日常のなかの“行為”を遊ぶ、 大人も楽しい『デザインあ展neo』

  • 写真・文:中島良平
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左から、映像ディレクターの中村勇吾、総合ディレクターの佐藤卓、音楽ディレクターの蓮沼執太。それぞれが手にするグッズをはじめ、ミュージアムショップの品揃えも魅力的。各展示物は、番組と同様にさまざまな作家が参加し制作を担当している。

NHK Eテレで放送中の『デザインあneo』のコンセプトを体験の場に展開した展覧会が開催。展覧会のディレクター3名(総合・佐藤卓、映像・中村勇吾、音楽・蓮沼執太)に話を訊いた。

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制作チームの中で「展示のつかみをどうするか」という話し合いを重ね、エントランスの巨大な「あ」のバルーンが生まれた。来場者の多くがスマホを向けるフォトスポットになっている。

子どもたちのデザイン的な視点と感性を育むことを目的としたTV番組『デザインあneo』が世代を超え人気を集めている。

「デザインに興味を持つ人が、昔と比べてずいぶん多くなったと感じます」と話すのは、展覧会総合ディレクターを務める佐藤卓。TOKYO NODEで開催中の『デザインあ展neo』に足を運ぶと、それが実感できる。テーマは「あるく」「たべる」「もつ」など、私たちが行う行為(動詞)。番組で表現していることを展覧会のフィジカルな空間に移すことに、佐藤は大きな可能性を感じたという。

「作品が出来上がって関係者で会場の確認をした時、みんな楽しんじゃってなかなか先に進まなかった」と笑うのは、映像ディレクターの中村勇吾。「各作品に“引き”があるから、どうしても滞留時間が長くなる。自画自賛になりますけど」と語っている。

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数々の動詞がバナーとなって並び、それぞれに呼応するアイテム、体験型作品が並ぶ。整然としたレイアウトのなか、異様な存在感の作品が点在する空間自体も楽しめる。

“わかりやすさ”にていねいに向き合った参加アーティストの姿勢と「これ面白いんじゃない?」という軽快なひらめきが結びつき、数々の体験型作品が生まれた。

「展覧会に来てくださる方々にどう遊んでもらうかが大切で、自由に遊べるけれどちょっとルールがあって、空間配置も含めて本当に楽しめる展覧会になっていると思います」と、音楽ディレクターの蓮沼執太は話す。番組が体験型展示となった時の可能性と、絶妙なバランス感覚を感じたという。

「番組全体としては、音楽のような感じに近づきたいと思っているんです」と中村は続ける。

「BGMで流れていて嫌じゃなく、じっくり聴くとなにか発見がある。そういう音楽のような存在感を目指しています。映像のリズムに合う音楽を蓮沼さんが独特なトーンで形成してくれていますし、展覧会場全体でもそれを感じられますよね」

さまざまな体験型作品で構成される『デザインあ展neo』。会場を巡り気づくのは、日常の“行為(動詞)”が、想像以上に面白く、奥深いということ。ビジネス街・虎ノ門で、大人こそ日常をデザインでとらえなおす楽しさを実感できるはずだ。 

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映像を伴った体験型作品『デザインどっちでショー』。先生が出すお題に対するぼうやとあんちゃんの意見を聞き、来場者の意見によって勝敗が決まる参加型ディベートショーだ。

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デッサンあ(阿部洋介、藤森吉昭、稲福孝信)

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中央に置かれたモチーフを見ながら実際にデッサンを行う体験ができる。仕上げたデッサンは、その場でスキャンすると会場スクリーンと特設サイトで発表される。


たべられるきもち(プラプラックス)

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巨大な箸につままれる餅。来場者はその箸に実際に乗ることができ、「食べられる」餅の気持ちを体感。普段なにげなく行っている動作について改めて考えることができる作品。


もちはこびトライアル(岡崎智弘、nomena)

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中央の棒にフライパンがぶつからないように動かす体験型作品。フライパンを持つと、「ズンチャズンチャ♪ 」と蓮沼が手掛けた軽快な音楽が流れ出し、トライアル感が煽られる。


もちごこち(岡崎智弘)

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人の手の大きさはさまざまだが、モノや道具の大きさはどうやって決められるのだろう? ちょうどいい持ち心地を探ることで、自分の手の感覚に意識的になることができる作品。


つくるのうた(平本宗一郎、山中 有、蓮沼執太、優河)

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番組コーナー「つくる」の映像と音を使い、「うた」に仕上げた映像作品。「あえて編集しにくい要素を加えることで、映像と音楽の面白い関係が生まれるはずだ」と蓮沼は話す。

『デザインあ展neo』


開催期間:開催中〜9/23
開催場所:虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 45F TOKYO NODE GALLERY A/B/C
東京都港区虎ノ門2丁目6-2 
TEL:03-6433-8200
営業時間:10時〜19時(月〜金)、 9時〜19時(土、日、祝)
※入館は閉館の30分前まで
※各月第一 ・ 第三水曜日は17:00閉館、9/17(水)は19:00閉館
入場料:一般¥2,500 高校生・中学生¥1,200 小学生¥1,000 2歳以上¥500 ※2歳未満は無料
https://exhibition-ah-neo.jp