昨年、フルリニューアルを果たしたクラシカルウォッチ「トリック」には新たに複雑機構を投入。スポーティな「トンダPF」は、色と素材とで新味を発揮する。今年のパルミジャーニ・フルリエの新作は、機構と意匠の両面で魅せる。
1. トリック パーペチュアルカレンダー

メゾン創設時からある「トリック」は昨年、古式ゆかしき技法を用いた真のグレインダイヤルを主役とし、より上質に生まれ変わった。搭載したのは、やはり高級機の古典にならったゴールド製の新手巻きムーブメント。そこに今年、新開発した永久カレンダーモジュールが積まれた。
その外観は下にオフセットした2つのインダイヤルだけで4つの暦を表示するエレガントかつ静謐な印象に整えられている。これぞ永久カレンダーの、プライベートラグジュアリー。ケースサイドに控えめに配された3つのボタンで、簡単でスムーズな調整を可能にする。


2. トンダ PF GMT ラトラパンテ ヴェルツァスカ

通常は重なっている2本の時針が、8時位置のボタン操作で上側のロジウム針が1時間刻みでジャンプして進んで第2時間帯を示し、リューズ同軸のボタンを押すとゴールド針に追い付いて再び1つに重なる。モデル名にあるラトラパンテとは、フランス語で“追い付く”との意。クロノグラフでお馴染みの機構を世界で初めてGMTに応用し、2022年に登場したモデルに新色ダイヤルが追加された。そのグリーンとブルーが溶け合ったような色調は、スイス・ヴェルツァスカ谷を流れるエメラルドグリーンのせせらぎから着想を得たとか。多彩な中間色のダイヤルは、今年のトレンドの1つ。手彫りによるバーリーコーン(麦の穂)パターンのギヨシェと相まって、ニュアンス豊かな装いとなった。
3.トンダ PF オートマティック ストーンブルー

19世紀に作られたローズエンジンを用いたダイヤルのギヨシェのバーリーコーンパターンは、他社よりも圧倒的に複雑で質感にも優れる。2022年に登場した小振りな36㎜モデルは、ジェンダーレスなサイズ感に加え、ダイヤルの美観を邪魔しないノーデイトであることが、コレクターの間で好評だった。これは、その新色ダイヤル。これまた中間色の深みにあるストーンブルーをまとわせ、シックで大人な装いに仕立て上げた。この色合いは、建築的な色彩からのチョイス。建築にも造詣が深いミシェル・パルミジャーニ氏の美意識が、ダイヤルカラーで発揮された。絶妙な中間色と繊細なギヨシェは、同じグループ傘下にあるダイヤル会社カドランス&アビヤージュが有する優れた技術の賜物である。
4.トンダ PF スケルトン スレートグリーン

これまでさまざまな素材や色にチャレンジしてきた“スケルトン”に、再び新バリエーションが登場した。今回は、SSにやはり中間色であるスレートグリーンとの組み合わせとなった。センターローター式の自社製自動巻きをスケルトナイズしたCal.PF777の、有機的な曲線で構成されたフレーム構造は、空間性と光の取り込み方とに配慮して緻密に計算したというのが、ミシェル・パルミジャーニらしい。新色のスレートグリーンは、縦のサテン仕上げとの相乗効果で色合いをより深め、同メゾンとしては珍しいミリタリーな雰囲気を醸し出している。トランスパレントバック側も同様に肉抜きや仕上げ、色付けがされ、アバンギャルドな印象を見るものに抱かせる。
5.トンダ PF スポーツ クロノグラフ ウルトラサーメット

セラミック(ceramic)の硬さとメタル(metal)の粘り強さを併せ持つ複合素材だから、2つの名前を合わせてサーメット(cermet)。母材がチタンであるため、軽量であるのも特徴の1つである。この極めて硬い難加工材をメゾンとして初めて採用。さらにリューズとバックル、プッシュボタンまで同素材製としたのは、世界初である。その金属質の光沢を放つアンスラサイトカラーのケースに調和するよう、ダイヤルは9金とニッケルの合金とを蒸着したブラックゴールド仕立てに。インダイヤルは2色展開され、上のミラノブルーはコントラストがクールで、下のロンドングレーはトーン・オン・トーンの落ち着いた雰囲気に。硬くて軽い新素材ケースの内には、毎秒10振動のCOSC認定クロノメーター取得の一体型自社製クロノグラフCal.PF070が潜む。

6.ラルモリアル・レペティシオン・ミステリューズ

表面は松かさのらせん構造を模した複雑なギヨシェパターンを透かし見せるフランケエナメルに覆われていて、装着時にはミニッツリピーターを作動させ、現在時刻を知る仕組みに。そして時計を外してケースを反転させれば、ギヨシェ彫りのデイスクの外側にはめ込んだ白翡翠のディスクの上でMとHを象ったマーカーが現在時刻を示すダイヤルが現れる。メゾンが大切にしてきたチャイミング機構にフォーカスした、なんとも贅沢で美しい2つのユニークピースが登場した。上のミッドナイト・フィヨルドは北極圏の近い、氷河で削られた入江の深淵さを表し、下のドーンローズは真珠にも似た夜明けの空の柔らかさを捉えている。いずれもムーブメントの全周をはるかに超える長尺のカセドラルゴングによって、時打ちの音色は朗々と長く響き渡る。

パルミジャーニ・フルリエ
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