街を変える“開かれたスタジアム”が誕生。「長崎スタジアムシティ」【今月の建築ARCHITECTURE FILE #33】

  • 文:佐藤季代
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約7.5ヘクタールにおよぶ敷地。サッカースタジアムを囲むようにホテルや商業施設などを配置。事業主はジャパネットホールディングス。 © Nagasaki Stadium City

2022年に開通した長崎本線・西九州新幹線の終着駅であるJR長崎駅から徒歩で数分。稲佐山と金毘羅山に挟まれた旧・三菱重工長崎造船所幸町工場跡地に、24年10月、新たな都市の拠点となる「長崎スタジアムシティ」が開業した。プロサッカークラブ、V・ファーレン長崎のホームスタジアムを核に、プロバスケットボールクラブ長崎ヴェルカのアリーナ、ホテル、オフィス、商業棟など約20万㎡の建築が立体的に連なる。

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約2万席を有する、V・ファーレン長崎のホームスタジアム。客席とピッチの距離は約5mで、選手と観客との一体感を極限まで追求している。 © Nagasaki Stadium City

 

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観客席には、コンコースで買った食事を楽しめるテーブル席なども備える。こうした多彩な空間が新たなスタジアム像をつくりだしている。 © Nagasaki Stadium City

基本設計を担当したのが、仙田満率いる環境デザイン研究所。仙田は「長年のテーマとしている、空間を自由に回遊しながら多様な体験を積み重ねられる“遊環構造”の理念を体現しました」と語る。この遊環構造を象徴するのが、スタジアム2〜3階に巡らされた1周約523mにもおよぶ回遊型のオープンコンコースだ。通路やフードホール、広場といった多様なスペースと融合したコンコースを介して、周囲の施設が一体的につながる。このコンコースに加え、年間約20日行われるホームゲーム以外にも観客席を開放。臨場感あふれるスタジアムやコンコースから望む起伏に富んだ長崎らしい景色を楽しみながら、散策したり公園のように自由に寛げる。

サッカースタジアムの枠を超え、街に開かれた新たな場。そこから熱狂と賑わいがあふれ出し、街へと広がっていく。

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スタジアムへと続くエントランス。右側のホテル棟は全243室の客室があり、客室のデッキテラス越しに長崎の景色やスタジアムを眺められる。 © Nagasaki Stadium City

 

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遊環構造を体現したコンコースの一部。サッカーの試合がない時も街に開かれ、レストランやショップなどを回遊できる環境を創出した。 © Nagasaki Stadium City

 

長崎スタジアムシティ

住所:長崎県長崎市幸町7-1
開館時間:7時~23時
休館日:不定休
www.nagasakistadiumcity.com
【設計者】環境デザイン研究所
仙田満が1968年に設立。建築や都市の設計を通じて新たな環境を育むことを目指す。本建築では、安井建築設計事務所とともに基本設計を手掛けた。実施設計は竹中工務店、戸田建設、松尾建設が担当。

※この記事はPen 2025年7月号より再編集した記事です。