今年、創業250周年を迎えたロイヤル コペンハーゲン。デンマーク王室御用達ブランドとして知られているが、おもてなしや特別な日だけでなく、普段の生活でも気軽に使うことができるテーブルウエアだ。また、デンマークでは祖父母から孫まで幅広い世代に愛され、先祖代々大切に受け継がれる存在でもある。
そんなロイヤル コペンハーゲンを、現代的かつ自由な表現で定評のあるスタイリスト・作原文子がスタイリング。ロイヤル コペンハーゲンの代名詞でもあるブルーフルーテッド プレインとブルーフルーテッド メガを中心に、モダンで遊び心あるスタイリングを提案。作原がつくり上げた世界観ともに、愛され続けるデザインの魅力を紹介しよう。
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アイデンティティに刻まれた、特別なブルー

朝の散歩で見つけた植物を生け、コーヒーを味わう。左から順に、ブルーフルーテッド プレイン マグL(380ml)¥16,500、ブルーフルーテッド プレイン ハイハンドルマグ(240ml)¥11,000/ともにロイヤル コペンハーゲン 他スタイリスト私物
ロイヤル コペンハーゲンの始まりは、1775年に鉱物学者フランツ・ヘンリック・ミュラーが磁器の製法を生み出し、ジュリアン・マリー皇太后がデンマークの産業として支援したことだ。
18世紀ヨーロッパでは中国の白い磁器が流行し、自分たちの手でつくりたいというニーズが高まっていた。起源は中国の青花文様にあるものの、いまやデンマークのカルチャーとデザインを語る上で欠かせない存在となっている。特にロイヤル コペンハーゲンに使われているブルーは、デンマーク人のアイデンティティと深い関係にある色だ。

ロイヤル コペンハーゲンの製品の裏には3本の青いウェーブの線が描かれており、これはデンマークを囲む3つの海峡、大スンド海峡、大ベルト海峡、小ベルト海峡を表しているという。日本と同じく海に囲まれたデンマークにとって海は大きな存在だ。ブルーの顔料であるコバルト亜鉛シリカは、コバルトの中でも発色がよくはっきりとした色になるという。ブルーフルーテッドに代表される“白地に青”というシンプルな配色は、現代のインテリアとの親和性の高さにもつながっている。
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職人技術が光る、ブルーフルーテッドのデザイン
ロイヤル コペンハーゲンを代表するブルーフルーテッドのモチーフは、ブランドの創業とともに生まれた「パターンNo.1」と呼ばれたデザインを基にしている。
創業時は陶磁器のデザインの中で流行していた中国の陶磁器のデザインをモチーフにしていたが、比較的早い段階でそのデザインはシンプルになり、バラ科の多年草キジムシロや野菊など、デンマークの野草を使った北欧らしいデザインへと変化していく。

音楽を演奏する午後のひと時にもロイヤル コペンハーゲンがそばに。左から順に、ブルーフルーテッド メガ スクエアディッシュ(20cm)¥11,000、ブルーフルーテッド メガ ソースジャグ¥24,200、ブルーフルーテッド ケーキディッシュ足付き(23cm)¥38,500/すべてロイヤル コペンハーゲン 他スタイリスト私物
これらのモチーフは、職人の手によってていねいに描かれる。なお「フルーテッド」とはデンマーク語の「Musselmalet(ムール貝の模様)」が由来だ。ブルーフルーテッドには貝の溝のような細かな溝があり、その上に文様を描く。特にブルーフルーテッドのハーフレース、フルレースは、食器の縁にレース状の装飾があるため描くのが非常に難しいと言われている。
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現代の解釈が加わった、「ブルーフルーテッド メガ」
精巧な職人の技術によってデンマークの文化や格式を表現してきたブルーフルーテッドだが、2000年代に新たな視点が加わる。当時デザインスクールの学生だったカレン・キエルガード・ラーセンが、そのモチーフの一部を拡大・デフォルメし、大胆にトリミングを施すという斬新なアイデアを提案。こうして「ブルーフルーテッド メガ」が誕生する。
彼女は子どもの頃から代々受け継がれてきたブルーフルーテッドを愛用していたからこそ、そのデザインの魅力をよく理解していた。青と白の絶妙なバランス、削ぎ落とされ洗練されたフォルムなど、ミニマルが主流となった現代の暮らしにも調和する。このメガの登場によって、ブルーフルーテッド自体が、普遍性を併せ持つデザインだと再認識されたのだ。

北欧ではお馴染みのブルーベリーや果物を使って、スイーツをつくる時間。左から順に、ブルーフルーテッド プレイン ボウル(28cm)¥44,000、ブルーフルーテッド メガ ケーキディッシュ足つき(23cm)¥38,500、ブルーフルーテッド プレイン スタイルカップ(260ml)¥16,500/すべてロイヤル コペンハーゲン 他スタイリスト私物
古くからデンマークでは、貴族から庶民まで多くの家庭でブルーフルーテッドが使われていた。日本に本格的に登場したのは1960年代で、以降世代を超えて愛されている。ギフトとしてもらったものをきっかけに、徐々に買い足すスタイルが多いという。華やかでありながらシンプルなデザインで、和食から洋食まで幅広く使えることから多くのファンを獲得していった。
日本での登場から約65年の時が経ち、いまや家族の中で受け継がれるブランドとなったロイヤル コペンハーゲン。改めてそのデザインを紐解くと、時を経ても愛される普遍性が浮かび上がってくる。
ロイヤル コペンハーゲン