“角”が語るクロノグラフは、そう多くない。だが、タグ・ホイヤーの「モナコ」はその数少ない例外として、誕生から半世紀以上を経たいまも、ひとつのスタイルを牽引し続けている。そしてガルフとのコラボで誕生した本作「タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ × ガルフ」は、「モナコ」コレクションのオーバーテイクを狙う一本となる。

機械式クロノグラフの歴史を紐解く時、避けては通れない一本がある。1969年に世界初の自動巻きクロノグラフムーブメントとして発表された「キャリバー11」を搭載して登場した、タグ・ホイヤーの「モナコ」だ。角形防水ケースに自動巻きムーブメントを収めるという、当時の常識を覆す設計は、単なる技術革新にとどまらず、腕時計デザインの価値観そのものに挑戦するものだった。
このモデルの名を不動のものとした立役者が、スティーブ・マックイーンであることも忘れてはならない。1971年公開の映画『栄光のル・マン』において、彼はレーシングスーツとともに、劇中で自らの意志で「モナコ」を装着。その映像は、スピードと美意識の象徴として時計のアイコン性を決定づけた。
そして本作「タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ × ガルフ」は、そのイメージを現代に昇華させたスペシャルエディションとして登場した。まず目を引くのは、やはりアイコニックなカラーパレットである。ホワイトを基調としたダイヤルに、ガルフ・ブルーとオレンジが垂直に駆け抜ける。この配色は、ただの装飾ではない。伝説的なレーシングチーム「ガルフ・レーシング」のスピリットを受け継ぐ象徴であり、同時にモータースポーツに対するタグ・ホイヤーの揺るぎない敬意を体現している。


搭載されているムーブメントは、オリジナルの系譜を受け継ぐ「キャリバー11」。左リューズというクラシックなディテールも健在で、忠実な再現性と現代的な信頼性を兼ね備えている。39㎜というサイズ感はオリジナルへのオマージュを保ちつつ、ケースにはグレード2チタンが用いられ、軽快な装着感を実現。ヴィンテージの空気感と、コンテンポラリーな実用性が見事に同居する。
さらに注目すべきは、付属する2本のストラップだ。ひとつは、プロフェッショナルなレーシングスーツにも使われる、耐熱・難燃性素材「ノーメックス」を使用したホワイトストラップ。もうひとつは、クラシックなレーシンググローブを想起させる、ブラックのパンチング加工カーフレザー。どちらも細部までレーシングスピリットを貫いている。
「タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ × ガルフ」は、ブランドの美学と伝統が見事に共存する一本だ。ひと目でそれとわかるアイコニックなデザインに、現代的な機能性が宿る本作は、モータースポーツ愛好家にとっては「モナコ」コレクションをオーバーラップする存在として映り、初めてこのシリーズに触れる者にとっては、心を加速させるアクセルとなるに違いない。

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