
いま、アートとデザインの垣根を超えて、グラフィックデザインの存在感が再び高まっている。ビジュアルで語る力、社会とつながるダイナミズム、そしてリアルタイムの空気を感じさせる時代性。そんなグラフィックを軸とした、6月から開催される注目すべき3つの展覧会を紹介。
①『日本のグラフィックデザイン2025』
開催期間:6月27日(金)~8月7日(木)
開催場所:東京ミッドタウン・デザインハブ

グラフィックデザインの現在地を一望できる展覧会『日本のグラフィックデザイン2025』が、6月27日より東京ミッドタウン・デザインハブで開催される。日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)が刊行する年鑑『Graphic Design in Japan 2025』の掲載作品から、約300点を厳選して紹介。ポスター、パッケージ、ロゴ、映像、空間など10部門にわたる多彩なデザインが一堂に会すのが魅力的だ。
会場では、亀倉雄策賞やJAGDA賞・JAGDA新人賞の受賞作も併せて展示されている。第一線で活躍するデザイナーの最新作から、次世代を担う新しい才能まで、幅広い表現に触れることができる。印刷物だけにとどまらず、映像やデジタルメディア、空間演出に至るまで、グラフィックデザインが果たす役割は拡張し続けている。本展は、そんな“視覚伝達の進化”を体感できる貴重な機会となるだろう。
『日本のグラフィックデザイン2025』
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②『モダン・エキスポ・ポスターズ グラフィックでみる現代の万博』
開催期間:開催中〜8月20日(水)
開催場所:京都dddギャラリー

万博のグラフィックデザインに焦点を当てた展覧会『モダン・エキスポ・ポスターズ:グラフィックでみる現代の万博』が、京都dddギャラリーにて開催中だ。本展では、1970年の大阪万博以降、世界各地で開催された主要な国際博覧会のポスターを中心に、広報ツールや資料など約100点で構成されている。時代ごとのビジュアル言語が、都市や国家のメッセージとしていかにデザインされたかを紐解く。
各国の万博ポスターを通じて浮かび上がるのは、経済発展、テクノロジー、サステナビリティなど、その時代特有のテーマと、未来へのビジョンだ。印刷技術やタイポグラフィ、色彩の使い方などにも注目したい。大阪で万博が開催されていることを踏まえ、いま万博とデザインの関係を再考する意義は大きい。グラフィックの視点で万博という舞台を眺める、知性の旅に出かけてみてほしい。
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③『橋口五葉のデザイン世界』
開催期間:開催中〜7月13日(日)
開催場所:府中市美術館

大正期に美しい装幀とポスターを生み出した橋口五葉の全貌を味わえる、企画展『橋口五葉のデザイン世界』が府中市美術館にて開催されている。彼は夏目漱石の『吾輩は猫である』の初版本の装幀を皮切りに、泉鏡花、谷崎潤一郎ら明治・大正文学の巨匠たちを飾った。
展示では、本の装幀を中心に、ポスターや絵葉書、そして『髪梳ける女』をはじめとする新板画も交えながら、そのデザインにおける美しさが浮かび上がる。漆塗りやスエードといった技巧を駆使し、本という立体への美意識を具現化した仕事が並ぶ 。異なるメディア間をゆるやかに横断するように構成された全5章の展示は、グラフィックデザインや装幀、版画に関心のある人にとって必見の内容となっている。その繊細な筆致と洗練された色彩を体感してみてはいかがだろうか。
『橋口五葉のデザイン世界』