ミラノデザインウィーク初出展から20年が経つレクサス。今年は新世代コクピット操作デバイス「ブラックバタフライ」を、クリエイター、野添剛士と池澤樹が独自の視点から読み解いた。人の動きとともにさまざま情景を描き出す、インタラクティブな作品を発表した。
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心拍と1/fゆらぎの一致が導く、光の演出

右:池澤 樹 ●アートディレクター。2020年にクリエイティブスタジオ「STUDEO」設立。コンセプト構築、商品やロゴデザインからCM、空間デザインなどのコミュニケーションまで、一気通貫したブランド戦略を手掛ける。
漆黒の空間にぼんやりと浮かび上がる高さ3m×幅10mの特大スクリーン。その前に立つと不思議と光の粒子が人の動きに呼び寄せられるように集結してはちらちらと漂い、ある瞬間に美しい自然風景が一面にぱっと広がる。レクサスが今年のミラノデザインウィークで発表した「A-Un」は、光の粒で示される来場者の心拍と1/fゆらぎとの波長がぴたりと合った時に映像が展開するという没入型のインスタレーションだ。
「スマートフォンもデジタルデバイスもAIも、人の行動や意識に応じてパーソナライズされていくもの。進化するテクノロジーと人とは、一体どのような関係で結ばれているのか。モビリティの世界にも、言葉を介さずとも互いを理解し、同調する『阿吽の呼吸』が存在するかもしれない。そんな感覚を空間で表現しました」そう語るのは、池澤樹とともに本展示をディレクションする野添剛士。レクサスの次世代モビリティに搭載される新世代コクピット操作デバイス「ブラックバタフライ」をモチーフにしているが、デバイスの機能性ではなく、いかに人間とフィジカルな関わりを持つかにフォーカスしているのがポイントだ。近付くと、光の粒が奥へと流れていくのが見える。スクリーンとして見ていたものは、実は奥行き4mの空間に複雑に糸を張り巡らせたものだった。
「距離や角度により、見る側がさらなる想像力を働かせることで、デバイスの表現もさらに豊かに進化していくのです」と語る池澤樹。
空間を体験したあと、映し出された映像の記憶だけでなく、心地よい感情が体内を巡り続けていることに気付く。
「これからのデザインに必要なのは、工業をいかに発展させるかではなく、人の力や存在をどのように捉えるか。過去の歴史を謳う世界ブランドは数多くありますが、未来の価値を創造し続けるレクサスのような企業はとても稀少です」、そう2人の意見は一致する。
次世代のモビリティやデジタルデバイスが、人の感覚をいかに揺さぶり、新しい社会を築くのかを予見させる展示だった。
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新世代コクピット操作デバイス「ブラックバタフライ」



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「A-Un」が映しだす、日本の情景




レクサス/インフォメーションデスク
TEL: 0800-500-5577(9時〜17時)