創業250周年を迎えたブレゲが発表したのは、意外にも壮大な複雑機構ではなく、洗練された一本針の腕時計だった。その名は「クラシック スースクリプション 2025」。2世紀以上前に誕生した革新的な懐中時計が、現代の技術と美学で蘇った瞬間である。

アブラアン-ルイ・ブレゲがフランス革命後の1796年頃に開発した「スースクリプション ウォッチ」は、単なる時計を超えた存在だった。価格の4分の1を前払いする斬新な販売方法と、誰もが使える実用性を兼ね備え、高級時計の門戸を広げた歴史的モデル。当時としては前例のない広告パンフレットを通じて販売され、約700個が製作されたこの時計は、まさにブレゲブランドの礎となった。


今回発表された「クラシック スースクリプション 2025」について、CEOのグレゴリー・キスリングは「ブレゲの歴史を分かち合いたいという思いと、この歴史をこれからも守り続けていきたいという思いをつなぐものです」と語る。
その新作は、40㎜のケースに輝くホワイトのグラン・フーエナメル文字盤を備え、ブルースチール製の湾曲したブレゲ針が時を示す。文字盤の中央と6時位置の間には、「Souscription」の文字とシリアルナンバー、シークレット・サインが光の加減によって浮かび上がる仕掛けも施された。これらはダイヤモンドポイントのパンタグラフという特殊工具でエングレービングされ、アブラアン-ルイ・ブレゲの時代と同じ技法で再現されている。

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初代から着想を得た、新開発のムーブメントを搭載
ケースバックからは新開発のキャリバー「VS00」の機械構造が垣間見える。このムーブメントは初代「スースクリプション ウォッチ」からインスピレーションを得た設計で、毎時2万1600回の振動数と4日間のパワーリザーブを実現。ニヴァクロン製ブレゲひげゼンマイを採用し、香箱には創業者の筆跡を再現したメッセージが刻まれている。
プレゼンテーションボックスも当時のモロッコ製レザーケースを彷彿とさせる特別仕様に。ゴールドの箔押しで「Breguet 250 Years」と刻印され、時計を垂直に収納する内部設計は懐中時計の時代を思わせる。

「クラシック スースクリプション 2025」が放つ存在感は格別だ。一本の針が描く優雅な軌跡に、250年の歴史と未来への意志が込められている。シンプルゆえに際立つ美しさ、そして受け継がれる職人の魂—アブラアン-ルイ・ブレゲが追求した「誰もが使える時計」という理念は、現代においても色褪せることがない。時計愛好家にとって、これ以上ない贈り物と言えるだろう。

ブレゲ
TEL:03-6254-7211
www.breguet.com