盤天

恵比寿の一角に誕生した「盤天(ばんてん)」は、日本文化とミクソロジーカクテルが融合する、隠れ家レコードバー。茶室を想わせる静謐なファサードをくぐれば、目に飛び込んでくるのは、明治から江戸期にかけての和箪笥を積み上げた壮観なバックバー。薬棚などの伝統家具を用いた空間は、古き良き時代の温もりと現代の洗練が交差している。
音を奏でるのは、真空管アンプ「MUSASHI」から流れるアナログ音源。ジャズやソウルを中心に、しっとりとしたグルーヴが空間を包み込む。店名の「盤天」は、そんなレコード“盤”の音色と、数多ある“天たる”酒の中から選び抜かれた一杯を意味し、音と酒の極上の調和を体現。
ビバレッジプログラムで提供されるのは、日本茶や日本酒をはじめ、和の素材を取り入れたミクソロジーカクテル。テーマとして掲げられているのは、自然を構成する陰陽五行「火、水、木、金、土」。繊細な味覚の層を重ねたカクテルの数々は、京都の名店「nokishita711」の液体料理一門が監修している。腕をふるうのは、世界的大会「Diageo World Class 2025」でも日本Top 50に選出されたバーテンダー・水野尭介。
また、来店客が持ち込んだお気に入りのレコードを高音質でかけてもらえるのも、たまらないサービスだ。美しい音と空間と酒に酔いしれる、特別なひと時がここにある。



※この記事はPen 2025年7月号より再編集した記事です。