユニークな世界に身を委ねながら、お気に入りの作品を見つけてはいかがだろうか。

『未知なる世界と出会う —英国アール・ブリュット作家の現在(いま)』

 

公式サイトを見る

---fadeinPager---

5.『日本のグラフィックデザイン2025』

開催期間:開催中~2025年8月7日(木)
開催場所:東京ミッドタウン・デザインハブ


5.jpg
昨年の展示風景

約3000人の会員を擁する、アジア最大級のデザイン団体である日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)。1981年から会員デザイナーの1年間の優れた仕事や作品をまとめた年鑑『Graphic Design in Japan』を発行しており、日本の質の高いグラフィックデザインの成果を国内外に紹介してきた。最前線で活躍するグラフィックデザインの成果を一望できる、すべてのクリエイター必携の年鑑と言ってよい。

東京ミッドタウン・デザインハブにて開催中の本展では、年鑑の2025年版の掲載作品の中から約300点を紹介。雑貨や本、商品パッケージ、ポスター、ロゴ、ウェブや映像、さらに展覧会や店の空間デザインなどを実物や映像で見ることができる。グラフィックだけにとどまらない、夢のあるデザインの広がりを、アートの街・六本木にあるデザインの発信拠点にて気軽に感じたい。

『日本のグラフィックデザイン2025』

公式サイトを見る

6.『Dressing Up: Pushpamala N』

開催期間:開催中〜2025年8月17日(日)
開催場所:シャネル・ネクサス・ホール

6.jpg
Phantom Lady or Kismet, No.19, 1996-1998 (C)Pushpamala N

インドのバンガロール(現ベンガルール)を拠点に活動するプシュパマラ Nは、1990年代半ばから多様な役柄を演じながら、神話や民間伝承を引用した象徴的な物語をつくり上げるフォト・パフォーマンスなどの創作を始める。そして世界各地の美術館などで作品を発表すると、「現代インド美術界で最も人を楽しませながら既成概念を打破するイコノクラスト」と言われるほど高い評価を得てきた。

シャネル・ネクサス・ホールで開催中の個展では、いずれもインド映画の黄金時代に登場する典型的な女性キャラクターに着想を得た、3つの異なるシリーズを日本で初めて公開している。このうち「Return of the Phantom Lady」とは、自ら扮するヒロインが現代のムンバイを舞台に殺人や陰謀に挑み、少女を救う様子を、ミステリー小説風の大胆な色調で写したもの。春のKYOTOGRAPHIEでも話題を呼んだアーティストによる、卓越した創造力が感じられる作品として見逃せない。

『Dressing Up: Pushpamala N』

 

公式サイトを見る

---fadeinPager---

7.『第44回丸の内ストリートギャラリー』

開催期間:2025年7月~
開催場所:丸の内仲通り 他

 

7.jpg
中村 萌『Whirling Journey』2025年

日本有数のビジネス街の顔を持ちながら、洗練された文化が息づく丸の内。1972年から丸の内仲通りをメインに、近代彫刻や現代アーティストの作品を展示する丸の内ストリートギャラリーが行われている。第44回となる今年は、3年ぶりにイワタルリ、山本桂輔、中村萌、佐藤正和重孝の4名の作家による新作を公開。一部作品の入れ替えも行い、丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)にて計17点のアート作品を紹介する。

楠を素材に、油絵具で彩色した木彫作品を中心に制作する中村萌は、自分の内側から生まれる新しい存在と、それを育む過程をかたちにした彫刻を新たに制作。さらに国内各地の展覧会にも出展する山本桂輔は、茸や樹木のモチーフが宴を開く様子を連想させるオブジェを設置する。高層ビルがそびえる都心の一角が、ふとした瞬間にアートと出合う特別な散歩道に変わるプロジェクトとして、ショッピングを楽しみながら立ち寄りたい。

『第44回丸の内ストリートギャラリー』

 

