
愛知県名古屋市に本社を構える陶磁器メーカー、ノリタケは、1904年の創立当時より繊細な絵付けや気品あふれる造形を得意とし、いち早く洋食器の海外輸出を開始。現在も日本だけでなく海外にも多くの愛用者を持つトップブランドだ。
そんな老舗が世界的なデザイナーとのコラボレーションによる新たなプロジェクトを始動。最新作として、イギリスを拠点に活躍するフェイ・トゥーグッドと協業した「Rose」を2025年4月に開かれたミラノデザインウィークで発表した。
フェイ・トゥーグッドは美術史を学んだのちに、インテリア誌のエディターを経て、デザイナーとして活動を開始した独自のキャリアを持つ人物。その表現も、既存のデザインの文脈に縛られることなく、とても自由で創造性にあふれたものだ。
ノリタケとのコラボレーションを前に、改めて陶芸は土から人の手がつくり出す原始的かつ日常的な行為でありつつ、大切な思いがこもった特別なものでもあるとトゥーグッドは考えた。自然で素朴な空気感に、いかに感覚を刺激する詩的な物語を取り入れることができるだろうか。思いを巡らせた彼女が目に留めたのが、自宅の英国式庭園に咲き誇るバラの花だった。自然物の美しさと心を優しく包み込む大らかさを独自のタッチで表現すべく、ノリタケのマスターペインターに精緻なグリーンのレイヤーを依頼。その上に、自身で直感的に上絵を重ねることで、躍動的な「Rose」コレクションを完成へと導いた。
このコレクションでは、フェイ・トゥーグッドのほかにも、ヤブ・プッシェルバーグやマーク・ニューソン、フランク・ロイド・ライト財団とのコラボレーション商品も次々に発表。今年6月から段階的に国内で発表、販売を開始していく予定だ。

※この記事はPen 2025年7月号より再編集した記事です。