大阪・関西万博もすでに開幕から2ヶ月以上が経ち、周囲でも実際に訪れたという話題を耳にすることが増えている昨今。パビリオンの行列も落ち着きつつあるこの時期は、ゆっくりと見て回るのに狙い目のタイミングではないだろうか。さらに7月19日から8月31日の夏休み期間には、何度でも入場可能な「夏パス」もあり、大人が¥12,000、子どもが¥3,000と、それぞれ1日券の2日分よりも安価な設定で大分おトクだ。2度目、3度目と再訪を重ねる際には、「中東パビリオン巡り」「国内パビリオン巡り」と、毎回テーマを決めて回ってみるのもいいだろう。その際におすすめしたいのが、会場内21ヶ所に展示されている、彫刻やミューラルといった「パブリックアート巡り」だ。ここではキュレーターの南條史生がディレクターを務めるエヌ・アンド・エーが「N&A ART for EXPO 2025」として提供した、現代アート界を代表するアーティストによる5点のアート作品を、南條によるコメントとともに紹介する。

「陶芸家であり建築家でもある奈良祐希は、陶芸と建築の融合による新たな藝術の可能性を追求しています。奈良は石川県金沢市に生まれました。2024年に甚大な被害をもたらした能登半島地震の復興への祈りを込めて、『手と手を合わせる』、『地球』を想起させるアートを、同じく金沢市を拠点とするステンレスの支援のもと制作しました」。
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「降り積もる新雪のようにふっくらと輝く白鹿は、神道などにおいて古来から神使として親しまれてきました。本作の神鹿は温暖化による海面上昇やさらなる気候変動を感じ取り、いずれ訪れる氷河期の未来を静かに見つめているのかもしれません」。

「作者は街を歩く見知らぬ人々をモデルに、シンプルでありながら細部を見事に捉えた表現言語を用いることで、生き生きとした都市の風景を描き出しています。
LEDディスプレイをアートの媒体として選ぶことで、作品は都市を映し出す鏡のように機能し、行き交う人々をモニュメントに変えています」。

「まるで大きな蓮の花が咲いているかのような本作品は『生命の創造』と『生命の再生』を象徴しています。中華民国(台湾)文化部、台流文化黒潮計画、財団法人ジュン・T・ライ芸術文化基金会の支援のもとに展示された本作品は、色とりどりの花びらで構成されていますが、これらは多文化の共創を表現しています」。
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「木は長い年月をかけてその土地の歴史や時代を見つめてきた証人です。雨龍研究林(北海道大学)に生えていたミズナラの巨木には、苔などの異なる種の植物も共生しており世代を更新しています。その姿は今を生きる私たちにも学びを与えるでしょう。山九の支援のもと展示された『WORMHOLE』はブラックホールなど時空を越えた場所との繋がりを意味しています」。
会場内には、他にもチェコ共和国のギャラリー「Subfossil Oak s.r.o.」や、民間主導のアートイベント「Study:大阪関西国際芸術祭2025」などが提供するパブリックアートが点在しており、全21作品を見て回るだけでもかなり見応えがある。大阪・関西万博をひとつのミュージアムと捉え、広大な敷地の中でアート散策を楽しんでみるのもいいだろう。