2022年に開通した長崎本線・西九州新幹線の終着駅であるJR長崎駅から徒歩で数分。稲佐山と金毘羅山に挟まれた旧・三菱重工長崎造船所幸町工場跡地に、24年10月、新たな都市の拠点となる「長崎スタジアムシティ」が開業した。プロサッカークラブ、V・ファーレン長崎のホームスタジアムを核に、プロバスケットボールクラブ長崎ヴェルカのアリーナ、ホテル、オフィス、商業棟など約20万㎡の建築が立体的に連なる。


基本設計を担当したのが、仙田満率いる環境デザイン研究所。仙田は「長年のテーマとしている、空間を自由に回遊しながら多様な体験を積み重ねられる“遊環構造”の理念を体現しました」と語る。この遊環構造を象徴するのが、スタジアム2〜3階に巡らされた1周約523mにもおよぶ回遊型のオープンコンコースだ。通路やフードホール、広場といった多様なスペースと融合したコンコースを介して、周囲の施設が一体的につながる。このコンコースに加え、年間約20日行われるホームゲーム以外にも観客席を開放。臨場感あふれるスタジアムやコンコースから望む起伏に富んだ長崎らしい景色を楽しみながら、散策したり公園のように自由に寛げる。
サッカースタジアムの枠を超え、街に開かれた新たな場。そこから熱狂と賑わいがあふれ出し、街へと広がっていく。


長崎スタジアムシティ
住所:長崎県長崎市幸町7-1開館時間:7時~23時
休館日:不定休
www.nagasakistadiumcity.com
【設計者】環境デザイン研究所
仙田満が1968年に設立。建築や都市の設計を通じて新たな環境を育むことを目指す。本建築では、安井建築設計事務所とともに基本設計を手掛けた。実施設計は竹中工務店、戸田建設、松尾建設が担当。
※この記事はPen 2025年7月号より再編集した記事です。