オーストラリア最大の面積を誇る西オーストラリア州。主要な都市が国土の東南部に連なる同国だが、西オーストラリア州の州都で西部最大の都市であるパースは「世界でもっとも美しい」と称される街のひとつだ。旅の味を知り尽くした大人ほど心奪われるという街の魅力をさまざまな角度から見てみよう。まずは都市の散策から。

街の景色を、歴史を一望できるキングスパーク。
豊かな経済力を背景に、年々アップデートされる開発エリアと、史跡や昔ながらの町並みがつづら折りに連なる。区画や通りごとに表情を変える町・パースでは、どこを切り取ればその美しさを的確に伝えられるかが悩ましい。パースは日本の江戸後期にあたる1829年、スワン川に渡来した入植者ジェームス・スターリングにより西オーストラリア州最初の植民地として設立された。スワン川はパースの歴史と発展の象徴なのだ。その美しい景色を俯瞰できる場所から町歩きを始めた。

中心市街地から1.5kmほどの場所にあるキングスパークは、西オーストラリア州原産種を中心に3000種類以上の植物が保存・育成されているボタニカルガーデンも含め400haもの広大さを誇る。ニューヨークのセントラルパークの約340haを超える広さで、都会のオアシスとして世界でも指折りの存在だ。小高い丘の上にあり、スワン川沿いに広がる市街地を一望できる絶好のビュースポットでもある。

水辺の周辺から文化や経済が発展するのは歴史の理で、4万5000年前は先住民のヌガー族が川魚から森の動植物まで豊かな食糧が得られるスワン川沿岸を生活の拠点としていた。1829年以降は入植者がスワンリバーコロニーを形成し始める。西オーストラリアは質量ともに類まれな鉱物資源に恵まれた土地で、19世紀末から20世紀初頭のゴールドラッシュが今日の繁栄の礎となった。リバーサイドの再開発スポット、エリザベスキーは、パースの終わりなき発展のフロンティアだ。

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キングスパークを、シティセントラルを、ローカルのように遊ぶ。
パースという街の歴史や魅力の多くを知ることができるキングスパークだが、芝生で寛いだり、ウォーキングやジョギングを楽しんだりと、暮らす人と同じ目線ですごすひとときこそが、この公園の真の豊かさを教えてくれる。植物と野鳥のあらゆるバリエーションが代わる代わる目を楽しませてくれ、1日では、いや数日間かけても到底見尽くすことができず、季節や天候、時刻で変わる美しさに、訪れるたびに心奪われるだろう。


キングスパークからの眺めで、町の構造をおおまかに把握すれば、町歩きはがぜん楽しくなる。セント・ジョージズ・テラスに建ち並ぶ総督邸や市庁舎には独特の風格があり、丘の上から見たエリザベスキーのビル群は、足元から見上げるとまた新たな迫力と存在感だ。路地を一本入れば、忽然と古い町並みが現れる。メルボルンを筆頭に、ストリートアートが盛んなオーストラリアだが、近年はパースも注目を集めている。通りすがりのカフェでテイクアウェイしたコーヒでも楽しみながらの町歩きが最高だ。

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古い町並みを残すフリーマントルで、最高のサンセットを。
スワン川の河口周辺にある、フリーマントルという港町にも足を延ばした。19世紀前半、入植者たちにより建設された町には今も歴史的建造物が多く残り、その一部はカフェやギャラリー、ホテルとしても活用されている。1897年、生鮮食品の市場として始まった公設市場・フリーマントルマーケットには、現在、食料品からナチュラルコスメ、アパレルやクラフトなど約150もの店が軒を連ね、地域の暮らしに根ざしながら、フリーマントルを訪れる旅人の目的地にもなっている。


イギリス人が入植して建国されたオーストラリアは、かつてイギリスの流刑地だったことはよく知られている。旧フリーマントル刑務所は、その歴史をいまに伝える貴重な場所だ。服役中の囚人たちは石材の掘削や建物の建築に欠かせない労働力で、オーストラリアでは刑務所が町づくりの礎の一端を担い、人口の増加や経済発展に寄与してきた。旧フリーマントル刑務所はオーストラリアの囚人遺跡群のひとつとして、2010年にユネスコの世界文化遺産にも認定されている。

フリーマントルは、美しい白砂のベイザーズ・ビーチをはじめ、サンセットスポットにも事欠かない。界隈には歴史的な建物を活用したレストランやカフェもあり、午後から散策、サンセットの景色を堪能してそのまま食事へ、という流れが美しい。海面を、地上のあらゆるものを赤く染めながらインド洋に沈む夕日もまた、西オーストラリアならではの景色として心に刻まれた。

西オーストラリア政府観光局