公式サイトを見る

8.『特別展示「FLY WITH IM MEN」』

開催期間:2025年7月10日(木)〜8月3日(日)
開催場所:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3

8.jpg

三宅一生の「一枚の布」というコンセプトを、男性の身体に着目して再解釈し、衣服づくりの新たな領域に挑むブランドIM MEN(アイム メン)。2021年の立ち上げ以来、服づくりに携わる各分野のプロフェッショナルが集い、構造や素材の研究を重ねながら、デザインとエンジニアリングの双方に精通したチームにて多様なものづくりを手がけている。2025年1月にはブランド初となる2025/26年秋冬パリ・ファッション・ウィークへの参加を果たすと、展覧会を開いて世界からの注目を集めた。

21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で行われる特別展示『FLY WITH IM MEN』では、パリで披露された作品の中から、「一枚の布」という思想に基づいてつくられたいくつかのプロダクトを紹介。布の構造を空間全体で体感できるようなインスタレーションとともに、伝統的な織りや染めの技法に最新の技術を融合させて生み出された布地などに光を当て、「一枚の布」が持つ造形や機能の可能性を探求した衣服が勢ぞろいする。

『特別展示「FLY WITH IM MEN」』

公式サイトを見る

---fadeinPager---

9.『2025 JAGDA 亀倉雄策賞・新人賞展』

開催期間:2025年7月15日(火)〜8月27日(水)
開催場所:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)

9.jpg
サリーン・チェン ショップ&ギャラリーの企画展サイン「UNIQUE PRODUCTS」 アワ フェイバリット ショップ

グラフィックデザインの専門ギャラリーとして、3つのgの頭文字から「スリー・ジー(ggg)」の愛称で親しまれているギンザ・グラフィック・ギャラリー。1986年の開設以来、主にグラフィックデザインを対象した作家や団体を招いて、魅力あるさまざまな企画展を開いてきた。そしてこの夏、gggにて公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)が主催する「亀倉雄策賞」と「JAGDA新人賞」の受賞作品を紹介する展覧会が行われる。

会場では亀倉雄策賞を受賞した林規章が、20年にもわたって毎年制作してきた女子美術大学・大学院の学生募集のためのポスターシリーズをはじめ、JAGDA新人賞を受賞した城﨑哲郎、サリーン・チェン、松田洋和の3名の作品を公開。新人賞に際しては「ここ数年のトーンとは違う、やや大人びた印象を受けた」という声が寄せられたという。画廊のメッカである銀座のど真ん中で、いま最も評価されているグラフィックデザインの創造性に触れたい。

『2025 JAGDA 亀倉雄策賞・新人賞展』

公式サイトを見る

10.『新しい建築の当事者たち』

開催期間:2025年7月24日(木)~10月19日(日)
開催場所:TOTOギャラリー・間

10.jpg
展示検討中の様子(模型とモックアップ) (C) Jumpei Suzuki

1985年の開設以来、国内でも有数の建築専門ギャラリーとして活動するTOTOギャラリー・間(ま)。開設40周年記念企画の第2弾として、「EXPO 2025 大阪・関西万博」の休憩所他設計業務の公募型プロポーザルにて選ばれた建築家たちによる『新しい建築の当事者たち』が行われる。ともにプロポーザルの審査員を担った平田晃久が監修を担い、アドバイザーを藤本壮介が務め、1980年以降生まれの20組の建築家が参加する。

万博の休憩所やトイレなどの施設の提案にあたって、仮設の建築物をつくるという前提のもとに試行錯誤をしてきた建築家たちは、各方面からの賛否を交えた意見を引き受け、実現に向けて力を注いできた。その彼らの取り組みを、図面や模型、資料と言葉を通して迫っていく。上下階をつなぐ階段のある中庭をはじめ、屋内外の特色あるギャラリー空間をいかに活用し、どのような創意に富んだ展示が見られるのかにも注目したい。

『新しい建築の当事者たち』

 

公式サイトを見る